糖尿病が歯周病の進行を促進する3つのメカニズム

糖尿病が歯周病の進行を促進する3つのメカニズム

糖尿病の合併症として世間に認知されている歯周病ですが、糖尿病になると歯周病が進行するリスクが増大します。
糖尿病が歯周病の進行を促進するメカニズムとして、以下の3つが考察されています。

・高血糖による脱水状態により、唾液の分泌が減少。自浄作用が機能しにくくなり、口の中が不潔になる
・高血糖の状態により免疫細胞の遊走が妨害され、歯周組織での免疫反応が上手く機能しない
・多量の血中糖分とタンパク質が結合してできたAGEが歯周組織のコラーゲンの機能を変化させる

3つのメカニズムをご覧になれば分かる通り「血糖値が高いこと」が歯周病の進行と関連していることが考えられています。

糖尿病患者は歯周病になるリスクが3倍上昇する

糖尿病患者は歯周病になるリスクが3倍上昇する

糖尿病には1型と2型があります。

1型糖尿病は膵臓のインスリンを産生する細胞(膵頭β細胞)を攻撃する自己免疫疾患です。血糖値を下げることができなくなるため、子どもの時からインシュリンを注射する必要があります。

Ⅰ型糖尿病

2型糖尿病は中年の方に多くみられる、いわゆる生活習慣病として認知されている糖尿病です。2型糖尿病は家系などの遺伝的要素も強い病気です。

1型と2型のいずれの糖尿病も歯周病のリスクを増大させる可能性は高いことには変わりません。

歯周病治療で血糖値コントロールの指標(HbA1c)が0.6%改善

歯周病治療で血糖コントロールの指標が改善

過去数ヶ月の血糖値のコントロール状態の良し悪しを判断するのに、HbA1cを測定します。
HbA1cが7.0%以上であると歯周病の進行速度が速まり、歯を喪失するリスクが増大することが報告されています。

食事・運動療法などにより血糖値が改善すると歯周病の改善はわずかながら認められますが、歯周病の原因はポルフィロモナス・ジンジバリス(PG)菌やプレボテラ・インターメディア(PI)菌などの歯周病原菌です。

歯周病原菌が取り除かなければ歯周病は改善しません。歯周病があるのであれば、糖尿病が有る無しに関わらず、歯周病治療は必須となります。

糖尿病の方は歯周治療が必須

歯垢や歯石を除去する歯周基本治療を糖尿病患者に行った際に、空腹時血糖値(FBS)やHbA1cの値が下がったという研究報告があり、HbA1cに関しては、平均で0.6%以上下がったという論文もあります。

歯周病治療を受けることは、口の中の健康維持だけではなく、糖尿病患者の血糖値コントロールにも貢献することを示しています。

歯周病治療で糖尿病も改善する

歯周病治療で糖尿病も改善する

歯周病と糖尿病の間には相互に深い関係性があることをご理解いただけたと思います。歯周病を放置することは、糖尿病患者の血糖値のコントロールを難しくするだけではありません。認知症の進行を早めたり、癌の巨大化を促進するなどのリスクも増大させます。

歯周病はサイレントディジーズと呼ばれる病気です。痛みが無いのに急速に進行し、歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、歯が動揺してきます。

「あっという間に進行して抜けてしまった」ということも実際にあります。歯周病で歯が抜けてしまわないためにも、定期的な検診で歯周病の早期発見・早期治療を心がけて下さい。

特に糖尿病の方は食事・運動療法に加え、口の中からもアプローチを行って血糖値を上手にコントロールしていきましょう。