脳梗塞とは?

「梗塞」とは、ふさがって通じないことを意味します。脳梗塞の場合、
脳内の血管が詰まって脳組織が壊死する病態を指します。血管を詰まらせるのは、プラークと呼ばれる脂肪性沈着物で、このプラークが血管の内壁から剥がれることで血栓を作り、脳内の細い血管を詰まらせます。

脳梗塞の後遺症は、壊死した脳の部分によって症状が異なります。体の左右どちらかが麻痺し、手足が変形したり痛みが出る、舌などがうまく動かせず口腔機能が低下する、などさまざまです。こうした後遺症は「運動障害」と呼ばれます。このほか、食べ物をスムーズに飲み込めなくなる「嚥下障害」、ろれつが回らなくなりうまく喋れなくなる「失語症」など、日常生活に支障をきたすケースもあります。

脳梗塞になりやすい疾病には、高血圧、高脂血症、糖尿病が挙げられます。飲酒や喫煙、食習慣、運動不足、ストレスの蓄積などが上記疾病につながるため、生活習慣の乱れが脳梗塞のリスクファクターになり得るといえます。

歯周病が脳梗塞に関連するって本当?

このほか、脳梗塞のリスクファクターとして言及されてきているのが、歯周病です。脳梗塞とつながりの深い動脈硬化が起きた血管を調べると、歯周病菌が検出されたという報告もあります。

歯周病とは、歯周病の原因となる細菌によって歯を支えている骨などの歯周組織が溶かされていく病態で、最悪の場合は歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病の原因となる細菌は、歯と歯肉の間にできる溝「歯周ポケット」に歯垢や歯石となって蓄積し、この細菌が歯周ポケットから血液に入り込みます。そして、細菌がサイトカインと呼ばれる物質を出すことで、血管内で炎症を起こすとされています。炎症で傷ついた内壁にプラークが溜まり、血栓により血管が狭くなると考えられています。脳以外の部位での動脈硬化が進行し剥がれた血栓が血流に乗ると、脳の血管に達して脳梗塞につながるおそれがあります。

脳梗塞が歯周病のリスクファクターに

歯周病が脳梗塞のリスクファクターになりうるという指摘がある一方、脳梗塞にかかった後は歯周病にかかりやすくなるという報告もあります。
脳梗塞にかかり、体の左右どちらかが麻痺するといった後遺症が残ると、歯ブラシで磨いたり口をゆすぐのも苦労します。軽度の後遺症であれば、麻痺した側の手で歯を磨くこともリハビリになるかもしれませんが、重い後遺症で、かつ利き手側が動かしにくくなると、歯磨きなどの口腔ケアがスムーズにできなくなってしまいます。また、脳梗塞で入院となった場合も、歯磨きが疎かになることが考えられます。
参考:一般社団法人 日本訪問歯科協会(2020/10/14現在)

歯周病は、歯垢や歯石を作らないよう普段から歯を磨くことが一番の予防策です。歯磨きの質が低下してしまうと、歯周病のリスクが高くなります。
脳梗塞によって人工呼吸器が必要となった場合、口内が乾燥しやすくなります。そうなると、唾液の抗菌作用が低下して歯周病にかかりやすくなるおそれがあります。 歯周病が脳梗塞のリスクファクターとなりうるだけでなく、脳梗塞も歯周病のリスクファクターになり得ることが指摘されています。

脳梗塞を予防するためには

脳梗塞の主なリスクに挙げられるのが、高血圧です。そもそも血圧とは、心臓から送られる血液が、血管の内壁を押す力のことを指します。血液が血管に圧力を加えることにより、全身の組織に血液を送り届けられるというシステムになっています。
高血圧は、この圧力を示す数値が一定より高い状態となります。高血圧の方は、下の血圧(拡張期血圧、最低血圧)を3~5年の間に5~6mmHg下げることで、脳梗塞を含む脳卒中が発症する確率が42%減少することがわかっており、血圧をコントロールすることが脳梗塞の予防になると考えられます。

成人における血圧値の分類(mmHg)

分類 診察室血圧 家庭内血圧
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 <120 120~129 かつ <80 115~124 かつ <75
高値血圧 130~139 かつ/または 80~89 125~134 かつ/または 75~84
I度高血圧 140~159 かつ/または 90~99 135~144 かつ/または 85~89
II度高血圧 160~179 かつ/または 100~109 145~159 かつ/または 90~99
III度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110 ≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 ≧135 かつ <85

血圧が高くならないようにするには、塩分の摂取量を1日6g以下にする、動物性脂肪が多く含まれる食事を控える、禁煙、運動の習慣化などが挙げられます。

表2.減塩に有効な食行動の例:「減塩のコツ」[3]

1.漬け物は控える 自家製浅漬けにして、少量に
2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3 g減塩できる
3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理
4.具だくさんのみそ汁にする 同じ味付けでも減塩できる
5.むやみに調味料を使わない 同じ味付けでも減塩できる
6.低ナトリウムの調味料をつかう 酢・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシングを上手に利用する
7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう・七味・しょうが・かんきつ類の酸味を組み合わせる
8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する

また、糖尿病は脳梗塞の原因となる動脈硬化などの血管系の合併症が発生する可能性が高くなるため、注意が必要です。糖尿病の予防に大切なのは、食事のカロリー摂取をコントロールし、肥満にならないようにすることです。糖分の摂取量に気をつけることで、血糖値が上がりにくくなります。このほか、20~60分の運動を週に3回程度行なう、喫煙や飲酒を制限してストレスを減らすことなども、血糖値をコントロールするのに効果があるとされています。
参考:医学ボランティア JCVN(2020/10/14現在)

そして、脳梗塞のリスクファクターになりうる歯周病も、対策をしておくとよいでしょう。歯周病は、初期段階では自覚症状がなく、歯がグラつく、歯肉から出血があるなどの症状に気づいたころには、ある程度進行した段階に入っていることがあります。そのため「サイレントキラー」と呼ばれるほどです。
歯肉と歯の間などの隙間に気をつけながら毎日欠かさず歯磨きをすることはもちろんですが、定期的に歯科医院で検診を受け、歯周病の有無をチェックすることも大切です。早期発見・早期治療によって歯周病を改善し、脳梗塞を含むさまざまな病気のリスクを下げるつもりで、口腔ケアに努めてはいかがでしょうか。