腎臓の役割と腎臓病について


腎臓は、腰のあたりに左右対で2つある臓器です。
腎臓の大切な役割として、血液を濾過するという機能があります。血液が腎臓の糸球体というところを通ると、老廃物や塩分など不要なものをこし出し、尿として体の外に排出します。

また、尿細管というところで必要なものを再吸収するという機能もあり、体にとって大切な仕事を果たしています。

老廃物を体外に排出する以外の腎臓の役割として、血圧やイオンバランスの調整、骨を強くする、血液を作るなどが挙げられ、非常に重要な働きをしています。

腎臓病は、フィルターのような役割を果たす糸球体や尿細管が病に冒され、腎臓の機能が低下することで起こる病気です。
老廃物が排出されず体に蓄積されるようになり、全身にあらゆる症状を引き起こす尿毒症にかかる恐れもあります。



仮に糖尿病や腎臓の摘出などで腎臓の機能が上手く働くなってしまった場合は、腎移植を行わない限り、腎透析による老廃物の排出を定期的に受けなくてはなりません。

腎臓病により腎臓の機能が低下すると、腎不全と呼ばれる状態になります。
この腎不全には、病状の進行の仕方で「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2種類があります。

急激に進行する急性腎不全は機能が回復することもありますが、数ヵ月から数十年かけてゆっくり進行する慢性腎不全は回復する見込みがなくなってしまいます。
慢性腎不全は生活習慣病肥満や慢性腎炎との強い関連性があるといわれています。

急性腎不全の症状としては、乏尿、無尿といったものがありますが、慢性腎不全はかなり症状が悪くなると夜間の尿量の増加、目のまわりや足のむくみ、疲れやすい、息切れするなどの症状や所見が出現します。

歯周病は腎臓病の誘因になるかもしれない


過去のヨーロッパやアメリカなどの研究から、人工透析(腎臓の機能を代替する治療)を受けている患者さんは、口腔衛生の状態が悪い傾向にあるといわれています。
また、国内でも歯周病が炎症を起こす面積が広いほど、腎臓の障害が進行しているというデータもあり、両者に関連するメカニズムが注目されてきました。

歯周病にかかると、口の中で増殖した原因菌が歯茎の毛細血管を通って全身の血管を巡ります。

これによって血管内皮機能に障害を起こし、動脈硬化性疾患や高血圧症の誘因になるのではないかと考えられています。
これが、結果的に腎機能障害を引き起こす可能性について言及されています。

このように、歯周病と腎臓病の直接的な関係のほか、糖尿病や動脈硬化などによる間接的な関与がある可能性も示されています。

歯周病治療が腎機能の回復を促す?


歯周病と腎臓病の関連性は数多くの研究結果で示されているものの、国内の日本人を対象にした研究においては対象者が75歳以上かつ人工透析などを受けている患者さんに限定されており、まだエビデンスに乏しいという一面もあります。

しかし、2007年のブラジルでの研究によると、歯周病の治療によって血管内皮機能の改善が見られたという結果が報告されました。
つまり、歯周病治療が腎機能の一部を回復させるという可能性が見込まれることになります。

歯周病の治療によって腎臓病の進行を抑えられるかどうかは科学的に証明されたわけではありませんが、歯周病が腎臓病など全身症状に関連するかもしれないという観点からも、丁寧な歯磨きによって歯周病を予防することが望ましいといえます。

口腔ケアは、口内だけでなく、腎臓など体の大切な臓器を守る上で価値ある行動である可能性が高いのです。