早産・低体重児、そのリスクとは?

早産・低体重児のリスクとは?

そもそも早産・低体重児とはどのような状態を指すのでしょうか。
「正期産」とは妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産のことです。

それに対し「早産」とは妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことを指します。

また、2,500g未満で生まれた赤ちゃんのことを低体重児、1,500g未満を極低出生体重児、1,000g未満を超低出生体重児と呼びます。

一概には言えませんが、早産・低体重児として生まれた赤ちゃんは身体が小さいというハンデだけではありません。

早産のリスク

早く生まれた赤ちゃんほど臓器の発達が未熟で重篤な障害が出現する傾向があります。

例えば、低体温や感染症などのリスクのほか、重い症状では呼吸障害や神経障害、脳障害などといった赤ちゃんの成長発育に大きく影響を与える可能性もあります。

さらには、低体重児で生まれると成人後に心臓病や糖尿病などの成人疾患にかかりやすくなることも近年の研究によってわかってきました。

歯周病と早産・低体重児の関係とは?

歯周病と早産・低体重児の関係とは?

早産・低体重児のリスクファクターとして出産年齢や喫煙、人種、アルコールなど様々な要因が挙げられますが、「歯周病もリスクのひとつである」と様々な国や地域の研究機関から報告されています。

1996年にアメリカで行われた研究結果によると、歯周病の妊婦さんは健康な妊婦さんと比べて早産・低体重児出産になる確率が7倍高いと報告されました。

出産のメカニズムはいまだ不明な点がありますが、陣痛は子宮収縮作用のある「プロスタグランジン」という物質が増加することで始まるとされています。

そして、このプロスタグランジンの分泌を促すのが「サイトカイン」という物質です。
サイトカインは炎症によって増える物質ですが、歯周病で見られる炎症性物質が原因で陣痛を誘発するプロスタグランジンが増加し、早産を引き起こすのではないかと考えられてきました。

早産の危険

つまり、妊婦さんが歯周病の場合、歯茎の炎症によってサイトカインが増加し、子宮収縮作用のあるプロスタグランジンを分泌。
生成されたプロスタグランジンは口から全身を巡るため出産のスイッチがONになり出産が早まるというわけです。

実際に、歯周病の程度が重くなるにつれて血中のサイトカインが増えることがわかっており、サイトカイン数値の高い人ほど出産時期が早くなっていることも研究結果としてわかっています。

また、一方で歯周病と早産の関連性を否定する研究結果があることも事実です。

なぜなら、早産や低体重児を引き起こす要因は歯周病だけではなく、人種や民族のほか、妊婦さんの年齢、喫煙の有無や薬剤の投与、歯周病の罹患程度など様々な要因が複雑に絡み合っているためだと考えられているからです。

まとめ

まとめ

歯周病が早産・低体重児に影響するか否かは賛否両論ありますが、妊娠中は女性ホルモンの影響により、身体だけでなくお口の中も様々な変化が起こることは確かです。

唾液分泌量の減少やつわりに加え、食の好みの変化や間食などにより普段よりも口腔内トラブルを起こしやすくなる時期であることに間違いありません。

だからこそ、可能な限り丁寧なセルフケアと歯医者さんのサポートが必要なのです。
歯科医師会や各市町村は妊婦さんのための歯科検診を推奨しています。

自分のお口の状態を正しく知り、適切なサポートを受けることはご自身のためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にも繋がります。

妊娠中の方はもちろんのこと、将来妊娠を望んでいる方も積極的に歯医者さんを受診して、歯周病や虫歯予防のために普段から口の中のケアに努めてくださいね。