歯周病とは

歯周病

歯周病という言葉は皆さんご存知だと思います。まずは、歯周病がどのように起こり、どういった症状を引き起こすものなのか見ていきましょう。

歯周病は、お口の中にひそむ歯周病菌によって歯周組織(歯肉や歯槽骨)が炎症を起こし、最初は歯肉に炎症を起こし、その後歯を支えている歯槽骨を溶かしていく病気です。対策しないまま進行すると、一気に歯が動揺して抜け落ちてしまうこともあります。

歯と歯肉の間には、歯周ポケットと呼ばれる溝があります。ここに細菌がたまると、歯垢と呼ばれる粘着性のものが付着し、歯肉や歯周組織を攻撃して炎症を引き起こします。すると、歯周ポケットはさらに深くなり、歯垢は硬くなって歯石となって、簡単に除去できない奥深くに沈着するようになります。

はじめは自覚症状がないものの、だんだんと歯肉が赤く腫れたり、歯を磨くと出血したりしてきます。重症化すると、強い口臭を発する、歯肉から膿が出る、歯がグラグラする、歯肉が下がって歯が長く見える、といった症状が現れます。

治療方法としては、炎症の進行を止めるために歯石や歯垢を取り除くことが中心となります。重度の場合は歯肉を切開して歯石や歯垢を取り除かなければならないこともあります。できるだけ初期の段階で治療をすることにより、少ない負担で改善できます。

歯周病は、自分では発病に気付きにくい病気で、自覚症状がない「サイレントキラー」と呼ばれるほどです。定期検診を受け、年に数回は歯周病がないか歯科医師に診てもらうことをおすすめします。

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドローム

「メタボ」という略称でよく耳にする「メタボリックシンドローム」。厚生労働省によると、平成28年にメタボリックシンドロームと診断された人数は、40~74歳でおよそ1,425万人。翌年の年代別の人数を見ると、特に40代以降で大きく人数が上昇する傾向にあります。

具体的には、どのような状態をメタボリックシンドロームと呼ぶのでしょうか。
メタボリックシンドロームというと、お腹が出ていると危険性が高いというイメージがあるかもしれませんが、これまで見てきたように腹囲の大きさだけが基準となるわけではありません。

まず、男性の場合、腹囲が≧85cm、女性の場合、≧90cmとなる内臓脂肪型肥満(りんご型肥満)であることに加え、高血圧や高血糖、それに脂質代謝異常のうち、2種類以上が現れた場合、メタボリックシンドロームであるとされます。これらの組み合わせは心臓病や脳卒中などを引き起こしやすい病態なので、兆候が見られる場合は早めに改善することが求められます。

心臓病と脳卒中は、それぞれ日本人の死因の2位、3位とされるほど、多くの人がかかりうる病気です。両者ともに動脈硬化が原因とされていますが、その動脈硬化を引き起こす要因といわれるのが、高血圧や糖尿病、喫煙、肥満などと考えられています。

上記の似た病態はメタボリックシンドロームで引き起こされるとされており、各国の機関でそれぞれ独自にメタボリックシンドロームの基準を設けています。

日本では、インスリン抵抗性や内臓脂肪が基準値を超えた場合に、メタボリックシンドロームとする診断基準を設けています。診断基準をもとに動脈硬化を予防する目的も含め、メタボ健診とも呼ばれている「特定健康診査」を実施しています。

特定健康診査は40~75歳未満を対象に実施することが医療保険者に義務付けられているもので、リスクが高いと判定された場合は、生活習慣を改善するための指導が行われます。

また、肥満とメタボリックシンドロームが混同されることがありますが、肥満は「体に余分な脂肪がついていること」を表し、BMI(体重(kg)÷身長(m)の2乗)と呼ばれる数値で「肥満症」であるか判断しています。

肥満症もメタボも脂肪を基準としてはいますが、脂肪の場所や基準そのものの違い、健康障害の有無など、さまざまな点で診断が異なります。

歯周病とメタボリックシンドロームの因果関係

歯周病とメタボリックシンドローム

歯周病にかかると、場合によっては歯が抜けたり、あるいは抜歯しなければならなくなったりしてしまうので、口元の見た目が気になるようになります。しかし、歯周病は口内の審美性だけにとどまらず、全身に影響があると考えられています。

歯を失うと噛む力が弱まるため、硬い食べ物を避けたり、噛む回数が減ったりします。一見、これくらいでは大きな影響はなさそうに思われますが、食べ物が限られると栄養が偏りがちになります。歯周病が原因でパンやご飯などの軟らかい糖質(炭水化物)を摂取する割合が増えてしまうと、血糖値が上がってインスリンをたくさん分泌し、脂肪が体に蓄積されていきます。

歯周病による生活習慣の変化が、メタボリックシンドロームの一因といわれている糖尿病や動脈硬化などに影響するのではないかと考えられています。

また、噛む回数が減ることは、認知症のリスクも高めるといわれています。歯周病にかかってしまうとさまざまな病気の因子につながる可能性があり、全身疾患のリスクを高めてしまう悪循環に陥ります。リスクが高くなると、医療費の負担も大きくなります。

全身疾患に比べるとあまり影響がないと思われがちな歯周病ですが、口内をいつも清潔にしたり、定期検診を受けたりして歯周病を予防することが、あらゆる疾患のリスクを減らすことにつながるでしょう。