ロイテリ菌とは?

ロイテリ菌は、ヒトの母乳由来の乳酸菌です。L-8020菌とも呼ばれています。
この乳酸菌はヒトの母乳やお口の中に常に存在しています。そもそも乳酸菌とは何でしょうか。

乳酸菌は、糖類を分解して乳酸などを生成する細菌の総称です。
自然界に広く存在する細菌で、人間の体内では腸に常在していることでよく知られています。

細菌の群集は菌叢(きんそう)という複雑な生態系を構築し、顕微鏡で覗くとまるで花畑のように見えることから「フローラ」とよばれています。

現在ではヨーグルトなどの発酵食品を摂取して、腸内フローラのバランスを整えることが、一般的になっていますよね。

そんな乳酸菌は実は腸だけでなく、皮膚やお口の中にも存在していることはご存知ですか?

ヒトの皮膚は常在菌によって弱酸性に保たれています。細菌がバリア機能を果たし、皮膚に付着する病原性細菌の増殖や侵入を防いでくれているのです。
お口の中のフローラは、口腔と鼻腔に存在する約700種類の細菌で構成されています。

フローラを構成する細菌は、ヒトの健康に良い影響をもたらす「善玉菌」と、主に悪い影響を与える「悪玉菌」、善玉と悪玉どちらか優勢な方の味方をする「日和見菌」という3タイプに分かれるとされています。

善玉菌と悪玉菌のバランスは10対1が理想です。
しかし偏った食生活やストレス、抗生物質の摂取、加齢などさまざまな原因によって、腸内フローラのバランスが崩れてしまうと、身体に不調が出てくることがあります。
自然界と同じく、ヒトの体内フローラも良好なバランスの取れた多様性が大切です。

ロイテリ菌は、お口の中のフローラにおける善玉菌です。悪玉菌に対してはロイテリンという抗菌物質を産出して増殖を抑える効果がありますが、善玉菌とは共存します。
善玉菌と悪玉菌のバランスを整える働きがあるのです。

ロイテリ菌の効果とは?

ロイテリ菌はお口の中でどのように働き、どのような効果があるでしょうか。

ロイテリ菌はお口の中のフローラのバランスを整えて、人体に悪影響を及ぼす細菌の活動を抑制します。
歯周病学会ジャーナル オンライン版2020年2月4日版では、歯周病や虫歯の予防効果が認められるという報告があります。

歯周病は、歯周病菌が歯茎や歯を支えている骨(歯槽骨)などに炎症を引き起こします。
歯周病患者にロイテリ菌を含むタブレットを摂取してもらったところ、半数近くの患者で出血が減少し、歯周ポケットの深さも改善するなど、歯周病の症状を緩和が見られたんだとか。

歯周病は深刻化すると歯の寿命に関わる病気ですが、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの循環器疾患や、糖尿病、誤嚥性肺炎、早期低体重児出産といった口腔以外の部位へも影響することが分かっているので、早めの治療、改善が重要です。

ロイテリ菌は、酸の産出で歯を溶かし虫歯を作るミュータンス菌の活動も抑えます。ロイテリ菌の摂取で、ミュータンス菌の数は1/3~1/5まで減少したという研究報告があります。

ドライマウスとして知られる口腔乾燥症の予防にもなります。
嫌な臭いを発生させる細菌の活動も抑制するので、口臭予防も期待できます。臭いをごまかすのではなく、口臭を引き起こす根本原因の細菌にアプローチすることが可能です。

またロイテリ菌には、ピロリ菌の抑制や便通の改善、アトピーやアレルギー性疾患の改善効果も認められています。
赤ちゃんの夜泣きの原因の一つである乳児疝痛(せんつう)という激しい腹痛も、腸内バランスの乱れが要因なので、ロイテリ菌の摂取で改善が見込めます。
ただし、赤ちゃんへのロイテリ菌の摂取は担当の医師によく相談して行いましょう。

このように有用なロイテリ菌ですが、一回摂取しただけではなかなか定着せず、成人の場合は一週間程度で体外に排出されてしまうとされています。
フローラの良いバランスを維持するためには、サプリメントのように継続的に摂るといいでしょう。

腸内バランスを整えるには発酵食品の積極的な摂取などもお勧めです。
また、糖質制限も有効なので、タンパク質や野菜中心の食生活を心がけるようにしましょう。

大事なのは毎日の歯磨き

ただし、ロイテリ菌だけでお口の中の健康を実現、継続できるわけではありません。

毎日のケアで一番重要なのは、やはり歯磨きによるプラークコントロールです。
食後には必ず歯磨きをして、お口の中に残った食べカスを除去し、プラークをていねいに取り除くことで、細菌の増殖を防ぎましょう。

取り切れずに蓄積してしまったプラークや歯石は、定期的に歯科医院でクリーニングするのがオススメです。
定期検診では、虫歯や歯周病も自覚症状の出ない初期段階のうちにチェック可能です。早期に発見できれば、歯や歯茎に大きなダメージを受ける前に、痛みなく治療ができます。

ロイテリ菌はこうした日々のケアの助けになります。
簡単にプラスできる方法なので、お口のケアの補助に検討してみてはいかがでしょうか。