「日本人の8割が歯周病」は嘘?
歯周病であるかどうかの判定には、CPI(Community Periodontal Index、地域歯周疾患指数)という診査法が世界的に用いられています。
2011年当時は、「歯肉から出血している」「歯石がある」「歯周ポケットがある」のいずれかに当てはまる人は全員所見あり=歯周病であるとして測定されました。
歯石が少しあるだけでも歯周病として数えたため、「8割の人が歯周病」という結果になったのです。
CPIは都度改変されているため、2011年に日本における歯周疾患者数を調査した時と改定した今では歯周病と診断される基準が変わっています。
改定後は8割の人が歯周病であるという結果にはなっていません。
ですが、2011年に8割の人のお口の中に何らかの所見が見られていることに違いはないので、お口の中の健康を見直す必要はあるのかもしれませんね。
新しい基準での日本人の歯周病の割合は?
改定されたCPIでは、「歯肉出血」と「歯周ポケット」という2つの項目を評価するという新しい基準が設けられました。
厚生労働省が3年ごとに行っている「患者調査の概況」には、様々な傷病の患者数などが載っており、2017年のデータを見ると、新しい基準での日本人の歯周病の割合がわかります。
これによると、「歯肉炎及び歯周疾患」の総患者数は、398万3,000人(男:162万1,000人、女:236万3,000人)。
当時の日本の総人口数は1億2,670万6,000人であると報告されていますので、これを元に計算してみると日本人の歯周病の割合は3~4%程度ですね。
あくまで報告のため正確な数値ではないかもしれませんが、8割には到底及ばないという結果といえるでしょう。
※同資料では、総患者数を以下のように計算しています。
「総患者数とは、調査日現在において、継続的に医療を受けている者(調査日には医療施設で受療していない者を含む)の数を次の算式により推計したものである。
総患者数=入院患者数+初診外来患者数+(再来外来患者数×平均診療間隔×調整係数(6/7))」
歯周病で抜歯する人の割合は?
重度の歯周病になると、歯を抜かなくてはならいこともあります。
では具体的に、歯周病になった方の何割が抜歯をしているのでしょうか?
厚生労働省の医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室が、2021年5月に発表した「歯周病罹患の現状と対策について」では、歯を抜くに至った主な原因を紹介しています。
歯周病が原因で抜歯をした患者さんの割合は、年代別に以下の通りでした。
15歳未満:2.2%
15〜19歳:2.1%
20〜24歳:1.6%
25〜29歳:3.3%
30〜34歳:6.9%
35〜39歳:12.0%
40〜44歳:23.7%
45〜49歳:28.1%
50〜54歳:33.6%
55〜59歳:45.5%
60〜64歳:47.6%
65〜69歳:48.9%
70〜74歳:49.7%
75〜79歳:48.8%
80〜84歳:43.3%
85歳〜:45.7%
55歳以上になると抜歯をした患者さんのうち、45%以上の患者さんが歯周病が原因なんです。
一方で、「80歳になっても自分の歯を20本以上残そう」という運動である8020(ハチマル二イマル)運動の達成率は1989年の運動開始当初は達成率約7%だったものが、2016年には約51%にまで上昇。
昔に比べて抜歯をしなければならない患者さんは減っているのかもしれません。
歯周病は歯の抜歯の原因第1位!
歯周病が歯を失う原因の第1位というのもこの結果から言われているのです。
55歳以上は歯を失う原因の45%以上が歯周病。
歯周病で1本でも歯がなくなることで残された歯にかかる負担が大きくなり、残された歯が弱ってまた歯を喪失する…という負の連鎖を起こしてしまいかねません。
歯周病を予防しておけば、他の歯を失わなくても済むかもしれませんね。
定期検診が重要
「日本人の8割が歯周病」はやや大袈裟であるとされていますが、歯周病で歯を失う患者さんが多いのも事実です。
歯周病は進行するまで自分自身では気が付きにくい疾患と言われています。
自分自身では気が付きにくいですが、歯医者さんでお口の中を検査すれば早期発見が可能なんです。
定期検診では汚れを取るだけではなく、歯周病や虫歯など疾患のチェックもしているんです。
歯を失わずに済むためにも、定型検診を受けて気が付きにくい疾患を予防しましょう!