各々の舌の色に応じた健康状態について

舌の色により示唆される健康状態は異なります。ここからは、舌の色(黒・白・紫・赤・グレー・黄・オレンジ・緑・青)に応じた健康状態を解説していきます。

黒い舌

皮膚や髪、爪の中のケラチンが蓄積すると舌が黒くなります。舌が黒くなり、毛が生えたように見える黒毛舌が有名です。以下、舌が黒くなる原因です。

・口腔衛生状態の不良
・抗生物質などの薬物
・タバコ
・放射線療法
・黒い液体(コーヒーなど)
・糖尿病やHIV感染(非常にまれ)

白い舌

舌が白い場合、口腔カンジダ症のように口の中でカビ菌が増殖している事が考えられます。

口腔カンジダ症になると痛みが出ることもあり、人によっては嚥下や咀嚼することが難しく感じる場合もあるようです。

他に舌が白くなるものとして、白板症があります。白板症は喫煙が原因でしばしば起こるとも言われています。

加えて、口の中の被せ物に含まれる歯科用金属に対するアレルギーなどで現れる扁平苔癬(へんぺいたいせん)があります。扁平苔癬は頬粘膜に現れることも多いですが、舌が白くなる原因となることもあります。

白板症は癌になることもある前癌病変で約10%が癌化すると言われています。白板症の部分は角化していることが多く、触ると硬さを感じることもあります。

扁平苔癬は発疹の一種で、金属でできた被せ物が扁平苔癬の原因になることもあるので、被せ物を非金属製の材質に取り替えることで消失する可能性があります。

*口腔カンジダ症であれば、ガーゼなどである程度白い舌苔を拭い取る事が可能で、白板症や扁平苔癬は拭い取ることはできません。

紫色の舌

血液循環や心臓の状態が悪ければ舌が紫色っぽく見えるかもしれません。

また、川崎病(非常にまれな病気ですが、血管に炎症が起こる重い病気)の兆候として舌が紫色になることがあります。

赤色の舌

ビタミンBの欠乏や子供に多い猩紅熱(しょうこうねつ)が原因で舌が赤色になることがあります。

猩紅熱の原因になる溶連菌に感染すると喉の痛みに加えて舌が膨らんで赤みのある舌(苺舌)が認められます。

また、薬や食べ物に対するアレルギー反応の一部として起こり得ます。舌の表面が平滑で真っ赤になるハンター舌炎の他、まれに川崎病の兆候として舌が赤色になることがあります。

グレーの舌

舌に灰色の斑点が認められる地図状舌が代表例です。

舌をベーッと出すと地図のような模様に見えることが特徴です。ストレスやビタミン不足が関連しているという説もありますが、詳しい原因は分かっていません。

また、湿疹になると舌の色が灰色に変わることもあり、2017年の研究では湿疹を持つ200人の被験者のうち、4割以上の被験者の舌が灰色であると報告されました。

黄色の舌

細菌の繁殖により舌が黄色くなることがあります。口腔内が不衛生になったり、口の中が乾燥すると、舌の上に細菌が過剰繁殖する可能性があります。

非常に珍しいですが、より深刻な健康状態の時に舌が黄色くなることもあります。2019年の研究報告では、糖尿病のサインとして舌が黄色くなり得ることが報告されています。舌が黄色くなる他の可能性に黄疸があります。

オレンジの舌

口腔内の衛生状態が不良であることや口腔内乾燥が原因でオレンジ色っぽくなりますが、舌が黄色っぽくなる原因と同じです。

ある特定の抗生物質や食べ物で舌がオレンジ色に変わることがあり得ます。代表的なものとして、人参の色の大元であるベータカロテンの摂取で舌の色がオレンジ色に変わるかもしれません。

緑色の舌

細菌の繁殖で舌が緑になることがあります。

舌が緑になる原因は舌が黄色や白色になる原因と同様です。

青色の舌

血管内の酸素不足が下記原因で舌が青くなることがあります。

・肺からの酸素不足
・血液疾患
・血管に関連する疾患
・腎臓病

酸素濃度が低ければ迅速な治療が必要になるかもしれません。
舌が青くなる原因として、湿疹も考えられます。

いつ病院で診てもらえれば良い?

わずかな舌の色の変化は特に害はありません。例えば、レッドワインを飲むと舌が真っ赤になりますが、全く問題はありません。

病院を受診する判断の一つとして、舌の変化(色・形・サイズ)が数日間継続するようなケースです。例えば、口の中が強く乾燥するような場合は、医療機関を一度受診して診てもらうことが重要です。

余談ですが、ストレスなどで舌に見た目上の問題が無いのに痛みが出ることもあります。舌に一見何の問題が無いように見えるのにも関わらず、燃えるようなヒリヒリした痛みを舌に感じることを舌痛症といいます。

舌痛症の特徴として、食事中は痛みが和らぐというものがあります。

舌が白いと虫歯や歯周病の原因となるカビ(カンジダ菌)が増えていることも

健康な舌であれば、ピンク色で程よく舌苔(ぜったい)が表面に付着しています。舌の色の変化は日々の生活でよく起こることです。舌をチェックすることで全身の健康状態を推測することもできます。

急に舌の色、形、ツヤなどが変化し、数日続くようなら病院で診てもらいましょう。舌の色の変化に加えて、風邪などの急性症状も認められる場合は感染症の可能性があるので、その場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

また、舌が真っ白だと、カビが繁殖している証拠です。カビは虫歯や歯周病の原因菌であるとされています。カビが歯周病のキーマンとする考え方もあります。

もし、舌をベーッと出して真っ白なら普段の食生活でカビが大好きな砂糖(炭水化物)に偏った食生活をしているのかもしれません。

一度、ご自身の食生活を見直してみましょう。タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取は重要です。

昔、のど飴が大好きで舌が真っ白だった患者さんにのど飴を止めてもらって、アムホテリシン(カビ用の薬)を服用してもらったことがあります。真っ白な舌が健康なピンク色の舌に数週間で戻ったということもありました。

異常な空腹感を感じ、甘い食べ物を無性に食べたくなるような経験をしたことがある人は要注意です。
カンジダ菌が舌や体内で蔓延っているのかもしれません。加えて、お腹が急に痛くなり下痢をする過敏性腸症候群様の症状があるとより一層の注意が必要です。

歯や歯茎の健康状態に加えて、舌の形や色などもしっかりとチェックする歯科医院もあります。本記事の内容は歯科医師でも中々知らない内容です。舌の色と全身の健康状態が関連していることを頭の片隅に入れてもらえると嬉しい限りです。

本記事に記載されている内容は患者さんのお口の中の状態により異なることがあります。詳しいことは受診するクリニックのドクターに直接問い合わせるようにしましょう。