認知症ってなに?

認知症とは、脳の神経の細胞死などで機能する細胞が減少することで障害が起こり、日常生活を送るうえで支障が出てしまう状態のことをいいます。

認知症は複数の種類に分けることができますが、患者数が1番多いとされているのは「アルツハイマー型認知症」です。
次いで「レビー小体型認知症」、「血管性認知症」と続き、認知症の85%を占める3大認知症と呼ばれています。

認知症は、65歳未満では男性のほうが、65歳以上では女性のほうが患者数が多く、男女ともに罹患する可能性があります。
患者数の最も多いアルツハイマー型認知症は、男性に比べ女性の罹患率が高いとされています。

日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」における推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、人数にして約602万人であり、高齢者のうち6人に1人が、認知症を患っているとされています。

表1 アルツハイマー(認知症)患者数の推移

年代 2005年 2008年 2011年 2014年 2017年
アルツハイマー(認知症) 175,000 240,000 366,000 534,000 562,000

参考:厚生労働省 患者調査

認知症の症状

認知症の症状は「中核症状」と「心理症状(周辺症状)」に分けられます。
「中核症状」は、脳の病変による認知機能の低下から引きおこる症状のことを指します。

「心理症状(周辺症状)」は、中核症状に認知症患者の性格や環境、周囲の人の対応などが影響して起こる症状とされています。

心理症状は認知症患者によって起こす症状が異なります。
また、認知症患者に適した環境にある場合は、心理症状は起こらない可能性もあります。

中核症状

記憶障害
認知症の症状では、短期記憶といわれる数分~数日の記憶が失われやすいといわれています。
また、自分が体験した記憶や経験した記憶を忘れてしまうこともあります。

日常的に使用する、いわゆる「一般常識」や、生活上に必要なこと、身体で覚えていることなどは忘れにくい傾向にあります。

見当識障害
周囲の人との関係や、時間や場所の認識ができなくなる症状です。
現在時刻がわからなくなる、自分のいる場所がわからなくなり帰れなくなるなどが当てはまります。

また、頻繁に会うわけではない近所の人や親せきを理解できず、他の人と間違えたりする症状も見当識障害に含まれています。

実行機能障害
物事を行うにあたり、順序立てて行うことができなくなります。
着替えができない、料理ができないなど考えながら行動を行うことが困難になります。

理解力・判断力の低下
理解力や判断力が低下し、瞬時の判断ができなくなります。
ゆっくりと時間をかけて判断することはできるケースもありますが、車が来た時に避ける、信号を見て判断して横断するなどが難しく、命に関わる障害ともいわれています。

失語・失認・失行
言葉の認識ができず、文章が読めない、会話ができないなどの「失語」、目で見て得た情報を理解することができない「失認」、道具の使い方がわからない、指示された運動ができないなどの「失行」などが起こります。

身体的には異常がなく、脳機能の低下によって行えない事象が増える状態です。

心理症状(周辺症状)

・徘徊
・暴力・暴言
・幻覚
・妄想
・せん妄
・誤認
・収集癖
・弄便(不潔行動)
・失禁・排尿障害
・不眠・睡眠障害
・うつ症状
など

歯周病になると噛む力が弱くなり認知症が悪化

噛むことと認知機能についての研究論文「咬合・咀嚼と認知機能」によると、動物が咀嚼不全に陥ると、認知機能にも悪い影響が及ぶという報告がされています。

逆に、インプラント治療によって咀嚼が改善された人々の前頭前野には活性化の傾向が見られ、ひいては認知機能にも好影響を与えているとされています。

また、日常の食生活でよく噛むことにより記憶力に影響が及ぶかどうかを調べた「咀嚼が一般高齢者の短期記憶に長期的に与える影響」では、一般の高齢者12名に、毎食後30回以上の咀嚼を行ってもらい、1週間後と半年後の2つのタイミングで調査を行ったところ、咀嚼力と短期の記憶力の双方において、向上が見られたという結果もあります。

これらの結果からも、よく噛んで食事をすることは、認知症予防にもつながっていくといえるかもしれません。
歯周病は悪化すると最後には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

また、歯が少なくなってしまうと、食べ物が噛みにくくもなります。
そのため、より噛まなくてもよい食べ物を好んで選ぶようになり、より咀嚼回数が減っていくという悪循環に陥りやすくなります。

歯周病を予防し認知症予防につなげましょう

歯周病と認知症の関係は研究が進んできており、相関関係の研究、仮説・報告が出てきています。

cortexyme社が発表の論文「アルツハイマー病の脳におけるP.gingivalis:疾患の原因と小分子阻害剤による治療の証拠」や「歯周炎は、アルツハイマー病のマウスモデルにおいて、認知機能を低下させ、ニューロンとグリアを損ないます」 など今後もエビデンスのさらなる蓄積が期待される分野となっています。

このように、歯周病に対する予防は、同時に認知症を予防することにもつながっていくと考えられます。
正しい歯磨きと定期的な歯科検診で、歯周病の予防をしっかりと行っていきましょう。