骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は骨密度が減少してスカスカになり骨が脆くなる疾患です。
建物に例えるのであれば、建物を支える骨組みが少なくなり骨組み自体が脆くなるイメージです。

加齢に伴いカルシウムの吸収力が減少することも考えられますが、食事や運動などの長年の生活習慣も骨粗鬆症の発症に関連していると言われています。

女性の場合、閉経後の女性ホルモン(骨形成を促進し骨吸収を抑制する働きを有するエストロゲン)の減少に伴い起こる可能性が高いです。

女性ホルモンの量が骨粗鬆症と深く関連しているため、一般的に女性に多い疾患ではありますが、男性にも起こり得ます。
男性ホルモン(テストステロン)の減少も骨粗鬆症につながります。

日本の骨粗鬆症患者数は潜在的な数も含め、1000万人を超えていると言われており、誰にでも起こり得る疾患です。
骨粗鬆症患者が加齢による身体機能低下によって転倒するなどすると、骨折して寝たきりになるなどの問題が生じ得ます。

荷物を持ち上げたり、尻もちをついただけでも簡単にポキっと折れてしまいます。
さらに、骨折して寝たきりになった場合、そのまま介護への移行が必要になることも多いです。

骨粗鬆症の治療は基本的に投薬です。骨粗鬆症のお薬ですが、大まかに分類すると3つのお薬があります。

・カルシウム製剤

・骨の形成を促進するお薬(活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、副甲状腺ホルモン製剤)

・骨の吸収を抑える薬(女性ホルモン製剤、カルシトニン製剤、デスノマブ、塩酸ラロキシフェン、ビスフォスフォネート系製剤(BP製剤))

カルシウムは骨を作る主要な成分です。
活性型ビタミンD3は摂取したカルシウムを腸管から吸収する手助けをしてくれます。

副甲状腺ホルモンは骨を形成する骨芽細胞を刺激して骨密度を高めます。
ビスフォスフォネート系製剤やデスノマブは骨を破壊する破骨細胞に作用し骨吸収を抑制して骨密度が下がるのを抑えます。

骨粗鬆症のお薬には色々ありますが、ビスホスホネート系製剤を服用している患者さんの場合、歯科治療において注意が必要です。

ビスホスホネート系製剤とは?

ビスホスホネート系製剤は骨を破壊する破骨細胞の働きを抑制する薬です。

悪性腫瘍(がん)の骨転位の認められる患者にも使用される代表的なお薬です。
注射薬と飲み薬の2種類がありますが、骨粗鬆症の場合飲み薬を飲むことが多いです。

従来のビスホスホネート系製剤は1日に1回など、常用薬としての服用が一般的でした。
近年開発されたビスホスホネート系製剤の場合、1年に1回の点滴で終了というものも販売されています。
認知機能の低下で飲み忘れのリスクを回避する点などで大きなメリットがあります。

ビスホスホネート系製剤のデメリットですが、一般的なものに発熱や頭痛などの副作用が起こる可能性があります。
ビスホスホネート製剤自体が免疫細胞により異物とみなされると免疫反応によって排除しようとするためです。

しかし、初回だけの副作用であり、2回目の服用では起こる可能性は低いです。
また、解熱鎮痛剤による対処も問題ありません。

ビスホスホネート系製剤の服用により、必要な歯科治療が受けられない可能性があります。

例えば、矯正歯科治療です。

矯正による歯の移動は骨代謝が不可欠です。
ビスホスホネート系製剤により骨代謝が抑制されていると歯が動きません。

加えて、抜歯などの外科処置をビスホスホネート系製剤を服用している患者に行うと、顎骨壊死(BRONJ)が起こる可能性が高いことが2003年に報告されました。

ビスホスホネート系製剤以外にデスノマブという薬も同頻度で顎骨の壊死を引き起こすことが判明しています。

ビスホスホネート系製剤で顎骨骨壊死の副作用が起こる理由

それでは、ビスホスホネート系製剤により顎骨壊死の副作用が起こる理由は何でしょうか。

残念ながら、顎骨壊死の発症メカニズムは未だ不明瞭のままです。
顎骨壊死の発症要因として考えられているのが、外科処置後の顎骨の露出と口腔内細菌による影響です。

歯茎の手術や抜歯を行うと、顎骨が一時的に露出します。
顎の骨が露出すると、口腔内の細菌が容易に接触することにつながり、歯周病に似た炎症症状を引き起こすと考えられています。

口腔内細菌が顎骨と接触しやすいため、口腔内の炎症の原因となる細菌を事前に取り除いておくことが大事であり、ビスホスホネート製剤投与前に口腔内を清潔に保つことが重要であるとされています。
実際、顎骨壊死予防に口腔内清掃が効果的であるという研究報告もあります。

歯科医院で気を付けるポイント

歯科医院を受診する際は下記に留意しましょう。

・骨粗鬆症の自己申告、おくすり手帳の持参
骨粗鬆症であることは必ず歯科医師に申告し、骨粗鬆症のお薬を飲んでいる場合は必ず申告しましょう。
お薬手帳を持っていただければ、説明も楽に終わります。

・抜歯前の内科医との連携
抜歯を検討する際に、骨粗鬆症の薬を出している内科医に患者さんの病態を問い合わせることがあります。
場合によっては、お薬を変更する可能性もあります。

・口腔清掃良好に
歯周病や虫歯により歯の根っこに炎症があると、顎骨壊死が起こる可能性が高くなります。
そのため、虫歯や歯周病は治療し、その後はメンテナンスで口腔内を綺麗に保つことが重要です。

・ビスホスホネート製剤の使用が決まったら服用前に歯科検診を
ビスホスホネート製剤を服用することが決まった場合、抜歯などの治療が必要な歯がある場合は事前に治療してもらうことをお勧めします。
服用を開始していると治療がすぐに受けられなくなる可能性があります。

まとめ

ビスホスホネート製剤の服用有無が歯科治療を受ける上で重要であることがお分かりいただけたと思います。
注射薬よりも飲み薬の方が影響が少ないと言われていますが、いずれにせよ歯科治療は外科処置なので、注意が必要です。

歯科医院受診時に骨粗鬆症の薬を飲んでいる場合、必ず歯科医師に申告するようにしましょう。
デスノマブなどのビスホスホネート製剤でない骨粗鬆症の薬でも顎骨壊死の可能性があることが報告されていますので、隠さず申告しましょう。

がんなどの原因により急にビスホスホネート製剤を飲むこともありますので、普段からお口の中を綺麗に保つために定期的に歯科医院を受診してくださいね。