日本人の8割が歯周病?
「国民の8割が歯周病」と聞いたことはありませんか?
これは厚生労働省が行なっている「歯科疾患実態調査」の結果です。
これは2011年の結果であり、少しでも歯石が付着している、少しでも出血がある、歯周ポケットが認められると「歯周病の所見あり」とされたため、やや大げさな捉え方といえるかもしれません。
現在は歯周病の所見ありとされる基準は変わっていますが、日本における歯周病患者の数は依然として多いというデータが出ています。
歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)がある方の割合は年齢が増すごとに高くなり、45歳以上では過半数を占めるようになります。
「しっかり歯を磨いているし、口の中は健康だ」と思っていても、既に歯周病にかかっている可能性も十分にあるのです。
その一方で、80歳で20本以上の歯をもっていることを示す「8020」の達成者は増加傾向にあります。
日本の歯科医療の技術の工場や日本人の歯の大切さに対する意識が高まったことにより、80歳でも自分の歯が多く残っている結果に繋がっているのかもしれませんね。
画像引用:e-ヘルスネット 厚生労働省(2020-07-28)
歯周病治療の内容とは?
まず、治療が必要かどうか、歯周病の有無や進度を確認するための検査をします。
レントゲン撮影や歯周ポケットの深さ、歯の動揺度、歯茎からの出血などを測定し、歯周病であると診断された場合は、その検査結果を元に患者さん1人1人のお口に合った治療を行います。
詳しい歯周病の治療方法・は患者さんによって異なりますが、代表的な治療方法をご紹介します。
歯石除去
歯石とは、歯周組織に付着している歯垢が硬化したものです。
歯垢であれば歯磨きで取り除くことができますが、歯石になると歯磨きで取り除くことはできません。
そのため、歯科医院でスケーラーと呼ばれる専用の機械を使用して取り除くことが必要です。
歯茎より上に付着している縁上歯石と歯茎より下に付着する縁下歯石があり、それぞれに適したスケーラーを使うことで効率的に除去していきます。
縁下歯石は縁上歯石以上に固く付着しており、また、歯茎に覆われているため取り除くのが難しくなるため、場合によっては歯茎を切り開く歯周外科治療にて取り除くケースもあります。
噛み合わせの確認
噛み合わせが悪い状態では噛んだときの圧力が偏ってしまい、強く噛んでいる歯の周囲の歯槽骨が吸収しやすくなってしまいます(専門用語で、「外傷性咬合(がいしょうせいこうごう)」といいます)。
噛み合わせが合わない原因が詰め物や被せ物などの場合は一度調整を行ってもらい、正しい噛み合わせになるようにします。
また、動揺している歯を動揺していない隣の歯と接着して固定する方法(暫間固定)も歯周病治療の一環として行います。
抜歯
歯周病が進行し、歯を支えている歯槽骨が溶けてしまうと最終的に歯を残しておくことが難しくなります。
歯槽骨が失われた歯が大きく揺れ動くと噛み合わせが安定しなくなるため、他の歯に余計な咬む力がかかる原因となり、他の歯の歯槽骨がより吸収する可能性も高まります。
抜歯をして入れ歯やブリッジ、インプラントで人工歯を入れることで、周囲の歯の負担を減らすような処置(歯周補綴)を行います。
また、意図的に抜歯をしなくても、歯周病が進行すると自然に歯が抜けてしまうこともあります。
合わない被せ物の再治療
歯周病の原因である歯石を取り除いたあとは、再び付着しないようにすることが大切です。
合わない被せ物と歯・歯茎の隙間には歯垢や菌がたまりやすくなるため、合わない被せ物は一度外して適合を良くするために作り直すこともあります。
歯周外科治療
歯周病が進行している人は歯石が歯根に付着していることがあります。
歯茎より下に付着した縁下歯石は歯茎が覆っているため目で確認できず、歯石を取り除く器具を挿入しにくく、かつ盲目的に歯石を除去するため、完全に除去できないこともあります。
その場合、歯茎を切り開いて歯の根を露出させ、歯石や汚染された組織を取り除いて歯茎を戻す治療が行われることも。
歯周ポケットが深い場合は歯茎を一部切り取ることで歯周ポケットが浅くなり、再度汚れや歯周病原細菌が歯周ポケット内にたまらないようにすることもあります。
家庭でできる歯周病治療のポイント!
歯周病を改善するために歯医者さんで歯石の除去や治療を受けますが、歯周病は歯医者さんで治療を受ける日以外にも進行しますし汚れはたまってしまいます。
歯周病治療には、定期通院はもちろんのこと、家庭でできる患者さんのセルフケアが欠かせません。
家庭でできる歯周病治療のポイントをご紹介します!
フロスや歯間ブラシを使う
歯垢が付着しやすいところのひとつに、歯ブラシが届きにくい歯間があります。
デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシを歯磨きの補助として使うことで、歯間もきれいにできます。
デンタルフロスには糸を使うタイプがありますが、初心者はホルダータイプ(持ち手のついているタイプ)から使って習慣付けるのも良いですね。
また、歯間ブラシもL字型やストレート型など形状の違いがあります。
ブラシ部分の材質や持ち手の形で使用感が変わりますので、自分自身が使いやすいものを探してみたり、歯間ブラシを使用する部分によって使い分けてみてくださいね。
殺菌作用のあるケアグッズを使う
歯周病原細菌を殺菌する効果がある成分を含む、マウスウォッシュや歯磨き剤が販売されています。
殺菌効果のあるマウスウォッシュを使うことで歯周病の原因となる細菌の抑制が期待できます。
ただし、こうした殺菌作用をうたうケアグッズには歯周病そのものを改善する効果があるとは限りません。
あくまで歯磨きの補助の道具として使用してください。
歯科医院でTBIを受けてみよう
TBIは「Tooth Brushing Instruction」の略で、歯医者さんで受けられる歯磨き指導のことです。
歯磨きは食べ物のカスなどを取り除くことはもちろんですが、より大きな目的として歯垢を除去することが挙げられます。
これによって細菌が歯や歯周組織に広がらないようにして歯周病を予防します。
自分自身での歯磨きでは、磨き残しが20%以下であればよく磨けていると言われます。
しかし、ほとんどの人は20%以上の磨き残しがあるのです。
多い人では80%、それよりもっと磨き残していることも。
歯の磨き方に自信がある、歯をマメに磨いているから自信があるという人ほど磨き残しが多いという調査もあるんです。
TBIを受けて正しい磨き方を身に付けることで、歯磨きのレベルが格段に上がることが期待できますよ。
まとめ
45歳以上では半数の方が罹患していると考えられている歯周病。
まだ歯周病になっていない、と思っていると実はすでに進行した歯周病の可能性も。
歯周病は痛みもなく静かに進行するサイレントディジーズと呼ばれており、患者さんは予防のために通院したつもりが、既に歯周病にかかっていて治療が必要なケースも少なくありません。
まずは歯周病のチェックのために、一度受診してみましょう!
まだ歯周病にかかっていなかったとわかれば、予防のために歯磨きの指導を受ける、付着している歯石を予防のために除去するなどしてみてくださいね。