肺大細胞がんは肺がんの一種
肺がんはよく聞くがんの種類かと思いますが、「非小細胞肺がん」と「小細胞がん」の2つに大きく分けられます。肺大細胞がんはそのうち「非小細胞がん」に分類されるもので、肺がん全体の約5%を占めています。
肺大細胞がんの特徴
肺大細胞がんは、肺の末梢に大きな腫瘤をつくるという特徴があります。また、リンパ節や離れたところにある臓器にも転移しやすくなっています。組織型別の5年生存率は52.5%とされています。
肺にできる大細胞がんは進行が早く、胸壁や縦隔(左右の肺の間にあたる部分)に染み出るように広がることがあります。特に、「巨細胞がん」という性質の悪い肺がんの場合、進行がより早く発熱症状も認められるようになります。
大細胞がんが分類されている非小細胞がんには、この他に腺がんと扁平上皮がんがありますが、大細胞がんはこの2つが持っている性質がまったく当てはまらない悪性腫瘍です。扁平上皮がんは太い気管支に局所的に広がるがんですが、肺大細胞がんは主に肺の末梢に発生します。また、腺がんも気管支部位に小さく発生するものですが、大細胞がんは大きな腫瘤になりやすいがんです。
肺大細胞がんの症状
肺がんはよく聞くがんの種類かと思いますが、「非小細胞肺がん」と「小細胞がん」の2つに大きく分けられます。肺大細胞がんはそのうち「非小細胞がん」に分類されるもので、肺がん全体の約5%を占めています。
肺の病巣に対する症状
肺がんを発生する部位で分ける場合、「肺門型(肺門の近くにできたがん)」と「肺野末梢型(肺門から離れたところにできたがん)」の2つに大きく分けられます。肺門とは肺の中で太い気管支と肺動脈が出入りする部分のところで、縦隔に見られます。この肺門の近くにできる肺門型のがんだと、咳のほかに痰(血を含む血痰の場合もある)、呼吸困難、息切れなどが起こります。
一方、肺門から遠い場所にがんができる「肺野末梢型」だと、自覚症状が出ないことが多くなります。初期症状としては体重の減少や食欲不振、倦怠感、発熱などがありますが、肺門型に比べると自覚しにくいといえるかもしれません。
肺の周辺にある臓器に浸潤した場合の症状
一般的に、肺がんは他臓器に比較して血管ならびにリンパ管網が豊富であるため、血行性、リンパ行性転移の頻度が高く遠隔転移を起こしやすく、それが予後不良の原因となっていると認識されています1)。
肺がんが胸膜や胸壁に浸潤(がん細胞が周りの組織に染み出すように広がること)した場合、胸や背中に痛みを感じることがあります。肺の上部では肩の痛みや腕のしびれといった症状が現れます。また、胸膜と呼ばれるところにがんができて胸水が溜まると、咳や息切れ、呼吸困難といった症状が出ます。
この他、心臓の周囲に水が溜まる「がん性心膜炎」を合併すると、心臓の動きが乱れて動悸や血圧低下、さらに呼吸困難などが出現します。
「反回神経」と呼ばれる声帯を動かす神経が腫瘍によって圧迫または浸潤されることもあり、このような場合は声のかすれやむせるといった症状が出ます。
骨や脳に転移した場合の症状
過去の文献では、剖検例による肺がんの遠隔転移は、他側肺が55.6%、肝臓が44.1%、骨が43.1%、副腎が34.6%、脳が28.3%、腎臓が28.3%であると報告されています2)。
骨や脳では、それぞれ転移した場所により症状が異なります。
骨への転移が認められた場合は、痛みやしびれが出るほか、骨折しやすくなります。
脳は、頭痛やふらつき、吐き気、半身麻痺などに加え、転倒しやすい、ろれつが回らない、物忘れしやすいといった症状が出ます。また、箸や茶碗がうまく使えなくなるなど、日常生活における動作にも支障が出ます。
肺大細胞がんの検査法
肺がんを検査するにあたり、治療前に病理診断をすることと、進行を調べてステージを判断することが重要になります。そのため、さまざまな検査を行い判断を下します。また、肺がんかどうか確定する他、病気がどの範囲にまで広がっているか調べます。
胸部単純X線写真
基本的な検査として行われるのが胸部単純X線写真(レントゲン)です。健康診断でも使用され、病気発見のきっかけにもなる検査です。異常が見られると白い異常陰影となって映し出されるもので、肺を撮影することで病変がないか判断する材料となります。また、CTに比べて被ばく量が少ないという特徴もあります。
CTスキャン
X線を利用してコンピューターで画像処理を行う検査です。レントゲンでは見えにくい部分も確認でき、小さな病変でも見えるようになります。がんの大きさや、どの範囲にまで広がっているかも確認できます。
このように、小さな腫瘍でも確認できて、がんの早期発見に役立ちます。リンパ節や肝臓など、他臓器への転移についても判断できます。
MRI
強い磁石と電波によって病巣を断面図としてモニターに映し出せる装置です。X線は使いません。CT検査では正常な組織と区別がつきにくい臓器の診断に有効です。血管や肋骨、背骨(脊椎)、脳などに転移がないか調べるときに使用されることがあります。
腫瘍マーカー
血液や尿などの成分を測定することでがんの存在や再発の診断を行う検査です。これは、がんが発生するとそのがんに特有の物質が作られ、血液や尿に出現するという性質を生かした検査になります。ただし、腫瘍マーカーに反応があったとしても、必ずしもがんであるとは判断できません。また、がんのある場所も分からないため、その他の検査の結果と合わせて総合的に判断することになります。
PET検査
がん細胞は、正常な細胞よりも多くのブドウ糖を必要とする性質があります。それを利用し、ブドウ糖が多く集まっている場所を調べてがんの有無や位置を探すという検査になります。静脈からFDGと呼ばれるブドウ糖を注射し、ブドウ糖の分布を画像にして調べます。
その他の検査
この他にも、症状などに応じてさまざまな検査が行われます。気管支鏡検査は、ファイバースコープで気管支内を観察する検査になります。腫瘍の一部を採取して生検検査をするときにも行われます。
また、肺の粘膜から分泌される痰に含まれる細胞を顕微鏡で観察する、喀痰細胞診という検査もあります。これら以外にも、体の表面から針を刺して細胞や組織を採取して生検検査をするというものもあります。
肺大細胞がんの治療法
肺大細胞がんは、他の非小細胞肺がんと同じく主に3つの治療方法があります。
治療方法の選択は、主にがんの位置や大きさ、範囲、患者さんの健康状態などから総合的に判断されますが、非小細胞がんの場合は外科療法が多く選ばれます。外科療法の対象とならないケースでは、化学療法や放射線療法が検討されます。
外科療法
手術によってがんの組織を取り除きます。肺がんの根治治療として、治癒の可能性が高い治療方法です。治療内容として標準的なのは、肺葉と周辺のリンパ節を切除するというものです。近年は患者さんの体の負担を考慮して腹腔鏡手術がよく行われますが、腫瘍が大きい、または周辺の臓器にも湿潤が確認できた場合、開胸手術になることもあります。
化学療法
抗がん剤を使用し、体の中のがん細胞を消滅させます。生存期間が延長できるほか、QOL(生活の質)の改善などが期待できます。一般的に抗がん剤は静脈注射で投与され、3~4週間ほどの間隔で行うか、内服する抗がん剤で治療をします。
放射線療法
がん病巣に高エネルギー放射線を照射し、がん細胞の死滅を目指します。手術ができない患者さんには、根治療法としての効果も期待されます。また、治療が難しいがんでも進行を遅らせて症状を和らげる効果があります。手術の前後に化学療法として併用するケースもあります。
まとめ
肺大細胞がんは肺がんの一種で、主に肺の末梢部に発生します。肺にできるだけでなく、周囲の臓器にも浸潤する可能性があります。検査方法も進歩しており、症状を自覚できれば早期発見に結びつき、根治治療につなげられる可能性があります。肺がんができる場所によっては咳や痰、呼吸困難などの症状が出るので、異変があれば病院で相談しましょう。
参考文献
1)Atsuhiko KAWAKAMI, Kazue ITOH, Yasushi ADACHI, Toshiro SUGIYAMA, Kaori SHIBATA, Tsuyoshi YABANA, Satoshi OKUSE, Kohzoh IMAI:A CASE OF LARGE CELL LUNG CANCER WITH METASTASIS TO THE COLON AND SPLEEN. GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY. 1996 Volume 38 Issue 3 Pages 887-891_1.
2)森田豊彦:教室における最近17.5年間の肺癌剖検例―肺癌399例の臨床病理学的解析―.癌の臨22:1323―1337,1976.