痛みや症状がなくても歯周病になる?
お口の中の疾患としては、虫歯と同様に多くの方に関係する歯周病。
年齢を重ねるほど免疫力が下がり、歯周病になりやすい傾向があります。
また、歯周病は進行すると歯を失うこともあり、歯の健康を長く保つためには、歯周病の治療や予防が必須となるのです。
そんな歯周病は、サイレントディジーズ(Silent disease、静かなる病気)と呼ばれています。
虫歯と違って、初期段階で痛みなどの自覚症状がほとんど出ません。
そのため、歯周病にかかっていても気づかず、進行してしまうケースも多いのです。
お口の中に特に痛みがなく、自身では気になる症状もないという場合でも、歯周病の検査を受けてみると歯科医師から歯周病と診断されることは十分にあり得ます。
では、何を基準に歯周病であると診断しているのでしょうか。
歯周病の診断基準とは
歯周病の症状の一つに、歯と歯肉との間に溝ができる歯周ポケットというものがあります。
また、歯周病は進行すると歯肉が腫れたり、歯を支えている歯槽骨が溶けたりします。
こうしたことを踏まえ、歯周病の診断では一つの歯ごとに歯周病かどうかを診断します。
具体的には、以下のように歯肉や歯根膜などの歯周組織の破壊の程度や炎症の程度を調べます。
レントゲン撮影により歯槽骨の失われている程度を調べ、ポケット探針という歯科器具を使用して歯周ポケットの深さをチェックします。
【組織破壊の程度】
・軽度歯周炎…歯槽骨吸収度(歯槽骨の破壊の程度)が歯根の長さの1/3以下で、根分岐部(歯の根の分かれ目の部分)までは組織破壊が進んでいない状態。
・中等度歯周炎…歯槽骨吸収度が歯根の長さの1/3〜1/2以下で、根分岐部まで組織破壊が進んでいる状態。
・重度歯周炎…歯槽骨吸収度が歯根の長さの1/2以上で、2度以上根分岐部まで組織破壊が進んでいる状態。
【炎症の程度】
・軽度歯周炎…歯周ポケットの深さが4mm未満
・中等度歯周炎…歯周ポケットの深さが4〜6mm未満
・重度歯周炎…歯周ポケットの深さが6mm以上
組織破壊の程度と炎症の程度のうち、より重度なほうが歯周病の診断に用いられます。
例えば、組織破壊の程度は軽度歯周炎であっても、炎症の程度が中等度歯周炎であれば、その歯は中等度歯周炎と診断されます。
歯周病の検査の内容は?
繰り返しになりますが、歯周病はプロービング検査とレントゲン撮影の結果によって診断します。
プローピング検査とは、歯周ポケットの入り口から底の部分までの深さを測定するものです。
先に目盛りのついた針状になっている金属の器具を、歯と歯肉の隙間に差し込んで測定していきます。
これで炎症の程度がわかるのです。
針なので炎症があると少しチクチクするような痛みを感じることがありますよ。
また、レントゲン撮影などで、歯肉に隠れている歯槽骨の高さを測定します。
これにより、どの歯の歯槽骨が溶けてなくなっているのか、組織破壊の程度を調べることができます。
その他、プロービング時の歯肉からの出血や、歯の揺れ、歯周病の原因となる細菌を調べます。
歯周病でよくある症状
そもそも歯周病は、歯周組織に繁殖した細菌が原因となって起こるものです。
初期段階では、歯肉が炎症を起こして赤く腫れます。
この状態を歯周炎と呼んでいます。
歯周炎が進行すると、歯肉から出血したり、歯肉や歯槽骨が溶けて歯がグラグラと動揺するようになり、いわゆる歯周病といわれるのです。
その他、歯周病になると歯肉から膿が出ることや、口臭がきつくなることなどもあります。
歯周病のセルフ診断
歯周病は痛みなどの自覚症状はほとんどないものの、セルフチェックによって早めに気づくことができます。
以下いずれかに当てはまる場合は歯周病の可能性があるため、歯科医院で検診を受けることをおすすめします。
□歯肉が赤く腫れている部分がある
□歯磨き後に出血する
□歯と歯の間の歯肉が丸い形状で、ブヨブヨと腫れぼったい
□歯肉が下がってきたと感じる
□歯肉を押すと出血したり、膿が出たりする
□歯が長くなったと感じる
□歯並びが変わった感じがする
□歯が少し浮いたような感覚がある
□歯と歯の間に隙間ができて、物が詰まりやすい
□歯を指で触るとグラグラと動揺する
□朝起きると口の中が粘っこく、苦いと感じる
□自分で口臭が気になる、人から口臭を指摘された
歯周病と診断されたら
歯周病がどれほど進行しているかによって、必要な治療が変わります。
歯肉ポケットの中に入り込んだ歯石を取り除き、炎症を起こす歯周病菌を除去することで、徐々に歯肉ポケットが浅くなることもあれば、歯肉や骨に対しての治療が必要なケースも。
腫れが引かない歯肉を除去したり、歯を支える歯槽骨を移植したりと、大掛かりな治療もあります。
また、歯周病が進行していて、歯を支える歯槽骨が溶けてなくなっていれば、いずれ歯が抜け落ちてしまうので抜歯することもあるのです。
まとめ
歯周病は歯を失うこともあるため、日頃からブラッシングを徹底するなどの予防と、早い段階での治療が大切です。
痛みや症状がなくても歯周病になっていることは考えられ、きちんとした診断基準もあるのです。
患者さん自身はピンとこなくても、歯科医は検査したうえで歯周病であると診断していますので、早めに歯周病を治せるよう通院してくださいね。