歯科麻酔って何?
歯科治療では多くの場合「局所麻酔」を使用します。
全身麻酔とは違い、部分的に効果を発揮させる麻酔です。麻酔が効いていない部分の感覚は残り、意識を保ったまま治療できます。
歯科治療で行なわれる局所麻酔には、以下の三つのタイプがあります。
浸潤麻酔
歯科治療でもっとも用いられる麻酔法です。
歯茎に注射することで、歯の神経や歯茎の神経に働きかけ、治療部位の痛みを取り除きます。
表面麻酔
注射の前に歯茎に塗ることで表面の感覚を麻痺させます。
表面麻酔をすることで、針が刺さる時のチクッとした痛みを軽減できます。
ジェル状のものや、スプレーするタイプがあります。
大人の治療だと表面麻酔をしないこともありますが、子供は注射に苦手意識を持っている場合も多いので、緊張を抑えるためにも有効です。
伝達麻酔
麻酔が効きにくい下顎の奥歯などに使用します。
枝分かれした小さな神経ではなく、脳からつながる太い神経の近くに打つことで直接働きかけるため、長時間広い範囲にしっかり麻酔効果を持続させられます。
神経ブロック注射ともよばれます。
子供に使っても安全なの?
治療に必要であるとはいえ、まだ身体の小さなお子さんに麻酔を使うことに不安を感じる保護者の方も多いはずです。
また、虫歯治療のための麻酔で死亡事故が起きたニュースによって、麻酔の使用に恐怖感を感じることもあるかと思います。
大人も子供も使用する麻酔薬の種類は同じで、使用する量に違いがあり、体重に応じて適正に使用量を調節すれば、問題はないとされています。
保護者の方は、事前にどのような麻酔を行うか、麻酔をした場合の注意点は何かといった説明は必ず受けるようにしましょう。
一般的な注意点については下記でご紹介します。
虫歯治療は虫歯の進行度合いによって異なりますが、大きく歯を削ったり、神経を取り除く、抜歯をするなど強い痛みが発生する治療もたくさんあります。
麻酔なしで耐えることは大人でも難しく、軽度の虫歯でない限り、麻酔は必要となるでしょう。
もし麻酔を使わず治療を行ったことで、痛みで暴れてしまう、急に口を閉じてしまうなどがあれば、虫歯治療が行えなかったり、虫歯を取り残してしまい、再発を招く原因にもなります。
また、暴れることによって治療のための器具が治療箇所以外にぶつかってしまい、思わぬケガに繋がる可能性もあります。
子供に歯科麻酔を使うメリット
麻酔の一番のメリットと目的は痛みの除去ですが、痛みによる恐怖やストレスを和らげるという効果も期待できます。
子供は痛みに敏感なため、痛い治療経験が歯科恐怖症のきっかけになる場合もあります。
1度歯科医院は怖いところと感じると、子供は極端に歯科医院を嫌がるようになります。
歯科医院に行くのが嫌で虫歯を悪化させてしまっては、お子さまの歯の健康を維持が困難になってしまいます。
「歯医者さんは痛いことをする場所ではない」というポジティブなイメージ形成のためにも、麻酔は役立ちます。
近年では、麻酔方法も進化しています。針が刺さる時の痛みを感じさせない極細の注射針や、麻酔薬の注入スピードをコントロールできる電動注射器も広く普及してきました。
表面麻酔には苦いものもありますが、子供が喜ぶフルーツ味のバリエーションもあります。
子供に歯科麻酔を使うデメリット
一方で、麻酔にはデメリットがまったくないわけではありません。
お子さんによっては表面麻酔をしていても、針を刺すときの痛みを敏感に察知することもあります。針が視界に入るだけで恐怖を感じてしまうことも。
実際に痛みがなくても、針が刺さるイメージが強く、「麻酔をする」というだけで、過剰な恐怖心を抱いてしまうケースもあります。
また、服用している薬がある場合や現病歴、既往歴、アレルギーなど体質によっては麻酔で偶発症を起こしてしまう可能性もあります。
血圧低下などのショック症状や過呼吸、めまいや嘔吐といった症状が考えられます。
こうした事態を防ぐためにも、必ずおくすり手帳や母子手帳、健康記録などを持参するようにしましょう。
その他にも、麻酔薬の成分に対する過敏症や、高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、糖尿病、血管攣縮などの既往がある場合には、病状が悪化する危険性があります。
よく説明を受けてから治療を始めましょう
お子さんが安心して歯科治療を受けるためには、保護者の方の協力が欠かせません。
麻酔に関するメリット・デメリットを把握するほか、治療内容や麻酔の種類などしっかりと歯科医師と相談することが重要です。
服用薬や既往歴などの懸念は必ず伝えて、不安な点があれば必ず事前に説明を受けるようにしましょう。
麻酔後には、帰宅してからも注意すべきことがあります。
おやつや食事は、治療から2時間程度は間をあけて、麻酔が切れてから食べるようにしましょう。
麻酔が効いている間は口の中の感覚が鈍り、頬の内側や舌をうっかり噛んでしまうことがあるからです。
食べ物の温度にも注意が必要です。
熱さが感じ取れず、やけどしてしまうのを防ぐため、麻酔が効いている間は熱い飲み物を避け、常温の飲み物にしておきましょう。
麻酔が効いていると、口元が麻痺してまるで自分のものでないような不思議な感覚になります。
しびれた感覚が面白くて、子供は唇を強く噛んだり、手を口の中に入れてしまう事もあります。
必要以上に触りすぎて、治療部位の付近の頬にひっかき傷や腫れなどを作ってしまうと、麻酔が切れてからが痛い思いをしてしまうでしょう。
頬に大きめのシールを貼ることで、爪でひっかいてしまうことを予防している歯科医院もありますので、対策を歯科医師や歯科衛生士と相談してみるのも良いでしょう。
もし触ってしまってお口の中が腫れた場合には、歯科医院に連絡して処置してもらいましょう。
また、家に帰る途中や家に帰った後のお子さんの様子をよく観察してください。
普段とは違う「麻酔」を行ったことで興奮してしまい、いつもよりはしゃいでいたり、いつもと違う行動をとることがあります。
万が一
・過呼吸を起こしている
・唇が青紫色になっている
・意識が朦朧としている
・ぐったりと元気がない
・痙攣を引き起こしている
などの明らかにいつもと違う異変がお子さんに見られた場合は歯科医院に連絡し、指示を受けましょう。
歯科医院が閉まっている時間であれば、救急へ連絡してください。
つい麻酔した部分を触りたくなる気持ちを理解しつつ、お子さんの様子を見守って、注意してあげてくださいね。