歯科恐怖症とは

子供が「歯医者さんが怖い」と思うことは珍しいことでありません。

しかし、その小さいときに強引に歯科医院に連れていかれた、治療が痛かった、といったトラウマが原因となって、成人になっても歯科医院に対して過剰な恐怖を感じたり、拒絶反応を示すことがあります。それが、歯科恐怖症です。

もし、歯科医院に行ったときに次のような症状が現れるようであれば、あなたも歯科恐怖症かもしれません。

・歯医者に強い恐怖を覚える
・歯医者のにおいをかいだり器具の音を聞いたりするだけで緊張する
・治療が始まると鼓動が早くなるほか、発汗、動悸や息切れなどを起こす

また、こうした恐怖心は歯科医院の通院中にだけに起きるとは限りません。
歯科医院に行くことを考えるだけで恐怖が強くなるケースもあり、そのために予約を延期したり、予約した日に行かなかったり、歯がボロボロにも関わらず歯科医院へ行く決断ができない、という状態に陥ってしまうこともあります。

歯科恐怖症を克服して治療を受けるには


少しでも安心して治療を受けるためには、歯科恐怖症について理解のある歯科医院を選ぶことです。
担当の歯科医師が歯科恐怖症の患者さんに配慮があるかどうかだけでも事前に分かっていると、安心感はまったく違ってきます。

歯科医院のウェブサイトなどを見ると、歯科恐怖症の患者さん向けのページを作り、安心して治療を受けられる方法などを紹介しているところがあります。

歯科医院が行っている患者さんに安心してもらうための取り組みの一部をご紹介します。

・痛みの少ない麻酔を行っている

麻酔の注射が怖いという方のために、麻酔の上で下記工夫を行っている歯科医院もあります。

・針を刺すときの痛みを軽減する表面麻酔
・注入時のぶれをコントロールして不快感を軽減する電動麻酔
・あらかじめ麻酔液を温めておくことで注入時の違和感を減らすカートリッジウォーマー

※麻酔を行う際に、細い針の使用や麻酔の注入スピードをゆっくりするなども痛みを軽減するために大切です。

・笑気吸入鎮静法を用意している

緊張を和らげる方法として、笑気ガスを吸入することで痛みや恐怖を軽減した状態で治療を受けられる「笑気吸入鎮静法」があります。
入院の必要はなく、人体に影響もありません。

どこの歯科医院でも行える治療というわけではないので、事前に確認する必要があります。
また、鼻詰まりがある場合、受けられません。

・治療前にしっかりしたカウンセリングを実施している

治療の前に、治療方針や治療費のほか、患者さんの希望や不安な点などを確認するため、カウンセリングの時間をしっかり確保している歯科医院もあります。

患者さんが思っていることを伝えられるよう、カウンセリングルームの雰囲気やスタッフの対応などに配慮しているところもあるので、ウェブサイトなどで確認するとよいでしょう。

・静脈内鎮静法を行っている

意識がほとんど無い状態で治療を受けられる方法です。
血管に気持ちをリラックスさせるためのお薬を注入します。

インプラント治療などではしばしば活用されている施術です。
麻酔歯科のドクターがモニタリングすることが多いため、受けられる歯科医院は限られていますが、極度の歯科恐怖症の方は検討されると良いでしょう。

歯がボロボロで歯医者に相談できない

歯科恐怖症の方の中には、通院に恐怖を感じてしまうため虫歯を長年放置してしまった、というケースも少なくありません。

また、お口の中の状態が悪くなるほど、治療を受けることが恥ずかしくなったり、治療が大掛かりになるかもしれない、という恐怖によってますます歯医者への連絡を躊躇ってしまう悪循環に陥ってしまうことも。

歯科医師は日々多くの患者さんを診察しており、お口の中がボロボロの患者さんも見ています。恥ずかしがる必要はありません。
なぜお口の中がボロボロになるまで歯医者に行けなかったのか、担当の歯科医師に話せるようにしておくとよいでしょう。
会話で上手に伝えることができないかも、と思ったら紙に書きだして見せるのでも十分です。

歯科医師は、患者さんから聞いた話を判断材料として、患者さんが負担を感じにくい治療方針を組み立てることができます。
患者さんが怖い思いをしないような治療方法を提案してくれるので、可能な限りお話ししてください。

「治療が怖い」と伝えるときのポイント

初めて通院する歯科医院や、久しぶりに通院する場合、まずは歯科医院の様子を見たい、歯科医師と話をしてみたい、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、「初回は治療をしないでほしい」と伝えてみたり、「治療が怖い」ということをはじめに伝えてみるという方法もあります。歯科医師も普段から多くの患者さんを診ています。
治療が怖いと伝えることは何も悪いことではありません。ぜひお話ししてみてください。

また、「ドリルの音が怖い」「イスを倒されると緊張する」など、具体的にどのような場面が怖いのか伝えられると、歯科医師も対応しやすくなるでしょう。
何かを持っていれば安心する、特定の体制であれば不安が軽減する、など安心して治療が受けられるコツがある場合は歯科医師に伝えてみましょう。

自分の緊張する症状について話し、はっきり要望を伝えることで歯科医師は理解し、対応することができます。
話した患者さん自身も伝えられたことで安堵するという側面があります。

歯の状態が悪い場合は、少しでも早く治療を受ける必要があります。
怖い思いをしないで済むよう、信頼できる歯科医師を探しすことからはじめてみてはいかがでしょうか。