間食が増えていませんか?

家にいる時間が長くなると、すぐ手に取れる場所にお菓子などがあるからついつい食べてしまうことが増えた…という方も少ないないでしょう。
また、お子さんが自宅にいる時間が増えたためついついお菓子を渡してしまっていませんか。

生活スタイルの変化によって間食が増えていたり、ダラダラ食べるようになったり、さらに人と会わないからと食べた後に歯を磨かなくなったりしていないでしょうか。
間食が増えたことで体重の増加も気になるところですが、それだけでなく歯の健康にも目を向ける必要があります。

また、お菓子をたくさん食べるのは良くないから、何回かに分けて少しずつ食べているという方もいるかもしれません。
しかし、間食は食べる量だけでなく、食べてから次に食べるまでの時間や回数にも問題があるのです。

食べてから2時間は歯の休憩時間

「間食が増えると虫歯になりやすい」と言われる理由について確認していきましょう。

まず注目したいのは、食後のお口の中の「pH」についてです。
pHは酸性やアルカリ性の度合いを表すもので、酸が増える(酸性となる)とpHの数値は減少します。

お口の中のpHは唾液の働きによって原則中性(6.8~7.0)に保たれています。
しかし、飲食物の酸や口内の菌が出す酸により、飲食のあとはお口の中は一時的に酸性に傾きます。
歯の表面は硬いエナメル質で覆われていますが、pHが5.5以下になるとエナメル質が酸によって溶けてしまうのです。
これを「脱灰」といいます。

具体的に、間食したときの口の中の変化を見ていきましょう。

まず、虫歯や歯周病の原因となるミュータンス菌というものが、食べ物に含まれる糖分をエサにして増殖し、酸をつくります。
この酸によって、歯の表面などの白い汚れである歯垢(プラーク)が酸性に変化します。

すると、歯の表面のエナメル質からリンやカルシウムなどが唾液中に溶け出すのです。
ただ、唾液などによって歯垢のpHは上昇し、リンやカルシウムは再び歯に沈着して歯が修復されます。
これを「再石灰化」といいます。

お菓子などでなくても、食事をすると歯垢のpHが5.5以下になりますが、歯が再石灰化されることで、1日3回の食事であれば簡単に虫歯にはなりません。
ところが、歯が再石灰化される前に間食したり、お口の中が酸性の時間が長くなると、歯の修復が追いつかなくなり、虫歯が発生することになるのです。

画像引用:APAGARD

上記の図はステファンカーブという食事による歯垢中のpHの変化を表した結果です。
特に糖分を摂取すると大きく下がります。

ステファンカーブを見ると、食事や間食のたびに脱灰と再石灰化が交互に訪れています。
食事や間食の間をしっかり開けると、口内が酸性になっている時間が少なくなり、虫歯になりにくい状態が作られます。

逆にちょこちょこと間食したり、ダラダラと長時間に渡って食べていると、口内が酸性の時間が長くなり歯が再石灰化する時間を十分に取れず、虫歯になりやすいお口の環境となってしまうのです。

そのため、目安として食後2時間は歯の休憩時間として間食を控えることが大切となります。

ダラダラ食べると虫歯のもと

上記でもご紹介したように、糖分中心の食事や間食をすると歯垢のpHが低下してエナメル質が溶けますが、時間を置くことで歯は唾液などで再石灰化します。
しかし再石灰化する前に間食をすると、歯の修復が追いつかなくなります。

そのため、ダラダラ食べているとミュータンス菌が酸を作り続けてしまい、なかなか歯の再石灰化が始まりません。
こうした口内環境の時間が長くなると、その分虫歯になるリスクも高まっていきます。
食べ物をよく噛むことは大切ですが、時間があるからとダラダラ食べ続けていては歯に良くありません。

食べる時間を決めて食事(間食)をすると良いでしょう。

間食回数を減らして虫歯を予防しましょう

歯の再石灰化のために食後に時間を空ける必要がありますが、2時間経てば完全に再石灰化されるわけではありません。

間食以外にも、糖分などが入った飲み物によってpHが低下することも多々あるためです。
とはいっても、あれもこれもやめないと…と急に実践しようとしても難しいので、まずは間食とダラダラ食べる時間を減らせるように気をつけて生活しましょう。

また、歯垢がついたままの歯の表面は、食事や間食のたびに酸を作り続けてしまうため、歯磨きで歯垢をしっかり取り除くことも大切です。
特に就寝中は唾液の分泌量が減ることで、歯垢の中にある酸を中和する効果が弱まります。
歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスなどを使って、磨き残しがないようにしましょう。

歯磨きのタイミングについては、再石灰化を待つという観点では食後すぐ行うことは推奨されない場合もあります。
明確に食前または食後のいつ歯磨きをすべきだとは言い切れないところです(30分後に歯を磨くのが良いという説もあります)。

歯磨きのタイミングよりも、間食を減らすことが虫歯を予防するためのポイントといえます。
特に子どもの歯を覆うエナメル質は大人よりも薄く柔らかく、虫歯の進行も早いことから注意が必要です。