型取りはどんなときにするもの?

詰め物や被せ物、入れ歯などを作るために、歯型をとります。
歯の欠けた部分の形や大きさは患者さんによって異なるため、再度虫歯になったり欠けてしまったりしないように、患者さん一人ひとりに適した詰め物や被せ物、入れ歯を作るために行います。
また、矯正などの治療で歯並びを確認するために型取りをすることもあります(歯科の専門用語で、歯並びを確認するために歯型をとって作られた歯型模型を「研究模型(スタディモデル)と言います」)。

詰め物や被せ物などの補綴物は歯科技工士が作製しますが、歯科技工士は患者さんのお口の中で直接補綴物を作製することができるわけではありません。型取りによって完成した患者さんのお口の中の模型をもとに補綴物を作ります。そのため、型取りは精密さが要求される治療のひとつです。より正確な模型を作ることで、調整が不要で長く使える補綴物ができるようになるのです。

型取りの材料

型取りをした経験がある方は、ペースト状のひんやりしたものを口の中に入れられたということがあるかもしれません。

型取りで使用する材料には、さまざまな種類のものがあり、作る補綴物やお口の中の状態などによって使い分けがされています。

アルジネート印象材

印象材としては最もよく使われている材料といえます。
主に歯型を確認するときなどに使用します。歯科医院では「粘土のようなものをお口の中に入れて、歯型を採ります」と説明を受けた方もいるかもしれません。
印象材の原料はアルギン酸という成分で、昆布などの海藻類に含まれています。身体に害のある材料は使用されていないため、飲み込んでしまっても問題はありません。
アルジネートは粉末状のタイプの場合、水を混ぜて練るなどしてお口の中で型取りをするのに適した硬さにしていきます。細かな部分を型取りするのには向いていないため、下記に記載している寒天印象材と併用する「寒天アルジネート印象」として使われることも多くあります。

寒天印象材
寒天は天草を原料としており、お菓子などの材料として使われるほか、化粧品、そして型取りの印象材としても使われます。
食用に使われる寒天は固まっていますが、型取りに使用する寒天は60度くらいまで温め、溶けている状態にします。これにより、歯型を採ることができるようになります。そのため、患者さんは少し熱く感じたり、しみるなどの場合があります。
また、寒天単独で使用することはなく、アルジネートという印象材と併せて使用します。

シリコン印象材

原料はシリコンラバーと呼ばれるもので、材料費が比較的高く設定されている傾向にあります。しかし、安定性と精度が高く、精密な型取りが必要なときに重宝されます。
セラミックや金歯、インプラント治療といった特に精密さが重要になる自費診療の型取りで使用されることが多いようです(保険診療で作る被せ物などは寒天・アルジネート印象を行うことが一般的です)。また、喉に流れにくいので患者さんも安心できるというメリットがあります。

ワックス印象材
歯型にロウのようになっている歯科用ワックスを塗り、歯の形態を作ります。これをワックスアップといいます。柔らかくするために少し温める必要があり、お口の中に違和感を感じることもあります。実際に治療を始める前にワックスアップをすることで、被せ物などの補綴物のイメージをイメージしやすくする、シミュレーションを目的とした治療です。
板状にされたワックス印象材を柔らかくし、上下の歯で噛むことで噛み合わせの型取りにも使用されます。非常にまれな印象採得方法です。

型取りで苦しくならないためのコツ


このように、補綴物を作ったり、歯列矯正の経過を見るために欠かせない型取りですが、嘔吐しやすい方、お口の中に印象材が入ることに気持ち悪さを感じてしまう方にとっては苦しい場面であることに変わりはありません。
そこで、型取りの際に少しでも苦しさを軽減する方法をご紹介します。

鼻で呼吸をする
型取りのときに口で呼吸をしようとすると、印象材が邪魔になって息苦しさを感じてしまいます。また、口で呼吸をすると固まっていない印象材が喉の方へと流れ込む原因となったり、口に意識がいくため異物感を感じやすいなどもあります。嘔吐反射も誘発されやすいです。
鼻であれば障害物がないので、鼻で深呼吸をすると苦しさが少なくなります。
鼻でゆっくり深呼吸をするようなイメージで呼吸をしてみましょう。

顎を引く
型取りの際は、印象材が喉に流れ込まないようにするために、顎を引いて少し下を向くことが推奨されています。印象材が奥に入ってこないと感じるだけで、呼吸が楽になる場合もあります。
ただし、その人によって楽に感じる姿勢が異なるので、顎を引いても苦しいなと感じたら少し上を向いてみるなど、楽な呼吸ができる位置に微調整するとよいでしょう。

嘔吐反射があることを事前に伝える
嘔吐反射があることを歯科医師などが知らないまま型取りに入ると、患者さんの緊張が高まってパニックにつながる恐れがあります。治療の前に嘔吐反射があることを伝え、型取りの際に配慮してもらうようにしましょう。印象材を硬めに練ってもらい喉に流れにくくするなどの配慮をしてもらえるでしょう。

背もたれの角度を上げてもらう
椅子の背もたれを傾けていると、呼吸しにくく型取りが苦しくなると感じる方もいます。その場合は、嘔吐反射があることなどを伝えて椅子の傾きを水平位から座位に近い形まで上げてもらいましょう。

いろいろ対策をしてみてもどうしても苦しくなるという場合は、喉にスプレーなどによる表面麻酔をしてもらうなどといった方法もあります。また、半分眠ったような状態になってリラックスできる笑気麻酔というタイプの麻酔もあります。
また、歯科医院によっては、印象材を使わず、小さな装置を口の中に入れて歯型のデータを採取する「光学スキャナー」を用意しているところもあります(公的医療保険は適用されません)。こうした歯科医院を探して相談してみるのもよいでしょう。