歯の完全脱臼は歯が完全に抜けてしまっている状態です

転倒や交通事故、スポーツ中のケガなど、顔はあらゆる場面でぶつける危険性があります。そのとき、歯が割れていなくても、歯そのものが根っこの穴(歯槽)から抜けてしまうことがあります。これを「完全脱臼」といいます。幼児などの乳歯や、生えたばかりの永久歯などでよく見られます。

ちなみに、顔の打撲によって歯が少し抜けかかる「不完全脱臼」という状態もあります。こちらは歯が完全に抜けた状態ではないものの揺れが見られ、触ると痛みます。

歯の完全脱臼の治療法 抜けた歯を再植(元の位置に戻す)し両隣の歯と固定する

歯が完全脱臼してしまったら、どのような治療が考えられるでしょうか。
歯がきれいに抜けた状態であれば、その場で元の位置に戻すこともできます。脱臼した歯を戻したら、1~3カ月ほどスプリントによって両隣の歯と連結させ固定します。それから安静にしておくことで、歯の根っこの表面にある歯根膜が癒合していきます。

また、もし歯が落ちて脱落したとしても、すぐに再植することで元通りになるケースもあります(可能であれば、30分以内が望ましいです)。

ただし、乳歯の場合は元に戻さない方が良いでしょう。再植することで、永久歯への生え替わりに影響があったり、乳歯が感染したりするおそれがあるためです。

歯が抜けても諦めないで~保存方法・時間がカギ~

歯が完全脱臼したり脱落したりしても、元に戻る可能性は残っています。ここでは、歯医者さんに抜けた歯を持っていくまでに、しておくべき処置や保存方法などをご紹介します。

まず、歯が抜けてしまったら少しでも早く歯医者さんに持っていくことが大切です。歯が抜けてから30分以上過ぎ、それからさらに長引いてしまうと、歯の定着率が下がってしまいます。理由としては、歯と骨をつなぐ歯根膜という線維が乾燥に弱いためです。可能であれば30分以内に歯医者さんか、難しければ自分で埋め戻したいところです。

歯医者さんに持っていくまでは、抜けた歯を乾燥させないようにし、かつ清潔に保ってください。地面に落ちた場合などは、歯根膜がついている歯の根っこは触らず、水道水で軽く洗い流します(30秒以内に留めてください)。それから、お口の中に含んでおいたり、牛乳に浸けておいたりするとよいでしょう。

水道水や消毒液などに入れて保存してしまうと、歯を定着させるために必要な歯根膜が死んでしまうので、絶対にやめてください。

まとめ

もし交通事故やケガなどで歯が脱落してしまったとしても、歯の状態や保存状態によっては、元に戻せる可能性もあります。抜けた歯の根っこを触らないようにし、軽く洗ってからお口の中や牛乳などで保存し、なるべく早く歯医者に行って治療をしてもらいましょう。
良い保管状態で少しでも早く再植の処置を受けることで、歯の定着率が高くなります。

ただし、抜けた歯が乳歯の場合は、次に生えてくる永久歯の萌出の妨げになってしまうため、抜けたまま、またはグラついていたら抜いてしまうこともあるでしょう。
この記事で、あなたの歯に対する不安が少しでも解消されたら幸いです。