銀歯は"金銀パラジウム合金"が多い!
銀歯と呼ばれていますが、その素材は銀ではありません。
日本の公的医療保険が適用できる銀歯は2種類、金銀パラジウム合金と銀合金を素材としたものです。
そして、多くの歯科医院で使われているのが「歯科用12%金銀パラジウム合金」で作られた銀歯。
この金銀パラジウム合金は、金が12%、パラジウムが20%含まれていること、と定められているんです。
そのほかの金属の割合は異なりますが、銀が50%前後配合されていることが多く、そのほか銅やインジウムなどが数%含まれています。
金銀パラジウム合金は公的医療保険適用で安く治療が受けられていますが、実はかなり値段が高いものなんです。
金やパラジウムが高騰中!
銀歯が高価なものになっている一番の理由は、金とパラジウムの値上がり。
金銀パラジウム合金に12%も含まれている金の買取価格は、今や1gあたり8,000円台後半。
1年前に比べて約2,000円ほど、5年前に比べるとほぼ2倍となっているんです。
20%含まれているパラジウムも、聞きなれない金属かもしれませんが実は高価。
近年では、1gあたり9,000円台後半〜10,000円を超えることも少なくありません。
銀歯には、高騰が叫ばれる金以上に高い金属が多く含まれているんです。
2022年4月から、公的医療保険を適用した銀歯の治療費が最大3,500円程度から5,000円程度へと値上がりした理由もここにあるのです。
多くの歯科医院で銀歯を回収している
ところで、歯科医院で「銀歯の下が虫歯になっている」「銀歯が劣化している」「銀歯をセラミックに変えたい」などの理由で、銀歯を取り外した経験はありませんか?
その時、取り外した銀歯をどうしたか覚えているでしょうか。
患者さんが外した銀歯を持って帰ったりはせず、もう歯につけることができない銀歯はいらない、と歯科医院側に渡していることがほとんどだと思います。
もちろん、歯科医院が回収するのはおかしなことではありません。
銀歯は、お口の中に入っていたものは、「感染性廃棄物」に分類されます。
感染性廃棄物とは、簡単にいえば
「患者さんが感染症にかかっていた場合、外した銀歯に感染症の菌等がついている可能性があるから歯科医院で適切に管理して廃棄などをするように」
と決められているということです。
でも実は歯科医院は、患者さんに託された銀歯を捨てていません。
回収するだけじゃない!銀歯は売れる!
なぜ歯科医院では銀歯を廃棄せずに回収しているのか。
それは、銀歯を歯科用金属取扱業者に売っているんです。
これだけ聞くと歯科医院が悪いことをしているように聞こえるかもしれません。
ですが、患者さんの同意さえ得ていれば、歯科医院が歯科用金属取扱業者に銀歯を売るメリットもあるのです。
まず、パラジウムはレアメタル(希少金属)とも呼ばれるほど、生産量が少ない金属。
使い捨てにしていては、いつかは銀歯治療ができなくなるかもしれません。
廃棄せず歯科用金属取扱業者に買い取ってもらうことで、様々な工程を経て金属としてリサイクルすることができるのです。
患者さんが銀歯を売ることはできる?
確かに歯科医院で銀歯の廃棄をお願いせずに持ち帰れば、患者さんが銀歯を売ることもできます。
ただし、自分自身で銀歯を買い取ってくれるお店を見つける必要があります。
一般的な貴金属買取専門店では買い取ってもらえないこともあるので、「お口の中に入っていた金銀パラジウム合金を買い取ってくれるお店」を探しましょう。
歯科医院に買い取ってもらう、歯科医院を通じて業者に売ることは難しいでしょう。
銀歯を持ち込んでも買い取ってもらえないこともある
一般的な貴金属買取専門店では、銀歯の買取は断られることがあります。
理由として、まず一つ目はお口の中に入っていたものだからです。
お口の中に入っていた銀歯は「感染性廃棄物」に分類されるため、買取店が取り扱いを間違えると法に触れる恐れがあるほか、貴金属買取専門店のスタッフが感染症に感染するリスクが伴います。
二つ目に、ごく少量の金属だからです。
銀歯はひとつあたり約2〜5g。含まれている金やパラジウムの量はさらに少なくなります。
少量の金やパラジウムを取り出すには費用対効果が見合わないため、受け付けてもらえない可能性があります。
三つ目に、金銀パラジウム合金以外の金属でできた銀歯だからです。
歯科医院で治療した銀歯は、必ずしも歯科用金銀パラジウム合金とは限りません。
公的医療保険では、銀合金を使った銀歯の作成も認められているためです。
また、考えたくはありませんが、銀歯治療での儲けを増やすために金銀パラジウム合金以外の金属を使っている歯科医院もないとは言えません。
これらのことから、銀歯を貴金属買取専門店に持ち込んでもあまり高値で売れないことがあります。
※買い取ってもらえなかった銀歯は自治体のルールに従って廃棄してください。
家庭ごみとして捨てられる地域では、銀歯でゴミ袋が破れないようにティッシュで包むなど工夫するとよいでしょう。
※歯科医院では複数個の銀歯をまとめて取引するため、売れなかった銀歯を持ち込むことでリサイクルに協力できる可能性があります。
歯科医院から銀歯を返してもらいたい!
売れることを知らなかった間に歯科医院に渡した銀歯を返してもらうことはできるのでしょうか?
まず、近年は外した銀歯は患者さんの所有物として、歯科医院は回収及び廃棄する際には患者さんの同意を得る必要があるという考えが普及しています。
書面でのやり取りはあまり行われていませんが、口頭で「外した銀歯は歯科医院で処分していいですか?」と聞かれたことはあるでしょう。
それに「はい」「大丈夫です」など返事をしていれば、歯科医院に銀歯を渡すことに同意したこととなり、歯科医院から銀歯を返してもらうことは難しくなります。
そんなこと言われていない、私は同意していないという患者さんもいるかもしれませんが、口頭確認の場合は言った言わないの水掛け論となり、歯科医院の責任を問うのは難しいでしょう。
銀歯が回収できないケースもある
また、銀歯を外しても回収できないケースもあります。
自然に外れた場合は銀歯の形を保って外れることもありますが、多くの場合は銀歯を削って隙間を開け、そこから力を加えて外します。
銀歯の削った部分は粉々になるため回収ができません。
また、小さな銀歯の場合はすべてが削れてしまうこともあります。
金属を削って外す際には、摩擦により生じる熱から歯を守るために、水をかけて摩擦熱を冷ましながら行う必要があります。
そして、その水は患者さんの口からあふれたり、患者さんが溺れてしまわないように、バキュームと呼ばれる機械で吸い込みながら行います。
その際に、外れた金属もバキュームで吸い込んでしまうことがあるのです。
吸い込んだ金属は、バキュームについているフィルターから回収できることもありますが、回収できないこともしばしば。
銀歯を外しても、必ずしも返してもらえるとは限らないことを覚えておきたいですね。
過去に回収した銀歯を返してもらうのは難しい
このあと銀歯を外すので返してほしい。
その場合、先でご紹介したようにバキュームで吸い込んでしまう、粉々になってしまわない限りは患者さんが受け取ることができる可能性が高いです。
しかし、昔外した銀歯を今から返してほしいというのは無理だと思っておきましょう。
歯科医院は、回収した銀歯のどれがどの患者さんのものかまでは管理していません。
外した銀歯を再度付ける予定等がなければ、処分するものとして一括で管理しても問題がないからです。
また、すでに歯科用金属取扱業者に回収されていたり廃棄していれば、歯科医院にはもう外した銀歯はなく、返すことができません。
銀歯を返してほしい場合は、銀歯を外す前に持って帰りたいことを伝えておくとよいでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?
公的医療保険を適用して受けることができる銀歯ですが、金やパラジウムが高騰している今、銀歯のサイズによっては高値で売れる可能性があるんです。
銀歯を売ることでほかの歯の治療費にできたり、セラミックやジルコニアなど見た目にも気を使った治療にアップグレードできるかもしれません!
外した銀歯をただ捨ててしまうのではなく、リサイクルや治療のアップグレードのための費用にするなど、これから銀歯を外す予定の方はぜひ考えてみてくださいね。