不正咬合とは何ですか?

「咬合」とは上下の歯が接触したときの状態を指す言葉です。
それが不正ということなので、上顎と下顎がずれていたり、歯並びが乱れていてしっかり噛んでいなかったりすることを「不正咬合」といいます。

不正咬合にはさまざまな種類があり、見た目の違いはもちろんのこと、治療方法も異なります。
もしあなたが自分の歯並びに気になる点があれば、まずどのようなタイプの不正咬合なのか、検査を受けるなどして知るとよいでしょう。

不正咬合の問題点は、見た目だけではありません。噛み合わせが悪いとうまく食べ物を噛めなかったり、発音が正確にできなかったりします。
このほか、歯ブラシが届きにくい箇所ができて虫歯や歯周病のリスクが高まる、顎の関節への負担が大きくなり頭痛や肩こりになる、といった、健康上の懸念も強まります。

不正咬合は6つのパターン

不正咬合は、顎のずれ方や歯並びの乱れ方などから6つに分けられます。
まだ乳歯のある子どもであれば、骨格から矯正することができるので、以下に挙げるような不正咬合でもスムーズに改善できる可能性があります。

叢生(そうせい)

「八重歯」「乱ぐい歯」とも呼ばれます。歯がきれいに並ぶためのスペースを十分にとれず、窮屈になった歯がガタガタに並んでしまい、上下の歯がしっかり噛み合わない状態です。
歯が大きすぎたり、顎が小さかったりすることで叢生になります。歯を抜いたり、顎を広げたりすることでスペースを作ります。

上顎前突「じょうがくぜんとつ」(出っ歯)

一般的には「出っ歯」と呼ばれることが多い、前歯が前方に出ている不正咬合です。
上顎が前に出るタイプ(上顎前突症)と、下顎が後ろに引っ込んでいるタイプ(下顎後退症)の2種類があり、それぞれずれている顎を正しい位置へ誘導していきます。
日本人の多くが下顎後退症であるといわれています。

下顎前突「かがくぜんとつ」(受け口)

一般的には「受け口」と呼ばることが多い不正咬合です。
正常な場合、上下の歯が噛んだ状態だと上の歯が下の歯よりも外側に位置します。
ところが、下顎前突では下の前歯や下顎全体が前に出ているため、その反対に噛んでしまいます。
こうした症状から「反対咬合」とも呼ばれます。

空隙歯列「くうげきしれつ」(すきっ歯)

一般的に「すきっ歯」と呼ばれる、歯と歯の間に隙間ができる不正咬合です。
顎の大きさに対して歯が小さかったり、歯そのものが小さいことなどが原因で起こり、呼吸が抜けやすいため、息を使って発音するサ行やタ行がうまくいかないことがあります。

過蓋咬合「かがいこうごう」

上下の歯が噛んだとき、上の歯が下の歯に大きく被さってしまう状態です。
過蓋咬合が進むと下の前歯が上の前歯の歯茎に食い込んだり、上顎前突(出っ歯)を誘発したりするようになります。

開咬「かいこう」

噛んだときに上下の前歯が接触せず、奥歯だけが当たっている状態です。
食べ物が噛みにくいほか、呼吸が漏れやすくなり、息を使う「さしすせそ」の発音がうまくいきません。

不正咬合は虫歯や歯周病のリスクにも!?

歯の噛み合わせが悪いと、見た目だけでなく、あらゆる健康のリスクも抱えることになります。

虫歯や歯周病
歯並びが複雑に乱れることで歯ブラシが届きにくいところができてしまい、そこから虫歯や歯周病にかかるリスクが高まります。

口内を傷つける
まっすぐ生えず斜めに出てきた歯は、歯茎や口内の軟らかい粘膜に当たりやすくなります。

胃腸の負担が大きくなる
食べ物をしっかり噛めないと、唾液の機能が低下して食べ物が消化しづらいまま胃腸へ届いてしまいます。
これにより、内臓に負担がかかります。消化不良の原因になり得ます。

口臭
開咬などによる噛み合わせの場合は、口が閉じない状態になることがあります。
これによって口内が乾燥して唾液がうまく作用せず細菌の増殖による口臭が引き起こされます。

口呼吸
もともと、不正咬合の原因のひとつとして挙げられるのが口呼吸の癖です。
舌の位置がずれたり、唇の力が弱まったりすることで噛み合わせを悪くするので、改善が必要です。

肩こりや頭痛が生じる
不正咬合が原因で奥歯が噛み合わないことにより、顎の関節周りの筋肉が緊張し肩こりや頭痛といった症状を引き起こす可能性があります。

将来の歯科治療に影響する
入れ歯や差し歯といった治療が必要になったとき、不正咬合によってベストな治療を受けられなくなるかもしれません。

不正咬合は治療できるの?

まず歯科医院で精密検査を受け、必要なデータから治療方針を探っていきます。
不正咬合は、歯並びをチェックするだけではなく、顎の骨格や歯の傾き方、噛み合わせの状態、口内の衛生状態など、さまざまなポイントをチェックします。

歯並びを矯正していく場合、基本的にはブラケットという小さな装置を歯に取り付けて、そこにワイヤーを通して歯を動かしていく方法がとられます。
金属の矯正装置が目立ってしまうということから、歯の裏側に装置を取り付ける舌側矯正や、目立たないワイヤーを使った矯正方法も普及しています。

このほか、自身で取り外しが可能なマウスピース型矯正装置による矯正を実施している歯科医院もあるので、興味がある方は相談されるとよいでしょう。

もし、骨格に問題がある場合、まだ成長期にある子どもであればヘッドギアや上顎前方牽引装置などの装置を使ってもらい、骨格を矯正して不正咬合を改善していくこともあります。

具体的な治療方法は、不正咬合のタイプなどによって違いがあります。
まずは検査を受けて詳しい状態を知るところから始まります。それから、長期的に骨格や歯列を矯正し、治していくことになります。

まとめ

不正咬合は6つのタイプがあり、それぞれ特徴や治療方法が異なります。
ご自身やお子さんの歯並びが気になる場合は、歯科医院で詳しい検査を受けましょう。

あなたの不正咬合のタイプを診断し、治療方針が決まります。早く治療を受けることが望ましいですが、思春期成長を迎えている時期までであれば矯正することは可能かもしれません。

大人の歯も改善できる可能性があるので、まずは相談してみてください。
この記事で、あなたの歯並びに対する不安が少しでも解消されたら幸いです。