PMTCとは

PMTC

PMTCとは”Professional mechanical tooth cleaning”といい、歯科医院で歯科医師または歯科衛生士によって専門の機械を使って行う歯のクリーニングのことです。
「専門的機械的歯面清掃」とも呼ばれています。

PMTCは、歯磨きでは落とせない歯石や着色、歯磨きで磨き残したプラーク(歯垢)を専門知識を持つ歯科医師または歯科衛生士が専門の機械を使用して徹底的に取り除き、虫歯や歯周病になりにくいお口の中に近付けることができるんです。

でも、歯石以外の歯科医院でのクリーニングでしか取れない汚れと言われてもわかりづらいですよね。

台所やお風呂場など水場がぬめぬめとしていたことはありませんか?
あのぬめぬめは「バイオフィルム」と呼ばれ、お口の中の歯の表面にも付着するんです。

シンクのお掃除

実は、よく知られる「プラーク」と「バイオフィルム」は同じもの。
プラークって歯磨きで取れるんじゃないの?と思った方は、台所やお風呂場のぬめぬめを思い出してみてください。
歯や歯茎を傷つけないくらい優しい力で磨いて取れるでしょうか?

水場用の硬いスポンジやブラシで力を入れて擦らないと取れないですよね。
歯の表面に付いたバイオフィルムも、歯磨きでは完全には取り切れないのです。
そのうえ、歯に付いたバイオフィルムは時間が経つにつれてどんどん粘り気が強くなり、歯に強くくっついてしまいます。

歯磨きで取れるのはバイオフィルムの一部であり、歯に強くくっついたバイオフィルムはなかなか歯ブラシでは取り切れません。
PMTCでは専用の機械を使用して歯の表面を磨くことで、強くくっついたバイオフィルムを取り除くことができるんです。

そのほか、歯ブラシが届きにくい部分や歯と歯茎の境目など隅々までクリーニングすることができますよ。

PMTCと保険のクリーニングの違いは?

PMTCと保険のクリーニングの違いは?

でも公的医療保険を適用してもクリーニングはできるのにわざわざ自費でクリーニングするなんて…と疑問に思う方もいらっしゃるのでは。

では、PMTCと保険のクリーニングは何が違うのでしょうか?

まず、「保険のクリーニング」とは何かについて確認してみましょう。

基本的に「保険のクリーニング」と呼ばれているのは、歯周病の原因となっている歯石やプラークを取り除く歯周病治療です。

「保険のクリーニング」と呼んでいる歯科医院が多いため、患者さんが誤解しているケースが多いようですが、ただ歯をきれいにするためのクリーニングは現在の日本の健康保険制度では受けることはできません(※1)。

きれいな口の中と汚い口の中

そのため歯周病ではない患者さんは、歯周病や虫歯を予防するためのクリーニングを自費診療で受ける必要があるのです。

それが自費の歯のクリーニング、PMTCです。

お金を稼ぐために保険のクリーニングではなく自費のクリーニングをすすめられた!と歯科医院に不信感を持つ患者さんもいるようですが、「お口の中が健康だから公的医療保険が適用されなかった」のかもしれませんね。

また、保険のクリーニングはあくまでも歯周病治療のために行うもので、着色汚れを落とすなどの見た目に関する目的のクリーニングはできません。

着色汚れを取りたい、フッ素で歯を強くするなどのクリーニングを受けたい場合は自費のクリーニングを受ける必要があります。

※1:様々な基準をクリアし、「かかりつけ歯科機能強化型診療所(か強診)」に認定されている歯科医院では予防のためのクリーニングを公的医療保険を適用して受けることができます。

厚生労働省によると、か強診に認定されている歯科医院は全体の10%程度であるといわれています(平成29年4月時点)。

PMTCで得られる効果

では、PMTCについてもう少し詳しくみていきましょう。

PMTCを受けることで具体的にどのような効果が得られるのでしょうか?

歯石・プラークの除去

キュレット

PMTCでは歯の表面に付いた汚れを取り除いていきます。
当然ですが、歯の表面に付いている歯石やプラークも一緒に取り除きます。

歯科医院では高速回転するブラシやカップ(シリコン製の専用の器材)で歯の表面を磨きますので、上記でご紹介した強くくっついているバイオフィルムも除去することができますよ。

着色汚れが取れる

歯の表面の汚れを取り除くことで、歯の表面に付いている着色汚れ(ステイン)も取り除くことができます。

しかし、タバコを吸う、コーヒーを毎日たくさん飲むなど着色汚れの原因となるものをよく摂取する機会が多い方は、PMTCだけでは着色汚れが取り切れず、エアフロ-などと呼ばれる専用の着色汚れ取りのクリーニングが必要になることもあります。

歯の表面がつるつるになる

歯のクリーニング

歯周病や虫歯の原因となる菌は、歯のざらざらする部分につきやすいと言われています。

PMTCは歯周病や虫歯になりにくくするための予防的な意味を持ちますので、歯のざらざらする部分は無くすよう、歯の表面を丁寧に研磨していきます。

PMTCを繰り返すことで、どんどん歯の表面が滑らかになっていきますよ。

滑らかになった歯の表面は、菌のほかに着色汚れが付きにくくなるなどのメリットも。

口臭が軽減する

お口の中の汚れを徹底的に取り除くことで、口臭の原因がなくなり口臭が軽減するかもしれません。

自分では気が付かないところに磨き残しや汚れが溜まっているもの。

定期的にPMTCを受けて汚れをなくすことで、口臭の予防にもつながります。

そのほかにも、PMTCでバイオフィルムを取り除くことでフッ素の効果を高く得られ、歯質が強化され丈夫になるともいわれています。

PMTCを受けるべき?

歯科衛生士としては、予防のためのクリーニング・PMTCは定期的に受けることがおすすめです。

毎日しっかり歯磨きをしてマウスウォッシュを使うなど気を遣っているつもりでも、自分では気付かない部分に磨き残しや汚れは溜まっています。

大人になってから、汚れを確認するための赤い染め出しをして、自分がどのくらい磨き残しているかを実際に確認した方は少ないのではないでしょうか。

私が通っていた歯科衛生士学校では生徒同士でお互いに染め出しをして確認する授業があったのですが、ほとんどの生徒が「よく磨けている」といわれる基準(磨き残しが20%未満)よりも多く磨き残していました。

まだ学生とはいえ、歯の勉強をしていてもたくさん磨き残しがあるのです。
やはり、自分自身でのホームケアだけでしっかり汚れを取り切るのは難しいと思います。

また費用の面だけでなく、将来自分自身の歯を残せる可能性が高まるという点でもやはり定期的に歯科医院でクリーニングを受けてほしいと思います。

PMTCを受ける頻度、時間は?

PMTCは2〜3ヵ月に1回受けることがおすすめです。

長くても半年に1回くらいにしておきたいところです。

PMTCの時に虫歯やお口のトラブルが見つかることもあり、あまり期間を開けてしまうと疾患の発見が遅くなってしまうかもしれません。

また、あまりたくさん汚れが溜まってしまうと取り除くにも時間がかかってしまいます。

長い時間お口を開け続けているのは患者さんもつらくなってしまうので、定期的に受けるようにしてみてくださいね。

PMTCは1回につき30分~1時間くらいの時間を取って行うことが多いでしょう。

歯科医院によっては、歯石やプラークの除去、着色汚れの除去のほかに、汚れを染め出して患者さんと確認してからきれいにしたり、歯磨き方法の指導、フッ素の塗布などをメニューに組み込んでいることもありますよ。

PMTCのデメリット

PMTCは受けるメリットが多くありますが、少しだけデメリットもあります。

・自費診療のため費用が高い
上記でもご紹介した通り、PMTCは自費診療です。

虫歯の治療や歯周病治療のためのクリーニングよりも費用が高くなる傾向にあります。

・時間がかかる
PMTCはお口の隅々までクリーニングをするため、1回の施術の中でお口を開けている時間が長くなります。

特に、着色汚れが多い方や汚れが多く溜まっていると時間がかかってしまいます。

・お口の状態によっては受けられない
これはデメリットとはやや異なりますが、例えば酷く歯周病が進行している患者さんはPMTCを希望しても受けられない可能性があります。

・PMTCの内容が歯科医院によって異なる
PMTCは自費診療です。

そのため費用だけでなく、「PMTC」という診療項目で何を行うか、どんな機材を使用して行うかも歯科医院が独自に決めることができます。

異なる歯科医院で「PMTC」を受けると、処置内容が違う場合や希望した処置が含まれていない可能性があるので注意が必要です。

まとめ

PMTCはメリットがたくさんある処置です。
定期的に受けることで虫歯や歯周病の予防ができるほか、お口の中をより清潔に保つことができますよ。

日本はまだまだ予防歯科が広まっていませんが、お口や歯への意識が高い国では予防のためのクリーニングは義務付けられていることもあるそうです。

ぜひ一度、歯科医院でお口の中をしっかりきれいにする習慣をつけてみてくださいね。