歯原性良性腫瘍とは
歯原性良性腫瘍とは、歯の原基および歯胚に由来するとされる腫瘍の総称です。
広い範囲の顎の骨を破壊したり、悪性腫瘍へと転化する可能性を持つ本物の腫瘍だけでなく、転移する可能性が低い、腫瘍ではなく発育異常や組織奇形なども含まれています。
歯原性良性腫瘍ができるのは基本的には顎の骨の中とされています。
顎の骨の中の腫瘍は大多数が良性腫瘍であり、悪性腫瘍が発生するケースは稀なんだとか。
ですが、他の腫瘍と比較してみると、10~20歳代でもできる可能性が高い腫瘍であるという特徴があり、若い人も注意したいですね。
(参考:歯科衛生士教本「疾病の成り立ち及び回復の過程の促進1 病理学・口腔病理学」)
歯原性良性腫瘍の分類
歯原性良性腫瘍は「エナメル上皮腫」と「歯牙腫」の2つが代表的な種類です。
エナメル上皮腫は、歯原性腫瘍の中で最も発生するケースが多いものです。
顎骨の中に発生してから徐々に大きくなっていき、顎の骨が腫れたり、破れたりする症状にもつながります。若い方の発症も多いです。
手術による摘出が一般的で、大きな腫瘍や既に顎骨に影響が出ている場合は骨の移植を行うなど追加の手術が必要になるケースもあります。
歯牙腫は厳密にいえば腫瘍ではなく、歯の形成異常が原因で発生する形態異常です。
症状が出ないために発見が難しいのも特徴であり、気づかないまま症状が進行して、顎の骨が隆起したり、歯の位置が正常ではなくなる可能性もあります。
治療法に関してはエナメル上皮腫と同じく、基本的には摘出手術が必要です。
「良性」でも危険⁉手術が必要な理由
「良性」というとあまり大きな心配は必要なく、手術などで取り除く必要もないイメージがありますよね。
ですが、歯原性良性腫瘍の場合は話が別です。
良性腫瘍であっても顎の骨を広範囲に破壊することが多いため、治療の際には悪性腫瘍と同じ対応が必要になると言われています。
すなわち、良性であっても悪性であっても、切除手術や摘出手術を行わなければならないということです。
転移の心配が少ない、再発の可能性が低いなどはほかの良性腫瘍と同じ特徴ですね。
歯原性腫瘍(悪性型)
歯原性腫瘍は基本的に良性のものがほとんどであり、悪性の腫瘍が発生するのは稀です。
悪性腫瘍ができた場合も、良性と同じように手術で摘出するため、この病気においては良性と悪性の間に大きな差はないとされています。
ただし、良性の場合は悪性に比べて進行が遅く、転移・再発の可能性は少ないものです。
悪性腫瘍では、再発の可能性は良性よりも悪性のほうがやや高くなります。
また、転移や再発、潰瘍を形成するなどの差があります。
歯原性腫瘍では、良性であっても悪性であってもできるだけ早く最後まで治療を受けることが大切ですよ。
まとめ
歯原性良性腫瘍は「良性」ではあるものの、大きな危険性をはらんでいます。発見が難しいために気づかないまま症状が進行する可能性も存在し、腫瘍が大きくなると顎骨や歯を破壊してしまうため、治療は主に手術での摘出です。
もしも歯原性良性腫瘍と診断された場合は、できる限り早く、適切な治療を受けることが重要になります。
「良性」という言葉に惑わされず、しっかりと治療をしてくださいね。