口腔がんって何?

口腔がんとは舌や歯ぐきなど「お口の中の粘膜にできるがん」のことです。口腔がん・咽頭がんの患者さんの数は年間で2万2500人(2019年)で、年間の全てのがん患者総数中1~2%が口腔がんの患者さんです。
口腔がんは60~70代以上の罹患率が高く、2015年時点では50歳以上の口腔がん患者数が口腔がん患者数全体の90%を占めています。年齢があがるにつれて罹患率が上昇する口腔がんは、高齢者社会の日本では、今後患者数が増加を続けるとされている疾患です。

腔がん・咽頭がんの患者数の推移

年代 男性 女性 総数
2019年 15,100人 7,400人 22,500人
2015年 12,586人 5,910人 18,496人
2014年 13,272人 5,741人 18,986人

※患者数情報元:国立がん研究センター がん情報サービス

口腔がんはお口の中にでき、歯や歯ぐき、舌にも影響を及ぼし、進行している場合は治療後もお口の機能に障害が残るとされています。全身のがんと同様に、早期発見早期治療が必要です。
口腔がんの5年生存率は60~80%と言われており、早期発見ができれば命に関わることは少ないといえます。
口腔がんは内臓や身体の中に発症するがんとは異なり、がんを目視で確認できることも多いですが、日本では口腔がんを知らない方が多く、お口の中の違和感や異常を放置してしまい、早期発見早期治療が行われていないと言われています。
口腔がんはご自身で見ても口内炎ややけどと見分ける事ができない場合もありますので、定期的な歯科医院への通院が早期発見のために重要です。

口腔がんはどこにできるの?

腔がんは

・舌がん(舌にできるがん)

・歯肉がん(歯ぐきにできるがん)

・口腔底がん(舌と歯ぐきの間にできるがん)

・頬粘膜がん(頬のお口の中側にできるがん)

・口蓋がん(お口の中の上の部分にできるがん)

・口唇がん(唇にできるがん)

に分類されています。
1つ1つがんが発生した部位によって名前が異なりますが、お口の中にできるがん全てが口腔がんと呼ばれます。

日本人の口腔がんは舌がんが一番多く、口腔がん患者さんの中の40%を占めると言われています。次いで歯肉がん、頬粘膜がんが発生しやすい口腔がんです。

これって口腔がん?注意してほしいポイント


口腔がん発生の初期は自覚症状がほとんどありません。

・痛みがある

・しみる

・違和感がある

・リンパが腫れた

・話しにくい

などの自覚症状が出てきた時には既に口腔がんが進行しています。
そのため、自覚症状がある場合はすぐに歯科医院、口腔外科を受診する事が大切です。

また、痛みや違和感などの自覚症状は出るまでに時間がかかりますが、下記の所見はがんの初期の段階から確認ができます。

・舌や頬、歯ぐきの色の変化(赤くなる、白くなる)

・しこり

・歯ぐきや舌の腫れ

・口内炎のような潰瘍

・びらん

・歯ぐきや舌からの出血


通常の口内炎ややけどと見分けがつきにくい場合がほとんどですが、お口の中の変色や口内炎のような潰瘍であれば約1週間、しこりや水ぶくれは2~3日様子を見て変化がない、大きくなっていくなどがあれば、早めに歯科医院で検査を受診してください。
特に日本人で多い舌がんは舌の横面にできることが多いため、時々少し舌を前に出して横面を鏡で確認してみると異変があった時にすぐに気が付くことができます。

口腔がんになる原因とは

主な原因~Risk factor~

喫煙

「口腔がん」が発生する最大のリスクファクターは、他のがん同様、喫煙です。喫煙者の口腔がん発生率は非喫煙者に比べ約7倍も高く、死亡率は約4倍も高いという報告があるほどなのです。

飲酒

喫煙に次ぐリスクファクターとなるのが飲酒。特に50歳以上の男性で、毎日たばこを吸い、なおかつお酒も飲まれる方は最も危険です。飲酒時の喫煙は、たばこに含まれている発がん性物質がアルコールによって溶けて口腔粘膜に作用するため、よりリスクが高くなると考えられています。

その他

喫煙、飲酒以外に、「お口の清掃不良」や「ムシ歯の放置」「合わない入れ歯や破れたかぶせ物のなどによる慢性的な刺激」「栄養不良」などもリスクファクターとして挙げられています。

日本歯科衛生士会より引用

また、それ以外にも

・歯ブラシや舌ブラシによる強い刺激

・ウイルス(HPV)への感染

・加齢

などが原因とされています。アルコールそのものに発がん性はありませんが、アルコールが分解されるときに発生するアセトアルデヒドに発がん性があるとの報告もあります。

口腔がんの発生リスクを下げるためのポイント

・禁煙

・お酒を控える、適正量の飲酒にする

・ていねいに歯磨きを行い、お口の中を清潔にする

・合わない入れ歯を無理に使わない(調整、作り直しをする)

・虫歯を放置しない

・強い刺激の歯磨き粉やマウスウォッシュの使用を控える

・食事をバランスよくとる

・お口の中で気になることがある場合は早めに歯科を受診する

かかりつけの歯科を持ち、定期的にお口の中を検査・メンテナンスすることで、歯科医師や歯科衛生士にお口の中の変化に気付いてもらえたり、虫歯や歯周病の悪化を防ぐことができるため口腔がんのリスクを下げることができます。
発症してから歯科医院を受診するのではなく、予防のための通院が大切です。


かかりつけの歯科を持ち、定期的にお口の中を検査・メンテナンスすることで、歯科医師や歯科衛生士にお口の中の変化に気付いてもらえたり、虫歯や歯周病の悪化を防ぐことができるため口腔がんのリスクを下げることができます。
発症してから歯科医院を受診するのではなく、予防のための通院が大切です。

口腔がんの治療方法

口腔がんの治療方法は3つに分類されます。

手術療法

外科手術を行い、がん病変のある部位(舌や頬、歯ぐきなどお口の組織)を取り除きます。
がんの進行度合いによって切除の範囲が異なり、進行している場合は骨やリンパの除去も行われます。
大きく除去を行った場合は、その後の食事や発声などお口の機能が低下してしまうため、再建手術といわれる移植による機能を回復するための手術も行われます。
再建手術後も食事の訓練や発声の練習など、リハビリが必要です。

放射線療法

口腔がんは放射線療法のみで治療を行うことはあまりありません。
手術療法の前にがんの不活性化をはかる、術後の再発防止目的や、化学療法と併用してがんの根治をはかるなど、他の治療と併用して使用される治療法です。
喉の痛みや味覚障害などの副作用があります。また、唾液が出にくくなるためお口の中の環境が悪化し、虫歯や歯周病が進行する可能性があるため、ていねいなお口の清掃管理が必要です。

化学療法

抗がん剤を点滴や経口服用で投与し、お口の機能を保ったままがん治療を行う方法です。
放射線療法と併用されることがほとんどです。
食欲の低下や吐き気、口内炎、脱毛、下痢など副作用が多くあります。
また、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるため注意が必要となります。

上記の治療方法は一部のご紹介です。がんの治療方法は患者さんの生活やがんの進行度合いなどによって様々です。
医師とよく相談してご自身にあった治療方法を選択して行ってください。

口腔がんかな?と思ったら

口腔がんは自覚症状が出てきた時には既に進行しています。
お口の機能を保つために、早期発見早期治療が最も重要です。
お口の違和感はがんでなくても治療が必要なこともしばしばあります。間違っていたらどうしよう、など心配もあるかもしれませんが、将来もご自身の歯で長く健康なお口でいるために、気になることがあったら早めに歯科を受診してください。