オーラルフレイルとは?

まず、冒頭で出てきたワードの健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。
つまり、平均寿命と健康寿命の差は、健康上の問題で日常生活に制限があり生活「できない」期間を指します。

平均寿命と健康寿命の差を縮めるために重要なポイントとなるのが「オーラルフレイル」といわれています。
オーラル(口腔)フレイル(虚弱)とは、お口の機能低下が主な症状で、心身の機能低下の前段階の状態のことをいいます。

歯や口のささいな衰えで、食べこぼしやむせる、上手くものが噛めない、口の中が乾燥し滑舌が悪くなるといった症状が現れます。

このささいな衰えは気付きにくく、見逃しやすい症状で、対応・改善が遅れるとフレイル期になり、最終的には要介護のリスクが高まってしまいます。

フレイルとは?

高齢になり、心身の活力が低下し衰えた状態のことをいいます。オーラルフレイルよりも、身体的・認知的機能が低下してしまっている状態で、身体的問題・精神的問題・社会的問題など多面的な要因を含む老年症候群です。

オーラルフレイルチェックあなたはいくつ当てはまる?

オーラルフレイルのリスクをチェックできるリストがあります。チェックしてみましょう。

チェック事項 はい いいえ
半年前に比べて堅いものが食べにくくなった 2点 0点
お茶や汁物でむせることがある 2点 0点
義歯(入れ歯)を使用している※ 2点 0点
口の乾きが気になる 1点 0点
半年前と比べて外出が少なくなった 1点 0点
さきいか・たくあんくらいの堅さの食べ物を噛むことができる 0点 1点
1日に2回以上歯を磨く 0点 1点
1年に1回以上歯医者に行く 0点 1点

※歯を失ってしまった場合は、義歯などを適切に使って、堅いものをしっかり食べることができるよう、治療を受けることが大切です。

合計点数
0~2点 オーラルフレイルの危険性は低い
3点 オーラルフレイルの危険性あり
4点以上※ オーラルフレイルの危険性が高い

東京大学高齢者総合研究機構 田中友規、飯島勝矢:代表
オーラルフレイルハンドブック:引用

あなたは合計何点になりましたか?合計点数が3点以上になった方はオーラルフレイルの危険があります。
かかりつけの歯医者さんに相談することをおすすめするとともに、次に紹介するオーラルフレイルの予防・改善のアドバイスを参考にしてみてください。

オーラルフレイルを予防するためには

オーラルフレイルにならないためには、お口の健康・機能を維持することがとても重要です。ご自身や家族の協力で行えるものが多いのでしっかり実践しましょう。

オーラルケア

お口の中を健康に保つためにはオーラルケアは欠かせません。歯磨きはもちろんのこと、糸ようじや歯間ブラシ、舌ブラシや洗口液などを活用し、汚れをしっかり除去しましょう。

入れ歯を使用している方は入れ歯のお手入れもお忘れなく。入れ歯も歯垢や食べ物の残りかすが付着しやすいので、入れ歯専用のブラシや洗浄剤に浸けて清潔にしましょう。
お口の中が清潔に保てていると、話す・食べる・飲み込むといった口腔機能の維持がはかれ、全身の健康の維持・増進につながります。

また、かかりつけの歯医者さんをつくり定期的なメンテナンスを受けることで、お口の健康管理を行っていくこともオーラルケアの大事なポイントです。
メンテナンスだけではなく、虫歯を放置していたり、歯を失ったところを放置していたりすることもオーラルフレイルのリスクにつながります。虫歯はしっかり治療を行い、歯を失ってしまった場合は入れ歯を作成し、口腔機能の回復・改善を行いましょう。

お口の健康体操

加齢とともに唾液が出にくくなったり、噛む力や飲み込む力、舌の動きなどはどうしても衰えてしまいます。唾液の役割として、食べ物を柔らかくしたり、飲み込みやすくしたりする働きや、口の中の食べかすを洗い流し、清潔に保つ・虫歯や口臭を予防する働きもあります。

噛む力や飲み込む力が衰えると、食べ物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性があります。

このような口腔機能の衰えはご自身で改善・予防を行うことが可能なのです。
・唾液腺のマッサージ

唾液の分泌を促すために、耳下腺・顎下腺・舌下腺のマッサージを行います。
耳下腺は耳の横側を押すことで刺激を与えられます。手指で後ろから前にゆっくり回すことをイメージしてください。

顎下腺は下顎の骨の内側のやわらかい部分を押すことで刺激を与えらます。親指で骨の内側に沿って、5分割する(5か所に分けて押す)意識で1~2秒押します。

舌下腺は顎の真下を押すことで刺激を与えらえます。親指で突き上げるようにゆっくり押します。

上記を3セットほど行うと、唾液が出てくる感覚があるかもしれません。お口の中が乾燥しているなと感じたり、食前・食後に行うと効果的でしょう。
継続して行うことは大変ですが、根気強く毎日行うことが重要です。

・口や舌の筋肉を鍛える体操
お口や舌の筋肉を鍛えることで、唾液の分泌を促したり、噛む力・飲み込む力を向上させることができます。

お口周りの筋力をアップさせるには、口をすぼめて「うー」、口を横に開き「いー」を3~5セットほど繰り返しましょう。口を大きく動かし、声に出すことがポイントです。

しっかり発音することを意識するためにパタカラ体操も取り入れてみましょう。

唇をはじくイメージで「パ」
舌を上顎、前歯の裏側にくっつけるイメージで「タ」
のどの奥を締めるようなイメージで「カ」
舌を丸めて、舌先を上顎につけるイメージで「ラ」
始めのうちはゆっくりでかみませんので、口をしっかり動かしながら声に出すことを意識しましょう。慣れてきたらスピードを上げて繰り返し行うとさらに効果的でしょう。

お口周りの筋肉を鍛えるだけでなく、舌を筋力を鍛えることで食事がスムーズに摂れるようになり、誤嚥を防ぐことにもつながります。

舌を左右、上下に伸ばしたり、唇の周りをなめるようにぐるぐる回したりを5セットほど繰り返しましょう。舌を思いっきり出して大きく動かすことを意識してみましょう。

バランスの良い食事

食欲がない、歯を失ってよく噛めないなどの理由から、柔らかくて食べやすい物が多くなると糖類や塩分摂取量の増加、栄養バランスが偏りがちになってしまいます。低栄養の食事はオーラルフレイルを進行させてしまう要因となりますので、栄養バランスを考慮していろいろな食材を食べることが大切です。

フレイル予防の観点からみると、タンパク質の摂取量が予防には重要であるといわれています。高齢者を対象とした研究では、1日のタンパク質摂取量が63g未満の群に対して1日のタンパク質摂取量が70g以上の群におけるフレイル罹患率のオッズ日は0.62~0.66倍であったとの報告があります。

加齢に伴う筋肉量や筋力を維持する、つまり衰えを予防するためには、65歳以上の高齢者の方は1日に体重×1.0g以上のタンパク質を摂取することが望ましいとされました。

せっかくバランスの良いメニューや献立だとしても、虫歯だったり歯がなくてうまく食事ができなければ意味がありません。バランスの良い食事を摂るためには虫歯治療や入れ歯で失った歯を補うことが重要でしょう。

また、バランスの良い食事を1日3食摂るうえで大事なポイントになるのが、1人(孤食)で食事をしないことです。家族や仲の良い友人(共食)とコミュニケーションを取りながら食事をすることが食欲の向上にもつながります。
地域のコミュニティーやデイサービスでも共食の取り組みが行われていますので活用してみてもいいでしょう。

オーラルフレイルの予防は健康寿命につながります

いつまでも元気に健康で生活するためには、オーラルフレイルやフレイルの予防・改善が重要だということをお伝えさせていただきました。ご自身またはご家族の方に、もしかしたらオーラルフレイル予備軍かもと思い当たった方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、オーラルフレイルは病気ではなく、加齢による衰えという生理的な変化ですので誰にでも起こりうる可能性があり、ご自身またはご家族の協力で予防・改善できる部分もある症状です。

オーラルフレイルを予防するためにも、まずはお口の機能を低下させないことが何よりも重要です。虫歯や歯周病の治療・予防はもちろん、歯を失ったまま放置をしているのであれば、入れ歯や被せ物で補いお口の機能を維持させることに努めましょう。

平均寿命と健康寿命の差をなくし、人生100年時代を生きるためにもぜひ「オーラルフレイル」を意識してみてくださいね。