味覚だけではない舌の働き

舌といえば、味を感じるところだということは広く知られていると思います。
舌で味を感じるのは「味蕾(みらい)」という器官であり、舌背と呼ばれる、口を開いたときに見える部分です。

舌の機能は、味覚や知覚だけではありません。食べ物を咀嚼するとき、食べ物を噛みやすいところに移動させ、唾液の分泌を助けて噛みやすい形にし、歯で噛めるよう固定することができるのも舌です。

また、噛み砕いた食べ物を咽頭に送り込む、つまり嚥下するよう助けるのも舌なのです。
舌は主に筋からできており、さらに先端はどこにもつながっていないため、このように自由に動かすことができ、言葉を話すことも可能です。

栄養摂取などの面でも大きく影響する舌の働きですが、しっかりケアしなければ機能が低下するおそれがあります。
舌は色の状態で、体の状態変化にある程度の傾向が見て取れる場合があります。

紫色であれば血液循環や心臓の問題、黄色であれば細菌の繁殖、黒色であれば黒毛舌やタバコなどが疑われることがあります。

舌の色で分かる身体の健康状態

舌が白く汚れる「舌苔」とは

舌の表面の舌背は舌苔(ぜったい)と呼ばれる汚れによって白く覆われる場合があります。

この汚れというのは、食べカスや真菌(カビ)、さらには代謝した粘膜のカスなどが溜まってできた塊となっています。
特に、真菌が多くを占めています。

舌苔の付着の仕方はさまざまで、舌の一部だけ白くなることもあれば、舌全体が白く見えることもあります。
舌苔をそのままにしてしまうと口臭の原因となるので、改善することはもちろん、舌苔が付着しないよう予防したいものですね。

それでは、舌苔が付着してしまう原因として、どのようなものが考えられるのでしょうか?

まず、口腔環境が清潔でないということが挙げられます。
食べカスや剥がれた粘膜などがそのまま口内に残っていると、舌苔ができやすくなります。

また、唾液の分泌の減少も考えられます。
唾液には口内の細菌の繁殖を抑える効果がありますが、唾液の分泌量が減ってしまうことで、細菌が舌苔として付着しやすくなります。
唾液の分泌が減る原因としては、ストレスや食生活の乱れ、薬の服用などさまざまなものが考えられます。

このほか、口呼吸の習慣によって口の中が乾き、舌苔が付着しやすい環境になった可能性もあります。/p>

正しい舌ケアの方法

舌苔が付着しないよう、清潔に保って舌ケアをすることが必要です。

ただ、やみくもに舌を強く磨こうとすると、舌を傷つけかねません。
ここでは、正しい舌ケアの方法についてご紹介します。

舌専用のブラシや歯ブラシを使う


市販の舌ケア用のブラシや、普段使っている歯ブラシなどで磨きます。
ただし、歯ブラシは柔らかいものを選ぶようにしてください。

ブラシの使い方としては、舌の奥から手前に引くように、ゆっくり磨きます。
前後に往復すると、舌に付着している細菌を喉に押しやってしまう危険性があります。

嘔吐反射に気をつける

ブラシを奥まで入れると、嘔吐しそうになることがあります(嘔吐反射)。
これを防ぐために、舌を思い切り外に出すようにして磨きましょう。

1度では舌苔をすべて除去できない

1度できれいにしようとすると舌を傷つけるので、毎日少しずつ掃除することを習慣にしてください。

また、舌苔をすべて取り除くことはできません
少し白い部分がある程度で正常ですので無理にすべて取り除こうとしないようにしてください。

掃除の回数は1日1回

舌を磨きすぎると、傷つけてしまうおそれがあります。味覚を感じにくくなるので、注意しましょう。
頻度は1日1回としましょう。

舌苔は眠っている間に付着するので、朝の歯磨きのときのケアをおすすめします。
また、舌への刺激によりがんを誘発する可能性も言及されています。
舌ケアをしすぎないよう注意しましょう。

毎日優しく舌ケアを

舌は人と会話したり、快適な食生活を送るうえで大切な機能をもっています。
舌の機能を維持するためにも、ブラシで掃除する舌ケアの習慣を身に付けてはいかがでしょうか。

また、舌苔は口臭の原因になるばかりでなく、舌が白くなって見た目にも良いとはいえません。
さらに、味蕾を覆ってしまうため、味覚が低下することも考えられます。

ここで注意したいのが、口臭が気になるがゆえの過度のケアです。
あまり舌を高い頻度で磨きすぎると、舌を傷つけたり刺激しすぎたりして味覚障害やがんの誘発を招く可能性もあります。
適切な舌ケアを心がけて、きれいなお口を保っていきましょう。