医療費控除をご存知ですか?
医療費控除とは、自分自身、またはご家族のために年間で支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、その超過した金額分の所得控除を受けることができる制度です。
所得税を算出する際に課税対象となる所得から一定の金額の控除を受けることができます。
医療費控除の限度額は200万円までとなっており、年間所得に応じた算出方法が定められています。
・年間所得が200万円以上の方の場合
医療費控除額=支払った医療費の合計ー保険金などで補填される金額ー10万円
・年間所得が200万円未満の方の場合
医療費控除額=支払った医療費の合計ー保険金などで補填される金額ー年間所得の5%
上記計算式の保険金などで補填される金額とは、医療保険から給付される入院給付金や、健康保険組合から支給される出産育児一時金や高額療養費、家族療養費などが当てはまります。
課税所得が少なくなり、その分税金が安くなりますので確定申告書類を作成するという手間はかかりますが、ぜひ活用しましょう。
医療控除を申告することで住民税も安くなる?
上記で、医療費控除は課税対象となる所得から医療費を差し引き、所得控除を受けることができると説明しましたが、医療費控除を受けるために確定申告を行うと所得税だけではなく、住民税も安くなります。
所得にかかる住民税の税率は10%(市町村税6%、都道府県4%)です。
住民税の減税額=医療費控除額×10%
上記算出法を見ていただくと、医療費控除額の10%に当たる金額だけ住民税が安くなることがお分かりいただけると思います。
このように医療費控除は、所得税の控除を受けられるだけではなく、住民税も減額できる制度なのです。(申告年度の翌年度の住民税が安くなりますが、所得税のように還付されることはありません)
どんな歯科治療が医療費控除の対象になるの?
主に歯科治療については、公的医療保険が適用される治療だけではなく全額自己負担の自由診療によるものや、高価な材料を使用することもあるため治療費が高額になることがあります。
一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊な治療は医療費控除の対象になりません。
では、どんな歯科治療が医療費控除の対象になるのか、また、どんな歯科治療が対象外になるのかを下記に記載していますので確認してみましょう。
医療費控除対象の歯科治療
・発育段階にあるお子さんの歯列矯正
・成人の方の噛み合わせ改善を目的とした歯列矯正
・インプラント治療の費用
・自由診療による歯科治療(メタルボンドクラウン、セラミックスクラウン、ジルコニアクラウン、ゴールドクラウンなど)
・金属床、ノンクラスプデンチャーなどの入れ歯
・親知らずの抜歯
そのほか医療費控除の対象になるもの
・デンタルローンにより支払った治療費・通院、入院のための電車、バス、タクシー代
(※ただし、タクシー代は公共交通機関を利用しての通院が不可能であった場合のみとなります)
・幼い子供や高齢者へ保護者が付き添って通院した場合の交通費
・薬局で購入した歯痛止めなどの医薬品
医療費控除対象外の歯科治療
・歯を白くすることのみをを目的としたホワイトニング
・見た目をきれいにすることのみを目的とした歯列矯正
・予防を目とした歯のクリーニング、PMTC
そのほか医療費控除の対象外になるもの
・歯ブラシや歯磨き粉などのデンタルケアグッズ
・デンタルローンの金利や手数料
・通院時に自家用車を使用した場合の駐車場代やガソリン代
・医師や歯科医師などに対する謝礼金
医療費控除の申請方法と必要な書類
医療費控除の申請は所得税の確定申告が必要となります。
確定申告は毎年2月16日から3月15日の1ヵ月間に申告書類を提出することになっています。
医療費控除は5年前までさかのぼって確定申告が可能ですので、申告を忘れてしまった方や書類を揃えられる方はこの機会に申告してしまいましょう。
以下にて、医療費控除の手続き、必要な書類をご紹介します。
(※2020年12月現在、コロナウイルス感染症の影響により確定申告期限の延長措置が取られています。詳しくは国税庁のホームページや管轄の税務署にお問い合わせください)
医療費控除の手続きの流れ
①医療費控除に必要な書類を用意する
②書類に必要項目を記入する(医療費控除の明細書や確定申告書A)
③上記の必要な書類一式を所轄の税務署へ提出をする
④数か月後、確定申告時に指定した口座へ還付金が振り込まれる
医療費控除に必要な書類
・マイナンバーカード(マイナンバーが記載されている通知カードや住民票、身分証明書など本人と確認ができる書類)
・医療費控除の明細書
・医療費の支払いを証明する書類(レシートや領収書など)
・給与所得のある方は源泉徴収票(会社員の方)
・確定申告書A
レシートや領収書などに記載されている金額を医療費控除の明細書に記入し、確定申告書Aにも必要事項を記入し書類を完成させます。
マイナンバーや本人と確認できる書類のコピーを添付して地域の税務署へ提出します。
以前はレシートや領収書などは確定申告時に提出が必要でしたが、2017年(平成29年)からは医療費控除の明細書に記載をすることで提出が不要になりました。
しかし、記載内容の確認のために提示・提出を求められる可能性があるため、確定申告をしてからから5年間は保管しておかなければいけない義務がありますので大切に保管しておきましょう。
還付金の算出方法
医療費控除は控除額が全て還付されるわけではなく、課税される所得金額の税率をかけることで算出された金額が還付されます。
所得税率は所得金額に比例して高くなりますので、所得金額が高い方ほど支払った医療費の還付される金額の割合が高くなります。
以下計算式が還付金の算出方法です。所得税の速算表も参考に還付金の算出を行ってみましょう。
・医療費控除額×所得税率=還付金
<速算表>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,950,000円以下 | 5% | 0円 |
1,950,000円超3,300,000円以下 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円超6,950,000円以下 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円超9,000,000円以下 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円超18,000,000円以下 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円超40,000,000円以下 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円超 | 45% | 4,796,000円 |
※出典:国税庁「所得税の税率」