梅毒とは

梅毒は性感染症の一種です。

性行為の際に、「梅毒トレポネーマ」と呼ばれる細菌が粘膜や皮膚に触れた時に感染することで発生します。
ただし、性器、肛門、口といった部位に性器が接触した時だけでなく、傷口などから感染するケースもあります。

梅毒は特に女性に発症することが多く、近年では梅毒の発症数自体が増加傾向にあります。

2022年7月12日に国立感染症研究所が公表した調査結果では、2022年上半期(~7月3日)までに報告された梅毒の患者数は5615人。

2021年に年間患者数が過去最多の7983人となりましたが、2022年はそれを上回る1.6倍のペースで感染患者数が確認されているんです。
このままのペースでいくと、年間1万人以上が梅毒感染患者になると考えられます。

梅毒の検査方法は下記にて詳しく解説しますが、一般的には細菌感染が疑われる時点から4週間以上が経過した後に血液検査を行うことで診断が可能です。
梅毒は他人にうつしてしまう感染症のため、疑いがある場合、不安な場合は速やかに検査を受けることが感染予防に役立ちます。

先天性梅毒とは


先天性梅毒は、妊娠中に梅毒にかかっている母親から胎盤を通じて胎児も細菌感染することで起こります。

通常の梅毒とは異なり、歯の形成異常、角膜炎、難聴といった疾患や障害が赤ちゃんに起こる可能性を高めるといわれています。

歯の形成異常では、「Hutchinson(ハッチンソン)歯」と呼ばれる、半月状切痕歯という所見がみられます。
半月状切痕歯というように上顎の中切歯に浅い半月状の切れ込みがあるだけでなく、正常な歯に比べて歯冠の幅が小さく、歯の位置の異常も起こりやすいのが特徴です。

先天性梅毒による半月状切痕歯は両側の上顎中切歯にみられることが多いですが、時には片側だけに発生したり、半月状切痕を含まないケースもあります。
被せ物や詰め物を用いて歯の形を整えて見た目を改善することはできますが、本人の歯を正常な形にすることはできません。

梅毒の主な症状

第Ⅰ期


梅毒の初期には、感染が発生した部位にしこり、びらん、潰瘍がみられることが多いです
股の付け根の部分にあるリンパ節の部分が腫れることもあります。

第Ⅰ期の段階では痛みが出ないことも多く、治療をしなくても症状は消退していきます。
ただし、症状がなくなったからといって梅毒が治ったわけではありません。

体内で梅毒は進行し、第Ⅱ期、第Ⅲ期の症状が現れます。
また、症状がない間も、他人に感染させてしまうリスクがあるのです。

第Ⅱ期


梅毒の治療を受けないままにしていると、第Ⅰ期の間や一時的に症状が消失している間も体内で梅毒は進行していきます。

病原体が血流で全身を巡り、第Ⅱ期になるとバラのような見た目の赤い発疹(バラ疹)が手のひらや足の裏など全身にみられるようになるのです。

このバラのような赤い発疹も、治療を受けなくても数週間から半年程度で消えることも。
ですが、第Ⅰ期と同様に治療をしなければ梅毒の病原菌は体内に残ったまま、治ったと思っている間にも進行し、第Ⅲ期の症状が出てきます。

第Ⅲ期


感染から3年ほどが過ぎる頃には、第Ⅲ期と呼ばれる時期に入ります。
第Ⅲ期では、全身の様々な部位で細菌が起こす炎症の影響で、筋肉、骨、内臓といった部位にゴムのような腫瘍(ゴム腫)がみられるようになります。

ゴム腫は口や鼻によくでき、破壊性の進行が強くいため鼻や口の形が変わってしまう危険性もあるのです。

第Ⅳ期


感染から10年以上が経つと、第Ⅲ期で起こる臓器のトラブルだけでなく神経にも梅毒の影響が及びはじめます。

また、神経だけでなく血管、心臓、脳、脊髄にも影響し、大動脈炎や大動脈瘤といった全身の深刻な疾患により、最悪の場合は死に至ることもあるのです。

梅毒の検査


梅毒の検査は、主に血液検査で行われています。
そのほか、すでに症状が明確に出ている場合は、潰瘍等から取り出した細菌を培養して感染しているか確認する細菌検査もあります。

検査費用は公的医療保険が適用されれば2000円前後、自由診療の場合は7000円~9000円ほどです。
梅毒が疑われる症状が出ている場合は公的医療保険が適用されます。
なんとなく不安を感じる場合や、感染しているかもしれない、心配だからといった理由では公的医療保険は適用されず、自由診療での検査を受けましょう。

梅毒に感染しているとわかった人との濃厚接触では公的医療保険が適用される可能性が高くなります。
また、地域によっては保健所にて無料で検査を行っていますので、そちらを活用してみてください。

血液もしくは細菌のどちらの検査方法であっても、細菌感染後すぐには検知されないことがあります。
梅毒感染の検査は、感染疑いが出てから3~4週間ほどが経過してから検査を受けることで、より正確な結果が表れることが期待できます。

十分な期間をおいてから検査結果が出るまでは、性的な接触や皮膚、粘膜、体液が接触しないように注意してください。

梅毒の治療法


梅毒は、ペニシリン系の抗生物質を飲み薬として服用します。
第Ⅰ期なら2~4週間程度、第Ⅱ期なら4~8週間ほどの服薬期で完治するといわれていますよ。

発症した部位や進行状況によっては、入院したうえで抗菌薬の点滴が必要なこともあります。
抗菌薬の内服の場合も点滴の場合も、医師が梅毒の治療が完了したと判断するまでは必ず薬を飲み続けましょう

自己判断で薬の服用を止めてしまうと、薬に耐えられる耐性菌の出現することもあり、後で悪化した状態で症状が再発する可能性があります。
もちろん、その間に接触した人に梅毒を移してしまう可能性も十分にあり得ます。

症状でも記載しましたが、梅毒は一時的に症状がなくなる期間が存在します。
薬を飲んでいる間に症状がなくなっても、梅毒は完治していない可能性が高いでしょう。
梅毒の完治は自分で判断せず、必ず医師の診断に従い、他の人にうつしてしまわないようにしてください。

何科を受診すればいいの?


梅毒の検査および治療を受けるためには、泌尿器科、皮膚科、性感染症科、産婦人科を受診してください。
梅毒の検査は取り扱いがない、事前に予約が必要な可能性もあるので、事前に直接医療機関に確認しましょう。

検査の部分でも記載しましたが、梅毒の検査だけであれば保健所などで受けられる地域もあります。
医療機関や保健所に問い合わせをしてみてください。

まとめ

梅毒は治療をしなければ死に至る可能性のある病気です。
ですが、治療法が確立されているため、しっかり治療を受ければ完治することができます。

治療法が確立し、患者数が減ってきたと言われていた梅毒ですが、2022年時点で感染者数が急激に増加しています。
減っている病気だから大丈夫、自分は大丈夫と思わずに、しっかりと感染対策をするようにしてくださいね。

また、性行為など梅毒に感染する機会に思い当たる節があり、性器の潰瘍・しこり、バラ疹、ゴム腫など「梅毒かもしれない」症状がある方は、すぐに検査・診断を受けましょう。

他人にうつしてしまわないことが、感染症の拡大防止には非常に重要です。
感染しない・させないようにより一層気を付けてみてください。