公的医療保険とは
日本の医療保険制度では、国民全員が何らかの公的医療保険に加入する義務になっています。
保険料支払い能力のない未成年の子供は保護者の公的医療保険に加入するシステムです。
公的医療保険とは、病気やケガをしたときにかかる医療費の一部が負担軽減される制度です。
加入者である国民が毎月保険料を支払い、みんなで支え合うことで運用されています。
その中でも「国民健康保険」と「社会保険」と呼ばれるよく聞く2つの公的医療保険についてご紹介します。
国民健康保険(国保)
国保と呼ばれるもので、自営業者・農業従事者・フリーター・年金受給者・長期在留外国人などが主な加入者となっています。
運営しているのは、被保険者(加入者)が居住している市区町村と都道府県です。
国民健康保険には扶養という考えはなく、被保険者の扶養家族であってもそれぞれが被保険者となり、国民健康保険料を納める対象となります。
国民健康保険には「健康保険(医療保険)」と「介護保険」が含まれています。
社会保険
社保と呼ばれるもので、会社員などが加入している保険です。アルバイトやパートで働く人も、要件を満たせば社会保険への加入が可能です。
国民健康保険は全額自分で支払いをするのに対し、社会保険は一部を勤めている会社が負担してくれるため、比較的安価に加入することができます。
社会保険の中には「健康保険(医療保険)」「介護保険」「年金保険」「労災保険」「雇用保険」が含まれており、日常生活にあるさまざまなリスクを補い合う仕組みであり、国民健康保険とは若干異なります。
こちらは市区町村や都道府県ではなく、健康保険組合によって運営されており、勤める会社によって加入している健康保険組合も異なります。
健康保険証とは
公的医療保険の被保険者になった場合に、保険者(自治体や健康保険組合など)から「被保険者証(保険証)」が交付されます。保険証は国保や社保などの加入者であることを証明するものです。
公的医療保険による医療費の一部負担金制度を使用するためには、保険証を医療機関の窓口で提出する必要があります。コピーや画像では使用できません。
持参するのを忘れたり、有効期限が切れていたりすると使用することができず、治療費が全額自己負担となります。
医療機関によりますが、受診のたびに保険証に変更がないかの確認をすることが望ましいとされています。月初のみの提示をお願いする医療機関もありますが、いつ確認が必要になってもいいように、通院時には毎回持参するようにしましょう。
また、決して他人に貸与してはいけません。
借りて受診した人は「詐欺罪」にあたるほか、貸した人も「詐欺の示唆、ほう助」にあたるとして罪に問われる可能性があります。
高齢受給者証・子ども医療証について
保険証とは別に、「高齢受給者証」や「子ども医療証」というものがあります)。
加入している保険や居住地域によって医療証や名称は異なります。
高齢受給者証
70歳以上75歳未満の各公的医療保険の加入者には、「高齢受給者証」が交付されます。
対象者の所得に応じて医療費の自己負担割合が異なるため、高齢受給者証には加入者の自己負担割合が記載されているのです。
高齢受給者証と保険証の両方を医療機関の窓口で提出することで、負担割合の変更が適用されます。
子ども医療証
子ども医療証または乳幼児医療証と保険証の両方を医療機関の窓口で提出することで、「子ども医療費助成制度」が適用され、保険診療自己負担分を保護者にかわって自治体が負担してくれます。
医療費を助成してもらえる年齢制限は都道府県によって異なります。
また、家庭の所得によって助成を制限している自治体もあります。
よくあるQ&A
以上が公的医療保険と健康保険証についての概要です。
それでは、健康保険証の取り扱いについて、具体的なケースを想定してご紹介します。
Q1.保険証をなくしてしまいました
保険証をなくした場合には、再交付の申請が必要となります。
申請に必要な書類などは運営している機関によって異なりますが、保険証の記号番号、あるいはマイナンバーが必要なケースがほとんどです。
本人確認のための運転免許証やパスポートなどもあるとスムーズに手続きが行えるでしょう。
社会保険の場合は、会社を通じて申請書を提出するのが一般的です。まずは勤め先の担当者へ確認するとよいでしょう。
国民健康保険の場合は、市役所や区役所にある年金課などの窓口で申請することができます。
Q2.保険証がないけど通院できますか?
加入する保険が切り替わるタイミングで新しい保険証が手元にない場合には、「被保険者資格証明書」の交付が可能な場合があります。
公的医療保険を適用して医療を受ける場合に必要な情報が記載されており、保険証の代わりになります。
会社員であれば、まずは勤め先の担当者へ確認するとよいでしょう。
証明書が交付されない場合には、一旦医療費の全額を自身で支払います。
保険証発行の手続き中であることを医療機関の窓口で伝えておくことで、後日医療機関の窓口へ保険証を持参すれば返金してもらえます。
ただし、保険証の提出が受診日の翌月になってしまうと窓口での返金手続きができなくなる場合があるため注意が必要です。保険証あるいは被保険者資格証明書の持参が翌月になってしまう場合は、加入している保険組合に返金してもらう手続きをする必要があり、手続きが複雑になるため注意してください。
Q3.公的医療保険に加入していません
日本では、生活保護を受けている人を除く全員がいずれかの公的医療保険に加入していなくてはなりません。
基本的に会社員であれば会社が用意している社会保険の中に「健康保険」があり、入社時に加入しています。
自営業者やフリーターなどは、自身で「国民健康保険」などに加入する必要があります。
例えば会社を退職して自営業者となり、国民健康保険に加入するのが遅れた場合にも、空白期間分の国民健康保険料の支払いが発生します。
Q4.病院へ行くのに保険証を忘れました
保険証の提出ができない場合は、一旦医療費の全額を自身で支払います。
後日医療機関へ保険証を持参すれば返金してもらえます。
ただし、保険証の提出が受診日の翌月になってしまうとその場で返金されない場合があるため注意が必要です。
また、長く通院している医療機関であれば保険証の内容に変更がなく、同月内に保険証を持参するという約束をすればいつも通りの自己負担金額で許可される場合がありますので、窓口で確認するとよいでしょう。
原則は保険証の提出が必要です。
Q5.他の人の保険証を借りてもいいですか?
どのような場合でも、自分以外の保険証を使用することはできません。
貸した人も借りた人も刑法により罰せられます。
Q6.保険証のコピーでもいいですか?
基本的に保険証のコピーは無効です。
特例として、学校行事で保険証のコピーを持参するときは、学校が身元証明をしてくれることで、保険証のコピーでも有効になる場合があります。
Q7.加入保険が切り替わるのですが、保険証はどうしたらよいのでしょうか?
使わなくなった保険証は保険者に返却します。
会社員であれば勤め先に返却。国民健康保険加入者で引っ越しなどによって管轄する自治体が変更となる場合には、市役所・区役所などに返却します。
Q8.切り換え期間に現在持っている保険証は使えますか?
すでに新しい保険証に加入している場合には、保険証に記載されている使用期限内であっても使用できません。
以前の保険証の加入終了日、新しい保険証の加入日を確認してください。退職による保険の切り換えの場合は、退職日が保険終了日のことがほとんどです。明確に切り替わる日にちがわからない場合は、使用は控えるほうが良いでしょう。
もし加入期間を過ぎた保険証を使用した場合には、後から支払い手続きなどが必要になることもあるため、以前の保険証を使うのは止めましょう。
Q9.名前が変わりました
勤め先を通じてや自治体の窓口にて氏名変更の申請が必要です。
マイナンバー制度の導入により、手続きは不要の保険組合もありますので、確認しましょう。
氏名変更をしても、保険証の記号番号は変わらないため申請中も使用は可能です。
ただし、医療機関には氏名が変更になる旨を伝えておきましょう。
Q10.住所が変わりました
勤め先を通じてや自治体の窓口にて氏名変更の申請を行いましょう。
住所変更も、マイナンバー制度によって不要になってきていますが、加入している健康保険組合によっては必要なため、確認しましょう。
Q11.保険証を見たら仕事がわかってしまいますか?
健康保険の保険証であれば、会社名が記載されていることもあります。
会社名が記載されている保険証は、会社で独自の保険組合を設立しているケースが多いようです。
協会健保に加入している会社や、公務員共済組合などは組合名と組合の住所が記載されており、会社名は記載されていない傾向にあります。
自分自身で見てわからないようであれば、提出した医療機関でもわかることはないでしょう。
Q12.期限切れの保険証を使ってしまいました
期限切れの保険証を使ってしまった場合には、後日返還請求の通知が届き、結果的に全額自己負担となります。
失効していることを知っていて故意に使用を繰り返した場合、詐欺罪等で処罰されることがあります。
期限が切れている保険証を使ってしまったと気付いたら、かかった医療機関へ連絡して指示を仰ぎましょう。
大抵は、新しい保険証を持参することで解決できます。
Q13. 新しい保険証が届きました
誤って以前の保険証を使ったり、紛失したりするのを防ぐため、古い保険証は保険者へ返却するのがよいでしょう。
もしくは保険者から破棄するよう指示があれば、裁断して破棄しましょう。
使用開始期間のお知らせや、以前の保険証の使用終了日のお知らせが入っている場合は、その日にちに従って切り換えましょう。
Q14.国民健康保険にはどうしたら加入できますか?
いずれの公的医療保険にも加入していない場合、国民健康保険に加入しなければなりません。
社会保険資格喪失証明書など自身に当てはまる必要書類を持参し、市役所・区役所などの窓口で手続きを行います。
また、郵送による手続きが認められている場合もあります。
社会保険資格喪失証明書は、自分自身で年金事務所に行って発行してもらいましょう。
会社は、対象者が退職した後、5日以内に年金機構に対して社会保険資格喪失届を提出する義務があります。
この届が提出されていないと証明書をもらえませんので注意してくださいね。
また、加入していた公的医療保険を脱退した日から14日以内に新たに公的医療保険へ加入する届出をする必要があるなど、期限も決まっていますのでご注意ください。
健康保険証の多様化
もしも国民健康保険の加入者で、何らかの理由により毎月の保険料の支払いが困難な場合、自治体などにきちんと相談すれば、減免や支払い延期を調整してもらえる可能性があります。
まずは相談に行ってみましょう。
また近年、保険証も多様化しており、表面に記載される氏名を通称で表示することや、表面に性別表記をしないなど、手続きを行うことで表記変更することができます。
性別を記載しないためには、具体的な理由が必要なケースもありますが、簡単な申請をするだけで記載をしない選択ができる保険組合も増えているようです。
通称を表記するためにはいくつかの条件が設けられていることが多いようです。
裏面には、医療機関が患者さんの戸籍上の性別を判断するため、また保険証使用者の本人確認をするために、戸籍上の氏名や性別を記載されています。
まとめ
健康保険証とは何かということから、困った場合の対処法や取り扱い上の注意についてご紹介しました。
何気なく使っている健康保険証ですが、加入者みんなが適切に使用して支え合っているからこそ成り立っているのです。
運営機関によって申請書類なども異なりますので、より詳細な手続き方法などが知りたい場合には、自身が加入している協会けんぽ・組合健保・自治体などのホームページからご確認ください。