妊婦でも歯科治療はできる

妊婦でも歯科治療はできる

そもそも妊娠中に歯科治療ができるのか?が気になりますよね。
大丈夫、妊婦さんでも歯科治療を受けることはできます。

ですが、妊娠中の歯科治療を安全に受けるためのタイミングがあるんです。
つわりの多い妊娠初期とお腹が大きくなる後期は避け、安定期(妊娠5〜7ヵ月頃)に受診するのがおすすめです。

歯科治療は、口を開けていなければいけない時間が長くなります。
また、治療用の椅子の上でじっとしていなければいけません。

そのほか、つわりがある妊娠初期は歯科特有のよくある薬品の匂いもしんどくなりがち。
流産の危険性もあるため、妊娠初期はできるだけ歯科医院での治療は避けましょう。

また、妊娠8ヵ月以降は赤ちゃんが大きくなってきて、お母さんの身体の負担が大きくなるため治療は避けたいところです。

治療中に妊娠が発覚したら、既に入っている予約もできれば安定期へ変更する必要があるかもしれません。
途中で中断することが難しい治療や、治療計画の立て直しなどもあるので歯科医師と相談してみてくださいね。

歯科医院に行く前に!体調チェックリスト

歯科医院に行く前に!体調チェックリスト

妊娠中に歯科医院への通院が必要な場合、行く前に以下の症状がないかチェックしてみましょう。

・つわりの症状がある
・歯科医院独特のにおいで気分が悪くなりそう
・仰向けの状態が苦しい
・歯磨きをする際、歯ブラシを入れることで吐き気がする

1つでも症状がある場合は、歯科医院へ行っても治療を受けることは難しくなります。
痛みが強くて耐えられない場合は、事前に歯科医院へ連絡して事情を話し、できる限り速やかに応急処置だけ受けられるように伝えてみてくださいね。

妊娠中に体調不良がある中で無理に行動をすると流産や早産などのトラブルにつながりかねません。
自分の体調を第一に考えて、家を出る前に上記の症状を一度チェックして歯医者さんを受診するか決定するようにしましょう。

妊娠したことを歯科医院に伝える?伝えない?

妊娠したことを歯科医院に伝える?伝えない?

歯科治療を受けている期間中に妊娠した場合は、歯科医師へ伝えましょう。
治療途中の治療の経過や、妊娠期間を考慮した治療計画を考える必要があります。

どうしても安定期まで妊娠したことを伝えたくない場合は、歯科医師にどのくらいの期間通院ができないのかを具体的に伝えましょう。

歯科で使う薬品の中には、妊娠中には使用を避けたいものもありますので、元気に生まれてくる赤ちゃんのためにも、きちんと妊娠を伝えるようにしてほしいと思います。

例えば、強い鎮痛剤の「ボルタレン」は過去に死産の報告例があるほか、有名な「ロキソニン」も妊娠後期は使用を禁止されています。

妊娠したことを伝えたくないからと別の理由を挙げて通院できなくなると伝えてしまうと、痛みが出た場合に服用禁止の鎮痛剤を処方されてしまうかもしれません。

歯科治療は身近な治療ですが、実は患者さんが知らない思いもよらない危険が潜んでいることもあるのです。
歯科医師へ伝えることで、少しでも危険性を減らしたいですね。

また、妊娠中は体調の変化が起こりやすい時期です。
安定期になれば大丈夫、と予約しても行けなくなることも十分に考えられます。

事前に妊娠していると伝えていれば、予約のキャンセルへの理解も得られます。
歯科医師との信頼関係を壊すことも避けられますので、伝えるほうが何かと有利と言えるでしょう。

どうしても歯科医師へ伝えづらい場合は、女性スタッフや話しやすいスタッフへ伝えるのでも構いません。
妊娠を伝えることは勇気がいるかもしれませんが、お腹の赤ちゃんと自分を守るためにも伝えるようにしてくださいね。

歯科医師に伝えるべきことはこれ!

歯科医師に伝えるべきことはこれ!

歯科医師には、「妊娠した」と伝えるだけでなく、以下のことも伝えておきましょう。

妊娠週数
安定期であれば、歯科治療を問題なく受けられることが多いです。

そのため、現在の週数を伝えることで、今後の治療計画を立てるのに役立ちますよ。

出産後の通院のメド
妊娠は出産して終わりではなく、子育てが始まりますね。

日中はひとりで子どもを見ることになるので平日は通いづらい、里帰り出産のため出産後〇ヵ月は通院ができない、など具体的に相談しておくことで治療計画を立てやすくなります。

子供を連れたまま治療を受けることができるかどうかや、治療中に子供をみていてもらうことはできるかなど、通院するときに気になるポイントがあれば相談しておきましょう。

今お口の中で一番気になっている部分
妊娠中は、ホルモンバランスの変化によってお口の中はトラブルが起きやすくなります。

お口の中をよく知る担当の歯科医師に気になる部分を伝えることで、トラブルが妊娠に伴うものなのか疾患に伴うものなのかなどがわかり、対処法を教えてもらえるかもしれません。

妊婦さんの歯科治療Q&A

妊婦さんの歯科治療Q&A

妊婦さんが気になる、妊娠中の歯科治療の疑問についてお答えします!

Q.妊娠中「歯科レントゲンが撮れない」は嘘?本当?

A.嘘です

産婦人科診療ガイドライン産科編2020によると

・受精後11日~妊娠10週での胎児被曝は奇形を誘発する可能性があるが,50mGy未満では奇形発生率を上昇させない
・米国放射線防御委員会のレポー ト(NCRP Report No. 54)では,50mGy 以下の被曝による胎児奇形のリスクは無視できる範囲である
・米国American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)のガイドラインでも,50mGy 以下の被曝は胎児奇形や胎児 死亡などの有害事象を引き起こさないとしている

引用元:産婦人科診療ガイドライン産科編2020

という報告から、「50mGy 未満は安全」 と記載されています。

歯科用レントゲンは、1回の撮影で0.002~0.01mSv(参考:環境省)であり、 mGyにすると約0.2mGy(参考:国立保健医療科学院生活環境研究部)とかなり少ないのです。

妊娠初期は赤ちゃんのX線への感受性が高まっていますのでレントゲン撮影は避けたほうが良いですが、歯科治療を行える安定期後は撮影をしても問題ないでしょう。

歯科用レントゲンではない場合や、CTの撮影は被爆量が増加しますので、歯科医師と相談の上、撮影するようにしてくださいね。

Q.妊娠中でも麻酔は使える?

A.使えます

多くの歯科医院では「リドカイン製剤」という、毒性が低く効果が高い局所麻酔薬が使われています。

リドカイン製剤は「妊産婦への投与の安全性は確率されていない」とされていますが、使用した場合の胎児への影響はほとんどないと報告されています。
また、使用の際は、リドカイン製剤を使うことによるメリットが危険性を上回る場合にのみ使用することとされており、基本的に使用は可能と言えるでしょう。

麻酔を避けて痛みに耐えるよりも、適切に麻酔を使用した方が母体にも赤ちゃんにもストレスが少なくすみますよ。

麻酔が不安な場合は、担当の歯科医師とよく相談し、納得したうえで麻酔を受けるようにしてくださいね。

妊娠中の歯科治療の疑問

Q.処方された薬の赤ちゃんへの影響は?

A.使用が危険なものもあります

歯科で処方される薬の中には、お腹の赤ちゃんに大きな影響を与えるものや流産の可能性を高めてしまう薬もあります。

例えばボルタレンやロキソニンといったよくある鎮痛剤や、クラビットやホスミシンといった抗生物質などさまざまです。

妊娠中であると伝えていないと処方される恐れがあります。
不安な場合は、処方を担当する薬剤師にも妊娠していることを伝えて確認しておきましょう。

Q.妊娠中の歯科治療で流産しない?

A.可能性はほとんどないといえます

妊娠週数を鑑みて治療計画を再考する、薬の使用を気を付けるなどすることで、歯科治療が直接流産に繋がる危険性は少ないと考えられています。

妊娠初期の歯科治療を避けておくことが大切ですので、妊娠を計画している方は事前に歯科検診を受けて治療を終えるようにしておきましょう。

まとめ

治療計画

赤ちゃんとお母さん両方の健康を守るためにも、お口の中の健康は大切です。
妊娠中でも歯科治療を受けることはできますが、可能であれば事前に治療をしておきたいですね。

妊娠中の治療を希望される場合は、担当の歯科医師に妊娠中だと伝えることで危険を避けることができますよ。

医療は患者さんが知らないリスクや注意点が意外とたくさんあるものです。
自分自身で判断してしまわず、しっかり相談して治療方針や内容を選ぶことをおすすめします。