1. 親知らずっていつ生えるの?

親知らず(第3大臼歯)は17歳から25歳に生えてきます。
英語で”wisdom teeth”、日本語では智歯という表現がなされます(知恵がついた頃に生えてくる歯であることが由来です)。

親知らずの生えてくる時期は個人差が大きく、25歳以降に生えてくる方もいらっしゃいます。
人によっては親知らず自体が存在しないことも最近多くなりました(イギリス人口の8%は親知らずが無いことが過去の研究で報告されています)。

2. 親知らずは抜歯したほうがいいの?

下顎の親知らずの場合、真っ直ぐに生えてこないことが多いです。
生えない理由ですが、下顎の親知らずは前の歯(第2大臼歯)に向かって生えてくること、顎の成長が小さく元々の生えるスペースが狭いことなどが挙げられます。

「親知らずはどんな時に抜歯すると良いの?」と疑問を持つ方も多いですが、以下のようなケースが抜歯例として挙げられます。

・虫歯や歯周病などの痛みが親知らずにある
・隣の歯(第2大臼歯)の歯根が吸収されている
・隣の歯(第2大臼歯)の虫歯治療で親知らずが邪魔になっている
・親知らずのある部位に嚢胞や腫瘍が認められる
・矯正治療での歯の動きに親知らずが干渉する可能性がある
・外科治療で下顎を切って動かす際、予定切開線に親知らずがある

また、20-29歳で親知らずの歯周病が80%以上認められることが報告されています。

親知らずの歯茎の炎症で喉の痛みを訴える方もいます。
痛み止めや抗生物質の服用で症状は3日程度で改善しますが、症状を繰り返すようであれば、親知らずの抜歯を検討されると良いでしょう。

※親知らずが横向きに生えていても、必ずしも抜歯する必要はありません。症状などが無ければそのままにすることもあります。

3. 親知らずの生え方によって抜歯方法や治癒期間が変わります


親知らずが生えている方向によって、抜歯する方法や治る期間が変わります。

まず、親知らずが横向きに生えている場合の抜歯方法を説明します。

歯茎を切って顎の骨を削り、親知らずの歯冠を出します。
その後、歯科用器具で歯冠だけを削って取り除きます。
最後に歯根を抜歯用器具を用いて取り除き、歯茎を縫って終了です。

横向きに生えた親知らずの場合、顎の骨を削ったり、歯茎を切ったりするので、治療期間が普通の抜歯より一般的に長くなります。
横向きの親知らずを抜いた後の流れですが、翌日に消毒をして、1週間後に抜糸を行うことが多いです。

また、横向きに生えた親知らずは下顎の中を通っている神経(下歯槽神経)に近いです。
下顎の感覚麻痺などが起こらないよう慎重に抜歯をする必要があるため、口腔外科の得意な歯科医院や口腔外科のある病院での抜歯が一般的です。

真っ直ぐに生えた親知らずであれば、抜歯することは難しくないので、かかりつけの歯医者さんでも抜歯することが可能でしょう。
歯茎を切ったりしないので、傷の治りも早いです。

抜歯した後の穴が完全に骨に置き換わるのは、おおよそ3ヶ月から6ヶ月かかります。
抜歯した直後は血の塊(血餅)が歯を抜いた穴に形成され、1-4週間後に肉芽組織(にくげそしき)という軟らかい組織で穴が塞がれます。
1ヶ月後に脆弱な骨(仮骨)が形成され、3-6ヶ月で完全な骨に置き換わります。

※専門用語にはなりますが、抜歯した後の治る過程は大まかに4ステージに区分されており、凝血期→肉芽組織形成期→仮骨期→治癒期と経過して抜歯した穴が骨で塞がっていきます。

また、下顎の親知らずの抜歯で顎が細くなると聞いたことのある方がいらっしゃると思います。
抜歯した後の穴は骨で置き換わるため骨格的な大きな変化は期待できません。

4. 傷口が塞がらない、、、ドライソケットかも

親知らずを抜歯すると抜歯した後の穴に血餅ができ、周囲の骨や神経を保護しながら完全な骨に徐々に置き換わっていきます。

しかし、血餅が何らかの原因で無くなってしまい、骨や神経が露出して空気や食べ物、細菌にさらされると痛みを生じる可能性があります。
抜歯後の傷口が上手く塞がらず骨が露出している所見を「ドライソケット」と言います。

親知らずの抜歯をした後にドライソケットになる可能性が2-5%という研究報告があります。以下、ドライソケットになりやすい例を挙げます。

・喫煙
・口腔衛生不良
・親知らずの抜歯後
・抜歯後の歯茎や顎骨の損傷が激しい場合
・避妊薬の服用(エストロゲンが血餅を作る機能を制限するため)
・抜歯後のドライソケットの既往
・強いうがい

ドライソケットの症状ですが、歯を抜いた2日後に出現する痛み、口臭、苦味の出現などがあります。
ドライソケットの治療法は、痛み止めや抗生物質の服用、歯科医院での患部の汚れの除去と洗浄、洗口液の使用などが挙げられます。

ドライソケットの痛みは1週間程度続くことがあり、痛みが増していきます。
市販の痛み止めなどでも改善しない場合、我慢せず、かかりつけの歯科医師に一度診てもらうことをお勧めします。

5. 親知らずに限らず抜歯後の過ごし方


親知らずを抜いた後、特にドライソケットにならないように下記のことに気をつけましょう。

・抜歯した後の穴(抜歯窩)をむやみに触らない
雑菌が付着している手で抜歯した後の穴を触ることはやめましょう。
感染による炎症で傷の治りが悪くなります。

・歯磨きの際、歯ブラシで抜歯窩を触らない
歯ブラシにより付いた傷で治りが悪くなる可能性が高いので、洗口液を活用しましょう(抜歯直後は口に含んで軽くゆすぐ程度に留めましょう)。

・ブクブクうがいはしない
抜歯後の出血が気になり、うがいしたくなるかもしれません。
抜歯窩には血餅という血の塊が存在し、血餅を元に傷が治っていくのですが、血餅がブクブクうがいにより抜歯窩から流れ出てしまう可能性があります。

抜歯窩が乾燥しドライソケットの原因になり得るので、うがいは軽く留めましょう。

・激しい運動・長時間の入浴は避ける
激しい運動を行うと血圧や脈拍が上がり、抜歯窩からの出血が促されます。
入浴も血行が良くなるため、出血する原因となります。

特に抜歯直後は激しい運動を控え、入浴は軽く済ませる程度にすると良いでしょう(シャワーであれば問題ありません)。

・喫煙・飲酒は控える
喫煙をすると口の中が乾燥する原因となるので、ドライソケットの原因になり得ます。
特に抜歯後は控えましょう。

また、お酒を飲むことは血行が良くなり出血を促す原因となり得ます。
抜歯した当日は控えましょう。