1.口腔扁平苔癬とは?


画像引用:公益社団法人 口腔外科学会

口腔扁平苔癬は皮膚や口の中にできる粘膜の病気で、40~70歳代の女性に多く発症がみられます。
発症部位の大半は頬の粘膜であり、銀歯や入れ歯の金属部分といった、金属に接している部分に発生する可能性が高いです。

見た目上の特徴としては、白い粘膜が角化したものがレース状になって、その周囲には発赤も伴います。自覚症状としては、食べ物が患部に当たると痛みを感じる、舌を少し動かしたり歯を磨いたりするだけで痛いといった、いわゆる接触痛が最も多いとされています。

その他には、口の中が荒れたり、出血が見られるといった症状が生じたり、灼熱感、味覚障害、摂食障害といった症状も発生します。

それだけでなく、ごくまれにではありますが、がんへと進行してしまうことがあります(前癌病変)。
その可能性は0.5%~2%程度と言われています。

2.口腔扁平苔癬の原因とは?

口腔扁平苔癬の発生の原因は現在のところ不明です。
しかし、可能性として挙げられているものとしては、次のような要因が挙げられます。

・アレルギー(特に、歯科用金属によるもの)
・遺伝的な素地
・自己免疫疾患
・ストレス等の精神的因子
・口内の汚れ
・喫煙
・代謝障害
・C型肝炎ウイルス
・移植片対宿主病(GVHD)
・ビタミンAの欠乏


とりわけ、金属アレルギーは口腔扁平苔癬の発症に大きく関与している要素とされています。
口腔扁平苔癬は銀歯や入れ歯の金属バネといった、金属に接する部分に発症することが多く、その原因と思われる金属を除去することで、完治、あるいは症状に改善が見られる場合があります。

中でも、アマルガム合金(水銀が含まれた銀歯)に接する部位の発症率は、より高くなる傾向にあります。

また、銀歯やアルミホイルといった、異なった種類の金属同士が口の中で触れた場合に起こる、「ガルバニー電流」にも気を配る必要があります。
ガルバニー電流の発生は、口内にある銀歯などの金属が腐食して溶ける要因にもなります。

溶出した金属により、先述した金属アレルギーを引き起こすことにもつながってくるためです。
保険で作られる金属の被せ物や詰め物には金属アレルギーを引き起こしやすコバルトやクロムなどが多く含まれています。

金属アレルギーになると口腔扁平苔癬になりやすいので、ガルバニー電流の発生は口腔扁平苔癬の原因になる可能性もあるといえます。
口内の汚れに加え、ストレスや喫煙といった要素も、口腔扁平苔癬に対する免疫力の低下につながります。

そのため、口腔扁平苔癬を防ぐためには、それらの要因に気を配っていく必要があります。

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3.治療方法

一般的に、治療を行わなかった場合の自然治癒率は2~3%といわれています。
自然治癒の可能性は低く、治療には長期間を要することが多いです。

初期治療としては、口腔内の衛生状況を改善することや、歯周病の治療や咀嚼機能の回復といった、口腔機能の管理が行われます。
その他の局所的な治療法としては、うがい薬を処方したり、副腎皮質ステロイドを含む、軟膏を用いた対応が行われます。

また、金属アレルギーの疑いがある場合は、皮膚科でのパッチテストや、歯科用の検査を行います。
場合によってはその原因と思われる、詰め物・被せ物といった部分を除去する必要も生じます。
先述の通り、それらの金属を取り除き、プラスチックやセラミックの詰め物や被せ物に交換することで、症状に改善が見られるケースも存在しています。

それに加えて、ビタミン剤や抗アレルギー薬をはじめとする治療薬を用いた、投薬治療も行われます。
実際の治療においては、単独の治療よりも、これまでに述べたような複数の治療法が併用される傾向があります。

症状が改善されても、治療を中止すると再発するケースも少なくないため、定期的、かつ長期的に、経過観察を行っていくことが重要であるとされています。

4.おわりに

これまで述べてきたとおり、口腔扁平苔癬が発生する原因は未だに不明のままです。
しかし、金属アレルギーの遠因となる口内の汚れをはじめ、ストレス、喫煙といった、自分自身でのコントロールが可能な分野に常日頃から気を配っていくことで、発症の可能性を少しでも抑えることができる可能性はあります。

また、難治性の病気ではありますが、先の段落で述べたように、治療方法自体は存在することも確かです。
その症状についてしっかりと把握し、専門の医療機関での診察を経て、正しい対処法をもって治療に取り組んでいきましょう。