心筋梗塞とお口の関係
心筋梗塞は、冠動脈の血流が止まることにより、酸欠や栄養不足によって心筋の一部が壊死してしまう病気です。
通常の歯磨きなどのセルフケアとは特に関係ありませんが、服用している薬によっては問題が発生することがあります。
心筋梗塞の薬は、再発を防ぐ目的などで服用する場合がありますが、中には出血や麻酔などの影響があるので、飲んでいる薬を歯科医師に伝えたり、治療内容によっては心筋梗塞の治療を担当した医師に相談したりする必要があります。
歯を抜歯しなければならない方や、重い歯周病にかかっている方などは、特に注意していただきたいと思います。
心筋梗塞の方がよく飲むお薬と歯科の関係
心筋梗塞の治療によく使用されるお薬の種類
抗血小板薬 |
バイアスピリン®、バファリン81mg®、プラビックス®、エフィエント®、パナルジン®、プレタール®など |
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抗凝血薬 |
ワーファリン®、プラザキサ®、イグザレルト®、エリキュース®、リクシアナ®など |
β遮断薬 |
アーチスト®、メインテート®など |
脂質代謝異常改善薬 |
リピトール®、クレストール®、リバロ®、メバロチン®、ローコール®、リポバス®など |
糖尿病治療薬 |
ダオニール®、オイグルコン®、グリミクロンHA®、アマリール®、メトグルコ®、ジベトス®など |
抗血小板薬
<効果>
血小板の働きを抑え、血流の速い血管での血栓を予防。
<歯科との関連>
血液がサラサラになるため、出血しやすくなる。
抜歯などの観血的処置後に止血がしにくくなる。
<勝手に服薬を止めた場合のリスク>
脳卒中などのリスクが高まるおそれがある。
抗凝血薬
<効果>
血液を固めようとする働きを抑え、血液が滞るために起こる血栓を予防。
<歯科との関連>
血液がサラサラになるため、出血しやすくなる。
抜歯のときなどに止血しにくくなるおそれがある。
<勝手に服薬を止めた場合のリスク>
血栓塞栓症などのリスクが高まるおそれがある。
β遮断薬
<効果>
主に心臓の交感神経の受容体の働きを抑え、心臓の動きを休める。
<歯科との関連>
アドレナリンを含む局所麻酔の使用が制限される場合がある。
<勝手に服薬を止めた場合のリスク>
心臓の機能や心不全症が悪化するおそれがある。
脂質代謝異常改善薬
<効果>
脂質量をコントロールする。
<歯科との関連>
不明
<勝手に服薬を止めた場合のリスク>
心筋梗塞が再発するおそれがある。
糖尿病治療薬
<効果>
インスリンの働きを補い、血糖値を下げる。
<歯科との関連>
アドレナリンを含む局所麻酔の使用が制限される場合がある。
<勝手に服薬を止めた場合のリスク>
症状が悪化するおそれがある。
歯科に行くときに気を付けるポイント
歯科治療を受ける場合は、心筋梗塞にかかったことを伝えるだけでなく、服用している薬を正確に伝える必要があります。
そのために、お薬手帳を持参するとよいでしょう。
飲んでいるお薬だけでなく、どれくらいの期間服薬しているのかも歯科医師がわかるようになります。
また、心筋梗塞治療後は、再び梗塞を起こす可能性があり抜歯などの処置を受けられないため、6ヵ月ほど空けてから抜歯することになります。
抜歯までは定期的にお口の中のクリーニングをしてもらうことをお勧めします。
このようなポイントを押さえたとしても、抜歯の場合は抜く本数や、遠くから来院する場合は翌日の止血の様子を確認しづらくなるなど、歯科医師は細かい条件を確認したうえで歯科治療の可否を判断しなければなりません。
そのため、抜歯や出血を伴う処置については、服薬の内容なども含め、心筋梗塞の治療を担当した医師に相談するようにしてください。
場合によっては、服薬を中止したり、抜歯の本数を制限しながら継続的に抜いていくなど、対応方法を提案されることがあります。
ただし、このとき、薬の服用を勝手に止めないようにしてください。必ず医師に確認しましょう。
このほかに気になる病気の経験があれば、隠すことなく歯科医師に現病歴や既往歴を伝えてください。
問診票に記入欄がなければ、口頭でもよいので申告しておくと、治療を受けるときに安心できると思います。
服薬している薬が、別の領域の治療では問題となることもあり得ます。
心配な点は、担当歯科医師に相談するようにしましょう。