掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは


掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは、手のひらや足の裏に小さな水ぶくれが繰り返しできる、皮膚の病気です。
水ぶくれの中からはウイルスや細菌などは存在しないため、水虫のように他人に感染することはありません。

初期症状としては小さな水ぶくれが手の平や足の裏にでき、かさぶたになってはがれ落ちる程度ですが、症状が進むと膿をもった黄色い膿疱(のうほう)に変化します。

場合によっては、周りの皮膚や爪にも炎症が広がるほか、皮膚の赤みや痛み、やかゆみを感じます。
また、掌蹠膿疱症は重篤化すると骨関節炎を合併することが報告されています。

これを、掌蹠膿疱症性骨関節炎(しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん)といいます。
関節に炎症が及ぶと、腫れや痛みが生じ「歩行が困難」「寝返りができない」などといった、日常生活に困難が生じる場合があります。

掌蹠膿疱症の原因は?歯科治療で改善できる?


掌蹠膿疱症の原因や発症のメカニズムは明確に解明されていませんが、根尖性歯周炎や歯周病、扁桃感染巣などの病巣感染のほか、喫煙や金属アレルギー、代謝異常、ストレスなどの様々な要因が複合し、病気を誘発しているのではないかと考えられています。

なかでも、注目されているのが掌蹠膿疱症と咽頭・口腔領域との関連性。
日本歯周病学会のレポートによると、慢性的な病巣の治療により病状が改善されたというのです。
具体的には、扁桃炎、歯の根やその周囲の病巣、歯周病の治療です(歯科領域でいう「病巣」とは、主に「根尖性歯周炎」や「歯周病」を指します)。

日本歯周病学会のレポートによると、掌蹠膿疱症患者さん238症例のうち、病巣感染が疾患の原因であった割合は全体の81%。
そのうち歯性感染症と扁桃炎との併発例の割合は約59%、歯性感染症単独の割合は47%、金属アレルギーが原因とされる症例は4%であったと報告しています。

これは、体内で引き起こされている慢性的な炎症が、病気の発生や進行に影響を与えている可能性を示しています。
続いて、以下にて歯科領域においての掌蹠膿疱症の治療例をご紹介します。

歯の病巣(根尖性歯周炎・歯周病)

根尖性歯周炎(歯の根の病巣)


根尖性歯周炎とは、虫歯が歯の神経まで進行し、歯の根の先端で細菌感染が広がる疾患のことです。
歯の根の先に膿(うみ)の袋を作りながら周囲の組織へ広がります。
レントゲンやCTを使用しながら感染源となっている歯の根の治療を行い、細菌の巣を取り除くことで、掌蹠膿疱症を改善した例が報告されています。

歯周病


歯周病とは細菌の感染によって引き起こされる慢性疾患です。
歯磨きを怠ると口腔内の細菌が増殖し、歯茎の赤みや出血、口臭などを引き起こします。

歯周病は重症化すると歯を支える骨にダメージを与え、最終的には歯が抜け落ちてしまう病気です。歯周病が疑われる場合は、口腔内の清掃や歯石の除去などを行い、歯周病菌の病巣を破壊することが大切です。
適切な歯周病治療を行うことで、掌蹠膿疱症の改善に期待できるかもしれません。

金属アレルギー


いわゆる「銀歯」と呼ばれる、口腔内の銀の詰め物や被せ物が金属アレルギーを引き起こす場合があります。
銀歯に含まれている金属イオンが溶け出し、体内に入ることでアレルギー症状をはじめとした、様々な健康被害を引き起こす可能性が指摘されています。

その健康被害のひとつが掌蹠膿疱症。
対処法としては、口腔内の歯科金属を除去し、プラスチックやセラミックスなどの「金属を使用しない素材」に置き換えます。
このことにより、掌蹠膿疱症の症状が緩和されるケースが報告されています。

喫煙


掌蹠膿疱症を発生している患者さんの特徴として「喫煙者が多い」という共通点があります。
喫煙がどのように病気と関わっているのかは解明されていませんが、喫煙による炎症が病状を促進させている可能性が考えられます。

禁煙を実施することで症状の緩和や、治療効果の向上に期待できるでしょう。
いずれにしても、喫煙は百害あって一利なし。身体にとって良いことは何一つありません。
これを期に、禁煙を始めてはいかがでしょうか。

まとめ


掌蹠膿疱症の原因は明確に解明されていませんが、様々な要因が複雑に関係していると考えられています。
皮膚の病気と口腔内の病気は、一見関係がないように思えるかもしれません。

しかし、口の中の金属を全てセラミックやプラスチックに変えることで、掌蹠膿疱症が改善したという報告は実在しています。
口腔内の細菌や口の中の金属から溶出したイオンが血管を通じて全身へ巡り、何らかの影響を与えている可能性は十分に考えられます。

一度、歯医者さんで検診を受け、適切な処置を受けましょう。
お口の中に掌蹠膿疱症を改善できるヒントがあるかもしれません。