結核とは


結核とは、結核菌という細菌が原因で起こる病気です。日本では、明治時代から戦前(昭和20年代)まで、国民病や亡国病と呼ばれ恐れられていました。昭和26年には「結核予防法」が制定されています(現在では廃止され「感染症法」に統合)。

結核菌は酸やアルカリに対する抵抗性が強い一方で、紫外線に弱いことが知られています。

結核の罹患数

2021年における結核の新規患者数は11,519人で、現在でも年間1万人以上の新規患者が発生し、約2,000人が命を落としているのです。結核患者の3分の2を高齢者が占めています。

また、結核の新規患者数を人口10万対率で表した「結核罹患率」というものがあります。結核罹患率が「10.0」を下回ると、結核低まん延国の水準を達成できます。日本は2021年に「9.2」となり、ようやく結核低まん延国となりました。

結核の予防接種と抗体反応検査

結核の予防としてはBCG接種があります。特に子どもの結核予防に有効で、現代の日本では生後4ヵ月~6ヵ月までに1回の摂取が推奨されています。

また、結核予防のために検査としては、ツベルクリン反応検査を行なうことが一般的でした。ツベルクリン反応検査とは、結核菌に対する抗体があるかどうかを調べるための抗体反応検査です。

以前は小学1年生時と中学1年生時に検査を実施し、抗体がみられない場合には追加でBCG接種(結核の予防接種)を行っていました。しかし、2012年に感染症予防法が改正され、ツベルクリン反応検査は廃止されています。

結核はどこから感染する?


結核は主に経気道感染する病気です。呼吸をする際に、空気中に存在する結核菌を口から吸い込んで感染します。

取り込まれた結核菌は、気道から肺胞内に到達し、肺胞マクロファージという免疫細胞内で増殖するのです。増殖した結核菌は肺に定着し、病巣を作ってしまいます。また、まれにリンパ節まで到達する結核菌があり、リンパ節病巣を作ります。

結核の症状と種類


結核にかかっている場合、2週間以上にわたって咳が出る、咳に痰が混じるといった症状が主にみられます。そのほか、体重が減少したり、全身に倦怠感を覚えたりする場合もあります。こうしたなか、呼吸器系の症状がはっきりとみられないケースもあり、結核の発見が遅れてしまうこともあるのです。

また、結核は肺だけに病巣を作るわけではありません。以下、結核の種類とその症状について解説します。

肺結核

肺が結核菌に感染している状態を肺結核といいます。2週間以上長引く咳や痰が特徴的な症状です。ただ、症状が軽い倦怠感のみだったために診断が遅れたというケースも報告されています。

粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)

結核菌が血流に乗って全身へ広がる状態を粟粒結核といいます。肺結核よりも重篤な症状がみられます。高齢者や女性に罹患者が多いことが特徴です。症状としては、数週間持続する発熱や食欲不振などが初期段階で現れます。

結核性髄膜炎(けっかくせいずいまくえん)

結核菌が脳や脊髄にある髄膜・髄液に炎症を及ぼすことで発症するのが、結核性髄膜炎です。細菌やウイルス性の髄膜炎よりも、徐々に進行するケースが多くみられます。症状としては、食欲不振や倦怠感のほか、眼球に違和感を覚える、手足の麻痺・痙攣がある、意識障害をきたすといったものが挙げられます。

皮膚結核

皮膚結核は、真性皮膚結核と結核疹(けっかくしん)に分けられます。 真性皮膚結核は、皮膚結核のうち15%の割合を占め、直接皮膚に病巣が作られます。結核疹は、結核菌に対するアレルギー反応によって生じる皮疹です。

結核は治らない「死の病」ではない!


結核は、一昔前は死に至ることがほとんどで、死の病として恐れられていました。ただ現代では、抗結核薬などの薬が開発され、十分に治療可能な病気となっています。2021年における結核による死亡率は、人口10万人あたり1.5人で、昔と比べて大幅に減少しました。ただし、現代でも薬をきちんと飲まないと再発したり薬剤耐性のある結核菌ができたりすることもあるため、数ヵ月にわたる決められた服用期間を遵守して複数の薬を組み合わせた治療を受ける必要があります。

現代でも結核で死ぬことがある

結核は治療可能となった病気ではあるものの、治療の遅れや、治療を遵守せずに結核菌が多剤耐性化をきたした場合には重症化し、後遺症が残ったり死に至ったりする可能性が十分にあります。病気を軽視することなく、必ず最後まで治療を行なってください。

まとめ


今も年間1万人以上の新規患者がいる結核は、けっして過去の病気ではありません。2週間以上続く咳や痰、全身倦怠感など気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。現代では抗結核薬などの薬が開発され、十分に治療可能な病気となっています。