月経不順について

月経には正常な周期日数があります。日数の定義は25~38日とされていますが、その周期からずれて月経が訪れることがあります。これを「月経不順」といいます。月経周期が24日以内と短くなる場合は「頻発月経」、月経周期が39日~3ヵ月と長くなるものを「希発月経」といいます。

月経不順になると、月経とは異なる出血が現れることがあります。これを「機能性子宮出血」といいます。出血量や月経期間が正常な月経とのは異なるのが特徴です。

月経不順の原因で多いものとして、ホルモンバランスの崩れなどが挙げられます。ホルモンバランスは日常生活の乱れやストレスなどによって起こります。

月経不順の原因

月経不順の原因としては、まずはホルモンバランスの崩れが挙げられます。ホルモンバランスの崩れは、急激なダイエットやストレスによって起こることがあります。また、不規則な生活を続けることも月経不順につながります。

さらに病気が原因となって月経不順が起きることもあります。子宮頚癌や子宮体癌、甲状腺機能の異常(亢進症・低下症)、多嚢胞性卵巣症候群などがそれに当たります。

月経不順の種類と疾患について

月経不順の多くはホルモンバランスの乱れによって起こりますが、関連が疑われる疾患としては黄体機能不全、機能性子宮出血、無排卵性周期症などが挙げられます。

黄体機能不全

卵巣で形成される黄体からのホルモン(プロゲステロン)の分泌不全や子宮の血流不全を原因として、子宮内膜の分泌期変化が正常に起こらない状態を黄体機能不全といいます。

黄体機能不全はホルモン異常などによる機能性出血を引き起こし、卵子の着床障害につながる可能性があります。そうなると、不妊症や不育症などにつながることがあります。

黄体機能不全の治療方法としては、妊娠を望む方に対して黄体賦活療法と黄体ホルモン補充療法を行う場合があります。

また、黄体ホルモン製剤の内服や経腟投与、黄体機能を刺激するといった治療方法もありますが、有効性は確立されていません。

機能性子宮出血

機能性子宮出血とは、女性ホルモンの分泌に異常が起きることによる出血です。病気や妊娠とは関係ありません。

機能性子宮出血の多くは、ホルモン異常によって不正出血を起こします。しかし、まれに血液疾患や甲状腺機能の異常などによって不正出血が起きることもあります。このタイプの出血は思春期または更年期に起こりやすいという特徴があります。

検査をする場合、内診の他に子宮・両側卵巣を確認する経腟超音波検査、それに子宮頚部・子宮内膜細胞診、血液検査などが行われます。

検査の結果、病気や妊娠が確認できず、出血量が少ないまたは出血期間が短かった場合は、そのまま経過観察をすることになります。

無排卵性周期症

月経に似た出血であるにもかかわらず、排卵を伴っていない出血を無排卵周期症といいます。月経周期が正常でなく、月経量や月経期間も異常が見られ、基礎体温が低温一相性で高温期がない場合は、無排卵周期症だと診断されます。

無排卵性周期症は思春期や閉経前に多く見られる症状で、初経から1~2年は無排卵性月経のケースも多くなります。

この病態は不妊の原因にもなるため、女性にとって重視されるものといえるでしょう。

原因としては、視床下部の機能異常、多嚢胞性卵巣症候群などが挙げられます。多嚢胞性卵巣症候群については、この後詳しく説明します。

月経不順の方は排卵障害の可能性アリ!?

月経不順になっている方は、排卵障害を起こしている可能性があります。排卵障害は不妊の原因にもなるとされており、妊娠を望む方にとっては重大な問題になります。排卵障害を改善するための治療方法もあるので、月経不順や排卵障害の症状が見られたら早めに病院で相談しましょう。

排卵障害とは

25~38日という正常な月経周期に当てはまらない方は月経不順と考えられます。月経不順が認められると排卵障害が起きている可能性があり、極端な月経不順だと月経のような出血であっても排卵を伴わないことがあります。排卵障害は不妊につながる可能性があるので、月経不順が見られたら病院で相談するとよいでしょう。

排卵しない原因としては、甲状腺機能障害、極度の肥満または体重減少、多嚢胞性卵巣症候群などがあります。

排卵障害は不妊の原因になる

排卵障害による病気のひとつに、多嚢胞性卵巣症候群があります。これは女性のおよそ5~10%が発症するもので、不妊症でも最も大きな原因とされています。

多嚢胞性卵巣症候群の症状としては、月経不順、不正出血、無月経などが挙げられます。

脳下垂体から分泌されるホルモンと、卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが乱れることによって排卵障害が起きますが、このようなホルモンバランスが崩れる原因が不明なものを多嚢胞性卵巣症候群とよんでいます。排卵障害の他にも男性ホルモンの過剰な分泌(毛深くなる、ニキビが増えるなど)、肥満や血糖値の上昇(インスリン抵抗性がメイン)などが見られる糖代謝異常などの症状が現れることがあります。

多嚢胞性卵巣症候群にかかっているとき、卵巣内には小さな卵胞がたくさん発生(診断基準では10個以上)しており、卵巣が腫れています。

最大の特徴は、月経不順が初経時から続いていることです。月経の周期は2~3ヵ月に1回になり、3ヵ月以上も月経が訪れない無月経という状態にもなります。

排卵障害の治療法は?

患者さんが肥満体型である場合、まずは減量をするためにライフスタイルを変えていきます。日々の食事の改善や運動などを取り入れて減量することで、月経不順が良くなることがあります。

妊娠を希望されている方には、排卵誘発剤を使ったホルモン治療を行います。この治療によって排卵を誘導し、妊娠できるようにします。もし、治療が無効だった場合は、卵胞刺激ホルモンを注射します。2023年9月現在ではインスリン抵抗性を改善する薬剤を使用することもあります。また、腹腔鏡下卵巣開(多)孔術という手術を検討することもあります。

まとめ

月経不順にはさまざまな原因が考えられますが、中には重大な病気が影響している可能性もあるので注意が必要です。特に妊娠を希望されている方にとって重大なのが、排卵障害です。月経不順の原因のひとつとしても考えられる病態なので、月経不順が起きたらなるべく早く病院でご相談ください。