術後性上顎嚢胞とは?

上顎洞の手術をした後、上顎洞に嚢胞が生じる病気を術後性上顎嚢胞といいます。

上顎洞は副鼻腔のひとつで、鼻の左右にある空洞のことです。

文字通り上顎洞に炎症が生じるのを上顎洞炎と呼び、上顎洞内の炎症を取り除くため手術を受けることがあります。手術では薬や洗浄で改善がされなかった炎症のみられる上顎洞粘膜を取り除きますが、粘膜の一部が残ってしまうと嚢胞が発症することがあります。

上顎洞炎の術後十数年経過して発症することがあるため、術後長期間経過しているからといって油断はできません。

術後性上顎嚢胞の症状

術後性上顎嚢胞の症状は多岐にわたり、頬の違和感や顔面腫脹、鼻水・鼻詰まり、歯痛、眼痛、眼球突出などが出現します。

副鼻腔炎などの手術を受けた経験がある方は症状が出る可能性があるため、心当たりがある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

嚢胞が大きくなることによって神経を圧迫し痛みが起こるケースがある一方で、無症状で経過するケースもあるため注意が必要です

術後性上顎嚢胞の診断方法

術後性上顎嚢胞の診断はCTやMRIです。

患部をモニターで確認できる電子スコープ(電子内視鏡)で検査することもあります。

副鼻腔炎などで手術を受けた方で、頬にしびれや痛み、鼻水・鼻詰まりなどの症状がある場合は術後性上顎嚢胞の可能性もあるため、歯科医院や耳鼻科等で相談してみてください。

また、術後から十数年かかって発症することも少なくないので、「手術はずっと前のことだから関係ない」と油断せず早めに診察してもらいましょう。

術後性上顎嚢胞の治療法

術後性上顎嚢胞になってしまった場合の治療方法には抗生物質の投与や鼻内視鏡手術などがありますが、症状の度合いによって異なります。

術後性上顎嚢胞の治療法について詳しく紹介します。

抗生物質の投与

術後性上顎嚢胞の治療方法は、基本的に嚢胞摘出です。症状や患部の状態から比較的軽度と考えられる場合は、抗生物質の投与、または嚢胞に溜まった液体を取り除くといった治療を行うことがあります。

抗生物質を投与し嚢胞が小さくなっていたというケースもあるようです(腫れがある場合は膿が溜まっている場合があるので嚢胞を摘出する必要があります)。

鼻内視鏡手術

術後性上顎嚢胞の症状を何度も繰り返す場合には、手術が必要です。手術にかかる時間は1~2時間ほどで、入院せず日帰りで行われることがほとんどです。

嚢胞を摘出する場合は、鼻内視鏡手術を行います。鼻の下の方を通っている下鼻道側壁や、上顎洞膜様部というところに穴を開け、嚢胞壁をできるだけ大きく開放する方法が主流となっています。状態によっては、鼻腔を開窓するケースもあります。

嚢胞が鼻腔から遠い、または厚い骨壁に覆われて摘出が難しい場合は、歯茎を切開することがあります。摘出の際は嚢胞が残らないように気をつけて行われます。

まとめ

術後性上顎嚢胞は、副鼻腔炎などで手術をした後に上顎洞内で嚢胞を発症する病気です。術後すぐではなく、数年から数十年かけて発症することもあります。

「副鼻腔炎の手術をしたのはずっと前だから関係ない」と決めつけないことが大切です。

術後性上顎嚢胞の症状である頬の違和感(腫れ・痛み)や鼻水・鼻詰まりなどがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。

治療方法は基本的に嚢胞の摘出ですが、比較的軽度であれば抗生物質の投与のみで改善することもあります。

摘出する場合も手術後は日帰りとなるので、もし嚢胞が認められたとしても重く考えすぎず、前向きに治療に取り組みましょう。