集合管がんとは

集合管がんは腎細胞がんの一種で、Bellini管癌(ベリニ管がん)とも呼ばれています。

集合管がんは、腎細胞癌の特殊型に分類されるまれな癌です1)

腎臓内にある集合管という管で発生し、症状などから「腎盂(じんう)がん」に近い性質を持っているとされ、女性よりも男性が発症するケースが多いのです。

発症頻度としては腎細胞がんのうち1%と少なく、稀ながんといえます。また、この発症頻度の低さから、他の病気との判別がしづらく、早期発見が難しいがんでもあるのです。他の病気に関する検査を行なうなかで、偶然集合管がんを発見するケースが多くあります

集合管がんが発症する原因としては、飲酒・肥満をはじめ、遺伝も挙げられます。

集合管がんの症状

集合管がんを発症したときには、以下のような症状が現れます。

・側腹部の疼痛
・血尿
・腹部の腫れや腫瘤を触れる
・足のむくみ
・食欲不振
・便秘

この他、急速にがんが進行した場合には、発熱・体重減少などの全身症状が現れる場合もあります。

集合管がんは予後不良の病

腎がんの5年生存率は、ステージ1で95%以上、ステージ2で75〜95%、ステージ3で59〜70%、ステージ4で約20%とされています。しかしながら、集合管がんは予後不良の病としても知られていて、他の腎がんと比べて残された時間が短い場合もあるのです。

また、集合管がんは再発・転移しやすいという特徴があります。

集合管がんの検査方法・治療方法

続いて、集合管がんが疑われる場合の検査方法と、診断後の具体的な治療方法について解説します。

集合管がんの検査方法

集合管がんの疑いがある場合、医療機関では以下の検査方法で診断を行ないます。

・腹部超音波検査(がんの位置や形などを調べる検査)

・CT検査(がんの大きさ・広がり・転移などを調べる検査)

・MRI検査(がんの大きさ・広がり・転移などを調べる検査)

・PET検査(がんの広がりを調べる検査)

・骨シンチグラフィ(骨への転移を調べる検査)

・CRP検査(炎症の程度や予後を予測する際に役立つ検査)

・生検(異常な細胞の有無を調べる検査)

・血管造影(腫瘍の有無や栄養している支配血管を調べる検査)

腎臓の腫瘍を発見するには、腹部超音波検査が最も有効で、手軽に行なえるというメリットもあります。ただ、腫瘍が良性か悪性かを判定することが難しいため、CT検査やMRI検査などを用いてより詳細な検査を行なっていきます。

集合管がんは、集合管上皮由来の腫瘍であり、腎髄質より発生するため、皮質より発 生する腎細胞癌よりも腎杯に浸潤して尿中に腫瘍細胞が出現する可能性は高いと考えられています。2)

ちなみに、健康診断や人間ドックの検査項目にもある腫瘍マーカー検査では、集合管がんの発見は難しいとされています。

集合管がんの治療方法

集合管がんと診断された場合、医師との話し合いの末に、主に外科療法で治療を進めていきます。

外科療法としては、がんになっている部分と腎臓の一部を切除する「腎部分切除術」と、周囲の脂肪組織も含めがんを取り除く「根治的腎摘除術」という2通りの方法があるのです。まだがんが小さい状態であれば、腎部分切除術を用いることも増えています。

また、根治的腎摘除術では、近年は腹部に小さい穴をあけて施術する「腹腔鏡手術」が行なわれる場合も多いのです。腹腔鏡手術は術後の痛みが腹部を大きく切開する手術よりも少なく、腸管と周囲組織が癒着しにくいというメリットもあります。

このような外科療法での治療が困難な場合には、「薬物療法」で治療を進めていきます。その他、全身の状態が芳しくない患者さまや、腎機能が低下している患者さまの場合は、がん細胞を冷却して死滅・破壊する「凍結療法」を行なうケースもあります。

集合管がんを疑う際には早めに泌尿器科の受診を

集合管がんは、初期段階では無症状の場合がほとんどのため、上述した症状が現れた時点ではすでにがんが進行していると考えられます。また、集合管がんは、血管を通って心臓・肺・リンパ節・骨・肝臓など他の箇所に転移しやすいという特徴もあります。

さらに、集合管がんは抗がん剤が効きにくいともいわれているため、疑わしい症状がある場合は、早急に泌尿器科を受診しましょう。

まとめ

集合管がんは腎細胞がんの一種で、女性よりも男性が発症しやすいといわれています。初期段階では目立った症状が現れず、早期発見が難しいこともこの病気の特徴です。血尿などの症状が現れたときには、すでにがんが進行していることが予想され、さらに予後が悪い病気としても知られているのです。

体の他の箇所へ転移する確率も高いことから、疑わしい症状があれば早めに泌尿器科を受診し、治療を開始することが大切です。治療方法は主に外科療法が選択されます。

参考文献

1)佐藤 勝明, 上見 嘉子, 西田 靖昌, 谷本 一夫, 上田 善道, 勝田 省吾:自然尿に出現した集合管癌 (Bellini管癌) の1例. 日本臨床細胞学会雑誌. 2006 年 45 巻 3 号 p. 194-198.

2)Murphy, W. M., Grignon, D. J., Perlman, E. J. Tumors of the kidney, bladder, and related urinary structures. Atlas of tumor pathology, 4th series. Washington DC: Armed Forces Institute of Pathology, 2004: 136-140.