紡錘細胞がんとは
紡錘細胞がんは、2021年のWHO(世界保健機関)の肺癌組織分類において、
肉腫様癌の中で紡錘形の腫瘍細胞のみで構成されるものと定義されています。(1)
紡錘細胞がんとは、扁平上皮癌の組織像と紡錘形細胞の肉腫様増殖という、2つの形態を合わせた悪性腫瘍のがんのことです。発症するのは珍しい腫瘍とされており、扁平上皮癌の一種として分類されています。
発症する危険因子としては、喫煙や飲酒のほか、放射線の照射が関連しているのではないかと考えられています。
発症する部位
紡錘細胞がんそのものは発症するケースの少ない腫瘍ですが、比較的好発しやすい部位は次のとおりです。
- 舌
- 歯肉
- 口唇
- 咽頭部
また、この他に胃や脳で発症したというケースもあります。
さらに、腺癌に混在している場合は、肺や上気道、食道、乳腺、胆嚢や膀胱でも発症することがあります。
乳腺に形成される紡錘細胞癌は特殊型の間葉系分化を伴う化生癌のひとつに分類されており、線維腫症様化生癌を含み、予後不良とされる紡錘細胞癌の中でも線維腫症様癌はリンパ節転移や遠隔転移は少なく比較的予後良好と認識されています。(2)
紡錘細胞がんの症状
口腔内で紡錘細胞がんを発症した場合、腫瘍が形成されます。この腫瘍は急速に大きくなる傾向があり、さらに強い痛みを伴うようになります。
自身で症状として認識するのは、腫瘍ができることによる顔の変形です。
顎が腫れることによって口が開きにくくなることがあり、異常に気づきやすくなります。また、肺で発症した場合は息切れや喀痰などの症状が見受けられるようになります。
この他、胃紡錘細胞がんは発症によって側腹部の痛み、膀胱に形成された紡錘細胞がんは血尿などが起きるという特徴があります。
紡錘細胞がんの検査方法・治療方法
ここからは紡錘細胞がんの検査方法・治療方法について解説していきます。
紡錘細胞がんの検査方法
紡錘細胞がんの検査は、症状の有無などに応じて行われます。
触診の他、CTやMRI、それに超音波検査などによって腫瘍の有無や広がり具合などを確認します。
腫瘍が紡錘細胞がんであるかどうか確定するためには「生検検査」が必要です。患部の一部を採取し、顕微鏡で観察しがんかどうか診断します。
紡錘細胞がんの治療方法
紡錘細胞がんは、進行が早いという特徴があります。そのため、早期発見しすぐに治療をすることが望まれます。
治療方法としては、一般的にはがんをすべて取り除いて転移などしないようにする「根治的治療」が行われます。
がんを切除する場合は、腫瘍から5mm~3cmくらいの健常な皮膚も含めて取り除きます。もし欠損する部分が大きい場合は、皮弁の利用もしくは遊離植皮術によって再生させることもあります。
肺にできた紡錘細胞がんの場合は、がんが含まれている肺葉を切除する「肺葉切除術」が一般的に行われます。
また、がんの進行を抑える方法としては、放射線治療と化学療法が行われることもあります。
紡錘細胞がんを疑ったら早期受診がおすすめ
紡錘細胞がんは早期発見が望まれる病気ですが、初期症状が自覚しにくいという特徴があります。腫瘍に伴って痛みといった症状が現れたら、その時点でがんが進行していると考えられます。
紡錘細胞がんは予後が良くない悪性腫瘍といわれており、進行してからとなると治療後の経過が悪いこともあります。また、他の部位に転移するリスクが高いという特徴もあります。外科的切除後をしたとしても、早期に再発し死亡するケースも見られます。完治が難しいというのもこのがんの性質といえるでしょう。
生存率を高めるためには、やはり早期発見・早期治療が基本となります。気になる箇所があれば早期に病名を特定し、そのときに適した治療方法を受けることが大切です。紡錘細胞がんが疑われたら、なるべく早く受診しましょう。
まとめ
紡錘細胞がんは腫瘍の中では珍しいものとされ、扁平上皮癌の一種として分類されているがんです。比較的好発しやすい部位として舌や歯肉、口唇、咽頭などがあり、腫瘍は急速に大きくなって強い痛みを伴うこともあります。
治療では基本的に患部をすべて取り除くための手術を行いますが、予後不良のがんとされており、転移もしやすいとされています。
初期症状に乏しい病気ですが、腫瘍ができると顎が腫れたり口が開きにくくなることがあります。
また、肺にできれば息切れや喀痰、胃にできれば側腹部の痛み、膀胱に形成された紡錘細胞がんは血尿などが起きるため、ちょっとした異常に気づいたらすぐに病院で診断を受けましょう。
参考文献
(1)Rossi G, Boland JM, Pelosi G, Roden AC. Pleomorphic carcinoma. In : WHO classification of tumours editorial board. Thoracic Tumours. WHO Classification of Tumours. Volume 5. 5th Edition. Lyon: IARC; 2021: 103-5.
(2)林 直樹, 吉中 平次, 野元 優貴, 江口 裕可, 末吉 和宣, 新田 吉陽, 大塚 隆生:乳腺過誤腫に発生した紡錘細胞癌の1例. 日本臨床外科学会雑誌. 2022 年 83 巻 3 号 p. 479-484