脳動脈瘤の特徴と原因

普通の血管と脳動脈瘤の血管

脳動脈瘤はどんな特徴があり、どのような原因で引き起こされる病気なのか。

脳動脈瘤とは?

脳卒中は大きく分けて3種類ありますが、ひとつがくも膜下出血で、脳動脈瘤の破裂によるものです。

脳に血液を送り出す動脈の血管に壁が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態を脳動脈瘤といいます。 人口の3%は脳動脈瘤があるといわれており、瘤が破裂して出血することを「くも膜下出血」といいます。

くも膜下出血の「くも膜」とは、脳を包んでいる膜の内のひとつです。
くも膜の内側には脳へ栄養を送る動脈が張り巡らされており、動脈の一部が切れてしまうとくも膜下出血になります。

破れてしまった脳動脈瘤は「破裂脳動脈瘤」、破れていない脳動脈瘤は「未破裂脳動脈瘤」。
未破裂脳動脈瘤は、瘤ができているだけで症状が何もないという方もいますが、まれに瘤が神経を圧迫して脳神経麻痺を起こすこともあります。

脳動脈瘤の特徴

脳動脈瘤は瘤ができているだけで、自覚症状がないことがほとんどです。

頭痛のような痛みや違和感が出ないので、脳動脈瘤があることに気づくのが難しいでしょう。
そのため、脳ドックを受けるなど別の病気の検査をして、偶然見つかって指摘されることが多いです。

また、脳動脈瘤が破裂したからといってすぐに倒れてしまうケースばかりではありません。
脳動脈瘤からの出血が少量であったり、すぐに止血した場合は物が二重に見える複視や頭痛の症状が出ることがあります。
この場合、脳動脈瘤は繰り返し破裂し、最終的に大きく破裂して、くも膜下出血を起こせば、最悪死亡、なんとか生き延びても麻痺など重大な後遺症が残るかもしれません。

くも膜下出血の原因については、発症した方のおよそ80~90%が脳動脈瘤の破裂だとされています。

脳動脈瘤が破裂し、くも膜下出血が起きると、約半数が死亡に至るという報告があります。死亡しなかった場合でも昏睡状態になるなど植物状態となって社会復帰が困難になることもある、恐ろしい病気です。

脳動脈瘤の多くは、太い脳動脈に発症します。
発生部位としては、中大脳動脈、内頚動脈、前交通動脈、脳底動脈などです。

動脈はあらゆる方向へ枝分かれしていますが、その枝分かれ部分によく発症するとされており、瘤の大きさは2ミリくらいの小さいものもあれば、膨らんで2センチ以上に大きくなるものもあります。

脳動脈瘤の原因

血管の一部が風船のように膨らんでしまう原因は、血管の壁が薄くて伸びるからです。

壁の薄いところに血流の圧力がかかると膨らみやすく、脳動脈瘤ができてしまいます(血管の壁は生まれつき薄いという先天的なケースもあります)。

また、高血圧や喫煙、大量の飲酒、動脈硬化、それに加齢といった後天的な要因も脳動脈瘤の発症に関連するのではないかと考えられています。

脳動脈瘤と歯周病の関係性

歯を気にする女性

脳動脈瘤とお口の中の環境はどのように関係しているのでしょうか。

歯周病や虫歯を治療せずに過ごしていると、歯茎にできた傷などから歯周病菌が入り込み、血管の中を巡ることがあります。

血流に乗った細菌が脳に流れ込むと、細菌が原因で脳動脈瘤を作られる可能性があると報告されているのです。

細菌性脳動脈瘤は脳内の細い血管にできやすく、瘤が破裂しやすいという特徴があります。脳動脈瘤破裂例血管壁を調べると、58%に歯周病菌のDNAが存在したという報告もあります。

脳動脈瘤の予防法

ドミノが倒れるのを予防する人形

脳動脈瘤を予防するにはどんな方法があるのか、3つの予防法をご紹介します。

生活習慣の見直し

脳動脈瘤は自覚症状が少ないため、瘤ができにくくするために生活習慣の見直しから始めてみましょう。

まず、脳動脈瘤の発生に関連があるとされる、多量の飲酒、喫煙、高血圧になりやすい食事などの生活習慣の改善をおすすめします。
飲酒・喫煙は必要に応じて専門家の力を借りることも効果的です。

すでに未破裂脳動脈瘤が見つかっている場合も同様の改善を行います。破裂する前の脳動脈瘤が見つかったとしても、すぐに治療できるとは限りません。

治療することで瘤が破裂し死亡するリスクがあるため、瘤が見つかってもすぐに手術をしないと判断されることもあるのです。
その場合は経過観察となり、その間に正しい生活習慣を心がけて血圧の上昇などによる血管への負担をできる限り減らすことが大切です。

脳ドックを受ける

脳動脈瘤を発見するには、MRIなどの脳の検査が必要です。

一般的な健康診断では脳の検査は行われていません。
保険では受けられませんが、定期的に脳のMRIを撮影することで、脳動脈瘤など血管の異変を早期発見できるかもしれません。定期健診のオプション検査で受けられることも多いので受けたことがない、心配であれば受けてみましょう。

歯周病の予防

歯周病も脳動脈瘤の発症と関連しているため、歯周病予防も脳動脈瘤の発生、または破裂を防ぐのにつながる可能性があります。

歯周病を防ぐには、まず日々の歯磨きの質を高めることが大切です。
歯科医院などでブラッシング指導を受け、正しい歯磨きを行うように心がけましょう。

自分自身は磨けている、1日3回磨いているという方も、実は正しい歯磨きができていないかもしれません。

歯周病の予防になる歯磨きは、結構難しいものなのです。

磨けていると思っている方でも、磨き残しをチェックするテストをしてみると磨き残しが多く残っているケースもよくありますよ。

歯の表面はもちろん、歯と歯茎の隙間の汚れや歯と歯の間の汚れを取り除く必要があるほか、歯磨きではとれない歯石の除去も必要です。

歯科医院で定期的なクリーニングを受けるほか、歯科医師や歯科衛生士に歯磨きの指導を受けてみてくださいね!

まとめ

脳動脈瘤が発症しても普段は無症状ですが、もし破裂してしまうと、くも膜下出血を起こして約半数は死亡する疾患です。

また、死亡に至らなかったとしても昏睡状態や重い後遺症が残る可能性があるのです。
脳動脈瘤は先天的な要因でできることがあるものの、乱れた生活習慣で起こることがあるので、生活習慣の改善や歯周病の治療で予防できる可能性もあります。

脳ドックや歯科を定期的に受けるなどして、まずは身近なところから、くも膜下出血発症の予防を意識してみてはいかがでしょうか。