エナメル上皮腫とは?
エナメル上皮腫とは、エナメル器と呼ばれる歯のエナメル質を作る組織が腫瘍化したものです。
レントゲンを撮影すると顎骨に多泡状の透過像が見られるなど特徴的な所見が見られます。
多くは下顎後方(臼歯部)に発症します。エナメル上皮腫自体は基本的に良性ではありますがまれに悪性のものもあります。
エナメル上皮腫が大きくなりすぎると顔の形が変形することもあります。
歯原性腫瘍の一つである
エナメル上皮腫は歯の組織に由来する良性腫瘍ですが、その腫瘍を歯原性腫瘍と言います。
エナメル上皮腫はもっとも発生頻度が高い歯原性腫瘍です。広範囲に腫瘍が拡がって顎骨を吸収する特徴があります。
エナメル上皮腫は切除することが一般的ですが、取り除いても再発する可能性がありますので腫瘍周囲の顎骨も除去します。
10代〜20代の若年層に多い
歯原性腫瘍の中でもっとも発生頻度が高いエナメル上皮腫は、100万人あたり約0.5人が診断される症状です。
年齢別では10~20代に多く見られ、性別では男性がやや多い傾向です。
70代以降は発症数が少ないため、主に若年層が気をつけるべき症状であることがわかります。
エナメル上皮腫の主な症状
顎が膨らむ
エナメル上皮腫は顎骨にできる腫瘍です。
痛みがないものの顎の骨が少しずつ膨張するため、顔が変形したように見えることで初めて自覚するケースもあります。
エナメル上皮腫が顎骨を吸収して大きくなると顎がペコペコした感じ(羊皮紙様感)がすることもあります。
歯が移動する
通常、エナメル上皮腫が発症しても痛みを感じることはありません。
しかし、顎の骨が徐々に膨らみ歯が移動することがあります。
自覚症状に乏しくても、歯科検診などでレントゲン撮影をした際にたまたま発見されるケースもあります。
痛みがない
エナメル上皮腫はほとんどの場合痛みをともなわないため、顎の膨らみや歯の移動以外の自覚症状がほとんどありません。
そのため気づかないまま腫瘍がどんどん大きくなり、歯科検診などで発見したときにはすでに症状が進行していることも多いです。
顎の膨らみや歯の位置が変わってきていることなどによって判明することがあっても、その前の段階で発見することは難しいでしょう。
定期的に歯科でレントゲンを撮影することで、早期に発見することが理想的だといえます。
エナメル上皮腫の治療法
エナメル上皮腫の治療法は、基本的には手術によって腫瘍を切除するものになります。
治療法は「顎骨切除」と「顎骨保存療法」の2つに大別されます。
どちらの手術方法を選択するかは、患者さんの年齢や腫瘍の見られる部位、大きさなどから医師が総合的に判断します。
顎骨切除
顎骨切除は、再発を防ぐために腫瘍周囲の顎骨とともに腫瘍を切除する手術方法です。
腫瘍が広範囲に広がって進行している場合に適用されます。
健康な組織も一緒に切除することになりますが、根治(病気を完全に治すこと)を重視した治療方法となるので再発しにくくなります。
ただし、ほかの部位から骨を移植して顎骨を再建し、機能性を改善させなければなりません。
顎骨保存療法
顎骨保存療法は、顎骨を削り穴を開けてエナメル上皮腫の内圧を減らし縮小させ、小さくなったら腫瘍を取り除く手術方法です。
患者さんにとっても手術の負担を軽減できます。
エナメル上皮腫は予防できる?
エナメル上皮腫の発症を予防する方法は、現在のところ無いのが現状です。
もし発症した場合は腫瘍そのものが小さいうちにできる限り早く発見して治療することが大切です。
そのためにも、定期的に歯科健診を受け、早期発見につなげるようにしましょう。
エナメル上皮腫を発症した場合、腫瘍を完全に摘出し、周囲の顎の骨も削除することで再発の可能性をなるべく低くすることが一般的です。
まとめ
エナメル上皮腫は良性であるものの、大きくなると顔の形が変形するケースもあります。
とくに10~20代に多く、男性に多いです。顎が膨れたり歯が移動したように感じたりする場合、歯科医院で相談してみてください。
現在のところ発症を予防する方法はありませんが、腫瘍が小さいうちに発見できれば手術による負担を抑えることにもつながります。
定期的に歯科医院で検診を受け、早期発見・早期治療につなげましょう。