咽頭がんの初期症状とセルフチェック

がんは進行すればするほど完治が難しくなる病気であり、早期発見・治療が非常に重要になってきます。もちろん、咽頭がんも例外ではありません。

咽頭がんの症状に早めに気づくために、どんな初期症状があるのでしょうか。
自分で気が付くために、セルフチェックの方法について知っておきましょう。

咽頭がんとは

咽頭にできるがんを「咽頭がん」といいます。咽頭とは、一般的に「のど」と呼ばれている部位で、鼻の奥から管状になっている食道あたりまでのことです。

咽頭は喉に近い部分から「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つのエリアに分類され、「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」とできるエリアでがんも区別されます。がんのできる場所により初期症状が異なるのです。
また、咽頭がんと似た症状が現れる「喉頭(こうとう)がん」というものもあります。喉頭は咽頭よりも肺に通ずる気管の近くに位置し、声帯がある場所の付近を指します。

咽頭がんは主に男性がなりやすく、50代以上に発症するケースが多いとされます。咽頭には発声や嚥下・呼吸といった生活において大事な機能を担う神経が通っているため、咽頭がんによるがんの除去によって日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

咽頭がんの初期症状

咽頭がんにかかると、声がかすれてなかなか治らないという人が多いです。声のかすれは比較的気づきやすい初期症状であるため、早期発見につながるといえます。

また、中咽頭がんや下咽頭がんになると飲み込みにくさやのどの違和感などの症状が見られますが、声のかすれに比べると気づきにくい症状です。さらに進行すると、出血や首の腫れといった症状が出ることも。

一方、上咽頭がんでは、鼻閉や耳閉感、難聴、目がかすむなど鼻や耳、目に関連する症状や違和感がみられ、症状が現れると既にがんが進行しているケースが多いといわれています。

このように、同じ咽頭がんでも、がんのできた部位によって初期症状が異なります。

咽頭がんのセルフチェック方法

咽頭がんを早期発見するためには、セルフチェックの方法を知っておくことが大切です。
次のような症状が見られた場合は、咽頭がんの可能性があります。

・首にしこりがある
・声がかすれてなかなか改善しない
・耳が聞こえにくい
・片方の耳が詰まっている気がする
・食べ物を飲み込みにくい
・食べ物を飲み込むと痛む
・鼻血が出たり、鼻詰まりを感じる
・口を開けにくく感じる
・片方の扁桃腺が腫れている
・首にしこりができて大きくなっている
・目がかすむ

上記のチェック項目に少しでも思い当たる節があり改善が認められない場合、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。


咽頭がんの原因

咽頭がんにかかりやすいのは女性よりも男性だといわれていますが、性別や年齢以外にも咽頭がんになりやすくなる要因はいくつか存在します。

咽頭がん発症のリスクが高まる原因を3つ見ていきましょう。

喫煙

咽頭がんが女性に比べて男性に発症しやすいと考えられるのは、男性の方が喫煙(または飲酒)をしている割合が高く、喫煙の量も多いことが理由として考えられます(中咽頭がん・下咽頭がんの発症は喫煙や飲酒との関連性が強いと指摘されています)。

がん対策研究所の調査によると、喫煙者は非喫煙者に比べて男性で2.4倍、女性では2.5倍も咽頭がんを発症しやすいことが分かっています。

つまり、咽頭がんは禁煙をすれば発症を抑えられる可能性が高いです。

飲酒

喫煙と同様に、飲酒の習慣も咽頭がんの発症リスクを高めます。

がん対策研究所の調査によると、週に1回以上飲酒する男性はそうでない男性に比べて咽頭がんにかかるリスクが1.8倍も増加することがわかりました。
女性の場合でも、週にアルコール150mミリリットル以上を飲酒する女性は、お酒を飲まない女性に比べて咽頭がんにかかるリスクが5.9倍にもなるという統計が見られています。

これらの研究からもわかるように、飲酒と喫煙を習慣にしている人は咽喉がん発症リスクが高くなるといえるのです。
また、お酒を飲むと顔が赤くなってしまう「フラッシャー」と呼ばれる体質の方が長期的に多量のお酒を飲み続けていると、咽頭がん発症リスクがより高まる可能性があるので注意が必要です。

EBウイルス

咽頭がんのリスクを高める原因は主に喫煙や飲酒であるとされてきましたが、ウイルスを原因とした発症も増えてきているといわれています。

上咽頭がんはEBウイルス感染により発症するとされていますが、EBウイルス感染による上咽頭がんを発症しても、人から人へは感染しないのが特徴です(EBウイルスはキスなどの唾液を介して感染することが多く、風邪のような症状を引き起こす伝染性単核球症を引き起こします。完治した後、ウイルスは潜伏感染して人間の身体に一生涯潜伏します)。
中咽頭がんの一部は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が発症に関与しているといわれています(ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの原因にもなるウイルスで、若い女性にも多く見られるとされています。)EBウイルスとは異なり性行為などで人から人へ感染します)。


咽頭がんの治療方法

ここまで咽頭がんの症状や原因について解説してきましたが、実際咽頭がんにかかってしまった場合はどのような治療が行われるのでしょうか。

咽頭がんの治療方法を、発症の部位ごとに詳しく紹介していきます。

上咽頭がんの場合

上咽頭がんの疑いがある場合は、「ファイバースコープ」と呼ばれる内視鏡で腫瘍を確認します。さらに、周囲の組織にがん細胞が拡がっている可能性も考慮し、転移がないか確認をするためにCTやMRIなどの画像検査も実施されるのです。

上咽頭がんは放射線による治療が効果的であり、多くのケースで放射線治療や抗がん剤の治療が行われます。

中咽頭がんの場合

上咽頭がんと同じように、周囲の組織に転移がないか確認するためにファイバースコープを使って腫瘍と疑われる組織を採取して病理組織検査を行う以外に、CTやMRIなどの検査も実施して、診断されます。

中咽頭がんと確定診断された場合、早期発見であれば摘出手術と放射線治療の併用が行われます。腫瘍が小さければ口の中から腫瘍を切除することができるため、比較的短時間で心身の負担も少なく治療することができます。
また、腫瘍を縮小させるために化学療法と放射線療法を組み合わせることも多いです。腫瘍が残れば腫瘍やリンパ節などの周囲の組織を切除して経過観察することが一般的です。

中咽頭は飲み込む機能に大きく影響する部位です。治療方法の種類にかかわらず、治療後に嚥下障害が出る可能性が高くなることを理解したうえで治療を受けることが大切です。

下咽頭がんの場合

下咽頭は物を飲み込むとき以外閉鎖していて目では見えない場所であるため、内視鏡を使って病変有無を調べます。腫瘍組織が見つかった場合病理組織検査をするほか、CTやMRIで転移の有無をチェックします。

もし下咽頭がんだと判明した場合は、早期発見であれば切除により腫瘍を除去します。
腫瘍が広範囲に見られる場合は化学療法や放射線治療を行い腫瘍の縮小を図り、その後に切除をするなどのケースがあるということも知っておくとよいでしょう。

まとめ

咽頭がんの初期症状の多くは気付きやすいものが多いので、にくいですセルフチェックで注目すべき項目に当てはまるものが複数あり改善しないのであれば、早めに耳鼻咽喉科で相談を受けましょう。

検査の種類は主に内視鏡、病理組織検査、CT・MRI撮影などです。
もし、咽頭がんだと判明したら、進行度合いによって腫瘍を除去する手術以外に化学療法や放射線治療なども行われます。ただし咽頭は嚥下機能や発音などに影響が出やすい箇所であるため、どのような治療であっても生活になんらかの支障が出る可能性があることは理解しておきましょう。

咽頭がんは、飲酒・喫煙を止めることによって発症リスクをおさえることができるといわれています。
もし、喫煙や飲酒の頻度が多いと感じている方は、完全に止められなくても減らしていくような意識はしてみても良いでしょう。