味覚障害の症状
味には塩味・酸味・甘味・苦味・うま味の5種類があり、舌や軟口蓋(上あごの奥にある柔らかい部分)にある「味蕾」という器官が味覚を感じ取ります。
味蕾で味を感じる仕組みが何らかの原因でうまく働かなくなることで味覚障害が起こってしまうことがあります。
具体的な味覚障害の症状として以下があります。
味がしない
味覚障害が起こると、「何を食べても全く味がしない」という症状が現れる場合があります。
また、甘味だけ分からなくなるなど特定の味が認識できなくなるケースや、舌の左か右の片側でしか味がしなくなるといったことも起こりうるのです。
味が変になった
何かを食べたとき、本来の味覚と違う味覚を感じることがあります。
甘いはずのチョコレートを食べているのに苦く感じたり、塩味のものを酸っぱく感じたりすることも。
口の中に塩味や苦みを感じる
何も食べていないのにもかかわらず、口の中に塩味や苦味を感じることがあります。
味が薄く感じる
以前に比べて食べ物の味が薄く感じたり、同じものを食べても美味しく感じなくなったりします。
味が濃く感じる
本来薄い味の食べ物を食べているのに、以前よりも濃い味に感じられることも。
味がなくなったり薄くなったりする症状とは逆のため自覚しにくく、注意が必要です。
ステロイドで味覚障害になる⁉
ステロイドを摂取していると、「薬剤性味覚障害」を引き起こす可能性があります。
薬剤性味覚障害は、ステロイドのような味覚障害の原因となり得る薬剤を服用して2~6週間以内に発生することが多いです。
たとえ薬剤の服用を止めたとしても、そこから長期にわたって味覚障害が続くケースもあります。
複数の薬剤が長期間にわたって処方されている高齢者に多く見られる症状でもあり、ステロイド以外の薬に対しても味覚障害が副作用として報告されているのであれば注意が必要です。
治療の際にステロイドが用いられるケースが多い薬剤としては、抗うつ剤や抗アレルギー剤などが挙げられます。筋力増強以外の用途においてもステロイドが使われている可能性があることを覚えておきましょう。
ステロイドによる味覚障害を治す方法
味覚障害の原因がステロイドである場合は、担当の医師と相談しながら、摂取するステロイドの量を減らしたり服用する薬を変更したりするといった対処法をとっていきます。場合によっては薬の服用を中止することも。
患者さん自身の判断で行うのは危険なので、必ず担当の医師と相談しながら対処していくようにしましょう。
亜鉛で味蕾を修復!
舌の表面に存在する「味蕾」という器官には、「味細胞」という味覚を脳に伝える細胞があります。
味細胞は新陳代謝が活発で、およそ1カ月ごとに新しく生まれ変わります。
味細胞の再生には亜鉛が必須となるため、亜鉛不足が味覚障害の直接の原因となることもあります。
亜鉛は体内で合成したり、蓄えたりすることができません。
そのため亜鉛の欠乏が原因で味覚障害に陥った場合は、食べ物などから亜鉛を摂取する必要があります。
また、ステロイドなどの薬剤が原因の味覚障害であっても、亜鉛を摂取することで味細胞の再生が促進されて味覚症状の改善が見込める可能性があります。
牡蠣や豚レバー・牛肉・鶏肉といった亜鉛含有量が多い食品を意識的に多く取り入れる方法のほか、亜鉛製剤と呼ばれる薬を摂取することで直接亜鉛を補充するといった方法があります。
そのほか味覚障害になる原因
薬剤性味覚障害や亜鉛不足のほかにも、以下のような原因で味覚障害が引き起こされることがあります。
・加齢・老化による味蕾の機能低下
・アレルギー性鼻炎などの鼻疾患
・糖尿病や消化器の病気に伴う合併症
・ストレスによる心因性の味覚障害
・新型コロナウイルス感染
味覚障害に陥る要因はさまざまであり、対処法も原因によって異なります。
それだけに、どのケースに該当するのかを正しく把握することが重要です。
味覚障害かも?と思ったら
味覚障害の改善には3ヶ月から長くて6カ月かかることもあるので、早めに治療を開始することが重要です。
ただし薬を服用していないのに味覚障害の症状が出ている場合は、新型コロナウイルスへの感染が原因となっている可能性もあります。
感染拡大を防ぐためにも、病院にかかる前に味覚障害が発生していることを伝え、専門家の指示を仰いでから病院に行くとよいでしょう。
味覚障害になった時点で何かしらの薬を服用している場合、薬が味覚障害の直接的な原因であるかどうか分かりませんので、患者さんが自己判断で薬の服用を中止するのは危険です。
薬が処方された病院に連絡し、担当医の指示を仰ぐようにしましょう。
まとめ
味覚障害は新型コロナウイルスの一症状であることもありますが、発症原因は多岐にわたります。
ステロイドなどの薬剤の服用が原因となっている可能性もありますが、ステロイドを意識的に摂取している場合でない限り、服用している薬が原因かどうかは患者さんの側では判断しにくい部分があります。
味覚障害の自覚症状が出た場合、まず原因を特定する必要があります。
日常的に薬を服用している場合は自分だけの判断で服用をやめたりせず、早めに担当医や専門医の診断を受けたうえで正しい対処法を取っていきましょう。