脳腫瘍とは
脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。
脳腫瘍が大きくなると、脳浮腫(のうふしゅ)と呼ばれるむくみが生じ、脳機能に支障をきたすようになります。
また脳腫瘍は、脳の細胞・脳を包む膜・脳神経などから生じた「原発性脳腫瘍」と、肺がん・乳がん・大腸がんが転移して生じた「転移性脳腫瘍」の2種類に分けられます。
例えば、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、髄芽腫、胚細胞腫瘍なども主要な脳腫瘍の範疇であると考えられています1)。
原発性脳腫瘍は、主に脳や髄膜、中枢脳神経、下垂体、血管などの脳組織から発生する脳腫瘍であり、現在では約150種類以上に分類されることが知られています。
脳腫瘍の症状
脳腫瘍が生じた場合、次のような症状が見られます。
・頭痛
・吐き気
・意識障害
さらに、脳腫瘍が生じた部位によって下記のような症状も現れます。
・前頭葉…失語(言葉が出てこない)・性格変化・認知機能低下・集中力低下など
・側頭葉…視覚障害・幻臭(存在しない臭いを感じる)・言語理解力低下など
・頭頂葉…失算(計算ができない)・左右失認(左右がわからない)・半側空間失認(左右片方の空間を認識できない)など
・後頭葉…同名半盲(腫瘍がない片側の視野が欠ける)など
・視交叉…視覚障害・尿崩症(尿の濃度や量が調節できない)など
・視床…意識障害・運動麻痺・感覚異常など
・脳幹…複視(二重に見える)・運動麻痺・感覚障害など
・小脳…ふらつき・めまいなど
・脳神経…顔のしびれ・感覚麻痺・聴力低下など
脳腫瘍の原因は?
脳腫瘍の原因は遺伝子の変異とされていますが、一方で次のような人に脳腫瘍が生じやすいともいわれています。
・高脂質や高タンパク質の食事を好む人
・過度なストレスを抱えている人
・喫煙者
また、家族に脳腫瘍の既往歴がある場合や本人に悪性腫瘍の既往歴がある場合も、脳腫瘍が発生しやすいとされています。
虫歯の放置が脳腫瘍を引き起こす!?
一見関係がないように思えますが、虫歯の放置が脳腫瘍を引き起こすという研究がされてています。
放置された虫歯があると、お口の中にちょっとした傷や虫歯の進行による炎症等から血管へと虫歯菌やお口の中の菌が入り込んでしまい、そのまま血液に乗って脳に運ばれることがあります。
すると、脳内に膿が溜まってしまい、脳腫瘍が生じるといったリスクになると考えられています。
虫歯を放置している場合は早めに治療を行うようにしましょう。
脳腫瘍の検査方法・治療方法
続いて、脳腫瘍と疑われる場合の検査方法と、診断後の治療方法について解説します。
脳腫瘍の検査方法
脳腫瘍は次の方法で検査を行います。
・問診
・神経学的検査
・頭部CTやMRI
・病理検査
神経学的検査では、片足立ちができるか、話すことができるか、視力や視野に問題がないか、といったことを調べます。
そして、診断の確定に不可欠なのが病理検査です。脳腫瘍の組織を採取して、病気を詳しく調べます。
基本的に脳腫瘍の摘出手術と同時に行われるため、脳腫瘍を取り除いた後に良性か悪性かなどがわかります。
悪性の場合は、さらに化学療法や放射線療法を追加して行ったり、転移や再発がないかの定期検診の期間を短めに設定するなど手術後の治療の方針を決めるのに役立ちます。
脳腫瘍の治療方法
脳腫瘍は、脳の細胞・脳を包む膜・脳神経などから生じた「原発性脳腫瘍」と、肺がん・乳がん・大腸がんが転移して生じた「転移性脳腫瘍」の2種類に分けられます。
脳腫瘍の種類によって治療方法も変わるのです。
まず、原発性脳腫瘍の場合は、次の方法から必要なものを組み合わせて治療を行います。
・外科的手術
・放射線治療
・化学療法
・薬物療法
一方で転移性脳腫瘍は、腫瘍が巨大化していたり、取り除きやすい部位に発生していたりする場合には手術で摘出します。
腫瘍が小さい場合には、あらゆる方向から放射線を照射する「定位的放射線治療(別名:サイバーナイフ)」が行なわれます。
サイバーナイフというのは、高精度に構成されたロボットアームに放射線照射装置を組み合わせた最新鋭の定位放射線治療装置のことを指しています2)。
サイバーナイフのメリットは、何と言っても身体を直接切らずに痛みを自覚せずにがん患者さんが負担少なく治療できる点です。
サイバーナイフが適応できる対象疾患としては、脳腫瘍を含めた頭蓋内病変、肺がん、原発性肝がん、前立腺がんなどが代表例として挙げられます。
脳腫瘍では、良性脳腫瘍である聴神経腫瘍や髄膜腫のみならず、原発性悪性神経膠腫や悪性リンパ腫、あるいは転移性脳腫瘍なども治療適応となります。
脳腫瘍を疑う場合は早めに病院の受診を
脳腫瘍は、脳梗塞や脳出血のように突然激しい症状が起きるのではなく、頭痛や吐き気などの症状が表れ、徐々に強く悪化していきます。
これは、脳腫瘍が巨大化するにつれて症状も変化していくためです。
もしも悪性度が高い脳腫瘍が生じていた場合、2週間〜3週間のうちに進行して脳腫瘍が急速に大きくなる恐れがあります。
頭痛や吐き気が続く、なんとなくでも脳腫瘍が疑われる場合は速やかに医療機関を受診して脳腫瘍の検査を受けましょう。
また、脳腫瘍が発生した部位や種類によって異なりますが、5年生存率は約53%です。
早期発見・早期治療ができればできるほど生存率は高くなるので、脳腫瘍が疑われる際には、脳神経外科もしくは神経内科を受診してください。
まとめ
脳腫瘍は遺伝によって発症することもある一方で、生活習慣や食生活が原因となるケースも存在します。
脳腫瘍の種類によっては進行が速いため、頭痛や吐き気が慢性化している場合はなるべく早く脳神経外科もしくは神経内科を受診することをおすすめします。
脳腫瘍は命に関わるほか、治療が成功しても後遺症が残ることも多い疾患です。
これからの生活を今までと変わらず送るためにも、脳腫瘍かも?と思ったら速やかに医療機関を受診する、定期的な脳の検査を受けるなどしてくださいね。
1)永根 基雄:悪性脳腫瘍の診断と治療. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2019 年 56 巻 8 号 p. 602-608.
2)国立がん研究センター中央病院HP