肺扁平上皮がんとは?

「がん」というと悪いもの、命に関わるなどさまざまなイメージがありますよね。
この肺扁平上皮がんとは一体どういう「がん」なのでしょうか

肺扁平上皮がんは発生頻度が高いがん

肺がんには大きく分けて、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」という2つの種類が存在します。

「小細胞肺がん」は「非小細胞肺がん」に比べて進行が速く、転移や再発が起こりやすくなります。
肺がんの約10%は小細胞肺がんであり、進行が早いため手術が可能な段階の早期発見はなかなか難しいといわれています。

小細胞がんは手術が可能な段階での発見が難しいですが、抗がん剤や化学療法、放射線療法の効果が得られやすく、治療は十分に可能です。

それに対して、「非小細胞肺がん」は進行が遅く、転移や再発の可能性が低いがんです。
しかし発生頻度(発症確率)が高く、しつこい咳や息切れが症状としてみられます。

この「非小細胞肺がん」はさらに細かく分類され、そのうちのひとつが肺扁平上皮がんです(そのほか2つは腺がんと大細胞がんです)。

肺扁平上皮がんの特徴

非小細胞肺がんである肺扁平上皮がんは、しつこい咳や血痰、息切れなどの症状が特徴的です。
がんが進行するにつれて症状は強くなり、胸部や背部の痛みが起こるほか、長引く咳によって肋骨が疲労骨折するなどさまざまな症状が起こります。

非小細胞肺がんの中では腺がんが最も発症率が高く、次いで高いのがこの肺扁平上皮がんです。
肺扁平上皮がんは喫煙によりリスクが高まるがんであり、患者さんにも喫煙者が多くなっています。また、喫煙者は女性よりも男性のほうが多いため、肺扁平上皮がんの患者さんは男性が多いです。

肺の入り口付近にあたる「肺門部」の「気管支壁」という場所にがんが発現することが多く、その後は気管支の中へと進行していきます。
進行や転移のスピードはやや遅く、がん細胞の形状は皮膚や食道粘膜の細胞に似ています。

肺の扁平上皮がんは、皮膚や粘膜などを構成する組織である扁平上皮に類似した形状をしているがんのタイプであり、喫煙との関係がとても濃厚とされていて、大部分は肺の入口部に近い肺門部に形成されやすく、その割合は肺がん全体のおよそ30%程度を占めます。


肺扁平上皮がんとタバコの関係

なぜ肺扁平上皮がんは喫煙によりリスクが高まるのでしょうか。
肺扁平上皮がんとタバコ(喫煙)の関係についてみていきましょう。

喫煙者は発症率が高い

肺扁平上皮がんは喫煙によって発症率が高くなるのが特徴です。
タバコには約70種類の発がん物質が含まれており、正常な細胞のがん化を促進してしまいます。

喫煙者と非喫煙者で肺扁平上皮がんになるリスクを比較すると、喫煙する男性は4.4倍、喫煙する女性は2.8倍罹患率が高くなります。
さらに、受動喫煙の曝露を受けた人の肺がんリスクも、およそ1.3倍に増加します。

喫煙期間が長ければ長いほど、喫煙量が多ければ多いほど、肺扁平上皮がんのリスクは高まります。
肺扁平上皮がんの患者には、若いころから喫煙している中高年の男性が多い傾向にありますよ。

ですが、一度喫煙したらずっとリスクが高いというわけではありません。
禁煙することで、ずっと喫煙しているよりもリスクを下げることが可能です。
禁煙を始めた年齢が若ければ若いほど、リスクを低減する効果も大きくなると報告されています。

もう若くないし今さら禁煙しても無駄、ということはありません。
禁煙している期間が長くなればなるほどリスクは下がっていきますよ。

禁煙の治療有効性や経済効率性についてはすでにこれまでの研究から十分な科学的根拠が示されていて、その制度化により中長期的には肺がんの発症予防も含めて医療費削減効果が期待できると言われています1)。

肺扁平上皮がんは生活習慣病

肺扁平上皮がんは喫煙によって引き起こされる病気として関連付けられており、生活習慣病の一種とされています。

喫煙習慣は男性に多く、特にヘビースモーカーは肺扁平上皮がんになりやすい傾向にあります。
実際に、患者数は男性が多く、若いころから長年喫煙していることから中高年の患者数が多くなっています。

また、肺扁平上皮がんは肺の入り口付近にある「肺門部」での発症が多くなっています。
タバコの物質が特に付着しやすいため、肺門部への発症が多いと考えられますね。

ただし、近年では肺門部のみならず、肺の奥側(末梢側)にあたる「肺野部」に肺扁平上皮がんが発症する患者さんも増えています。
肺野部に肺扁平上皮がんが発症する理由として、受動喫煙の影響が考えられます(喫煙歴のない患者さんが多いことも受動喫煙が原因であると考えられる理由のひとつです)。


肺扁平上皮がんの治療方法

肺扁平上皮がんは比較的進行が遅いがんですが、どのような治療が行われるのでしょうか。

一般的に、肺がんに対する治療方法を決定する際には、その組織型やがんの進行度(ステージ)、全身状態、年齢、合併症などを総合的に検討します2)。

早期(1~2期)発見の場合

非小細胞肺がんは、放射線療法や薬物療法の効果が得られにくいという特徴があるため、主な治療方法は手術による治療です。

ただし、何らかの理由で手術を行うことができない場合は、放射線療法や化学療法を行います。
また、肺扁平上皮がんの進行度合いによって、手術後に化学療法や放射線療法などを併用して行うことがあります。

3期以降に発見の場合

3A期の患者さんであれば手術を行うケースはありますが、基本的には症状が3期まで進んだ場合は放射線化学療法で治療を行います。

3Aよりもさらに症状が進行した場合は、薬物療法による対応が中心となってきます。
しかし、ステージ3の中でも後期に当たる3C期の患者さんは、放射線化学療法で根治を目指すことは難しいでしょう。

なので、この段階からは4期に準じた治療を行うことが多くなります。4期においても基本的に手術は行われず、薬物療法が中心です。

緩和ケアの場合

がんと診断されて治療を受けている最中には、心も身体もストレスを感じることが多くなります。

「緩和ケア」とは、そうした心身の負担を和らげ、前向きに治療に取り組んだり、心の豊かな生活を送れるようにするためのケアのことを指します。

緩和ケアという名称の影響もあり、これを「末期患者に対する治療」と捉える人も少なくはありません。
しかし、近年では早い時期から緩和ケアを行うことによって、患者さんおよびその家族の負担を減らすことを試みるケースも増えています。

緩和ケアは、通院して外来で受けるケース、緩和ケア病棟と呼ばれる緩和ケアに特化した病棟に入院するケース、自宅で療養しながら緩和ケアを受けるケースの3つにわけられます。

自宅で緩和ケアを受けることも可能なため、がんとの闘病時には早いうちから緩和ケアを検討しておくといいかもしれません。

緩和ケアは最後の時間を穏やかに過ごすためのものというイメージがあるかもしれませんが、治療期間を穏やかに過ごすためのものでもあるのです。
辛いがん治療の間を少しでも安心して過ごすために、取り入れてみてはいかがでしょうか。

まとめ

肺扁平上皮がんは非小細胞肺がんの一種であり、発症頻度が高いことが特徴の一つです。
また、喫煙によって発症リスクが大きく高まるため、長年タバコを吸っている人の場合は、長引く咳、息切れには注意してください。

肺がんは現在のところ、多くの癌のなかで男性では死亡原因の第1位、女性では第2位であり、その他の癌腫と比較すると、発見が遅れがちで死亡率も高く、早期発見および予防対策が非常に重視されています。

初期段階を早期発見できれば手術による治療が可能です。
しかし、進行してしまうと手術は難しくなり、化学療法や放射線療法など効果が得られにくい治療法を選択しなくてはいけなくなることもあり得ます。

早期発見につなげるためにも、咳が続いたり体の不調が現れだした場合は、早めに医療機関を受診してください。

1) 中村 正和:禁煙治療による肺癌の一次予防―医療や健診(癌検診を含む)の場での禁煙治療の意義と方法―. 肺癌. 2006 年 46 巻 7 号 p. 843-851 
2) がん情報サービスHPより:肺がん