治療時の負担軽減に努めている軟骨腫の概要

軟骨腫とは

腫瘍は全身のさまざまなところに発生します。
腕や脚、胸、腹、背中といったところだけでなく、骨盤や脊椎などにも、がんではない腫瘍はできるものなのです。

例えば、ほくろも腫瘍のひとつです。
基本的には問題のないほくろですが、悪性化するとがんになる可能性があり、医学的には良性腫瘍に分類されているのです
そのほか、ガングリオンや粉瘤、脂肪腫なども良性腫瘍ですね。

軟骨腫も良性腫瘍のひとつです。

骨軟骨腫(外骨腫)や内軟骨腫、類骨骨腫、滑膜軟骨腫症など20種類以上にも分類することができ、最も多いといわれているのは、正常な軟骨のほかに余分な軟骨や骨が形成され、関節の動きを阻害したり痛みや腫れの原因となる外骨腫だといわれています。

特に、滑膜軟骨腫症は関節滑膜組織から軟骨粒が遊離して関節腔内の滑液中で増大する疾患であり、主に膝や肩、股関節や足関節など大関節に好発すると言われてきましたが、近年では顎関節に発生する症例報告も増加傾向にあります1)。

軟骨腫は基本的に良性の腫瘍で、悪性化してがんになるリスクは低いといわれています。
そのため、痛みや腫れがない場合は定期的な経過観察で悪性化していないかのチェックをするのみで、特に治療は行いません。

痛みや腫れ、関節の動きの阻害など日常生活に障害が生じる場合は、手術により切除することが一般的な治療となります。

軟骨腫の原因は?

軟骨腫には骨軟骨腫、内軟骨腫、滑膜軟骨腫症などさまざまな種類がありますが、いずれもはっきりした原因はわかっていません。
遺伝的な要素が関わっているともいわれますが、未だはっきりしていないのが現状です。

原因がわかっていないため、軟骨腫の予防方法もわかっていません。
もし、関節に違和感や痛み、余分なでっぱりなどがある場合は、形成外科や口腔外科など軟骨腫が疑われる箇所に関連する医療機関を受診しましょう。

顎関節症との違いは?

顎関節症は、口を大きく開けられない、口を開けると顎から音がする、痛みがあるなどの症状が起こります。

軟骨腫の種類によっては、顎関節症と似た症状が起こる場合があります。
同じような症状ですが、原因や治療方法については次のような違いがあります。

原因

軟骨腫ができる原因はわかっていませんが、顎関節症は外傷やストレス、周囲の筋肉のアンバランスや頬杖などによる負荷など、さまざまですが原因となる行動や状態が確認されています。

発症する年齢

軟骨腫は10代~40代と幅広い年齢層にみられ、さらに成長期に発症することが多いようです。
一方、顎関節症は20代女性に多くみられています。

悪性化の有無

軟骨腫は基本的に良性の腫瘍ではありますが、まれにがんに発展することもあります。

顎関節症はがんになることはありません。

治療方法

顎関節症の改善方法としては、痛み止めのほかに筋肉の緊張を和らげるボトックスなど原因に応じて対処していきます。
ストレスによる歯ぎしりや食いしばりが強い場合はマウスピースを使用したり、片側食べの癖の改善や頬杖、寝るときの顔の向きの変更などさまざまな対処療法がおこなわれます。

一方、軟骨腫は基本的には治療は行いません。
痛みや違和感、関節の動きの阻害など異常がみられた場合に限り、MRIおよびCT検査で検査をして隆起している腫瘍を切除することがあります。


軟骨腫の治療方法・受診のタイミング

軟骨腫の治療方法

軟骨腫の治療は、基本的には形成外科、歯科口腔外科、整形外科などで行われています。
軟骨腫により日常生活に支障を来すような痛みがある、見た目に気になる、関節が変形する原因となっている、といった場合には腫瘍を切除することも可能です。
軟骨腫があっても気になる症状がなければ、経過観察を行います。

治療の前には、CTやMRIなどによる精密検査で画像判断が必要です。
手術では、関節内の軟骨と骨の骨片(かけら)を摘出します。
再発しやすいですが、がん化するリスクが軽減されるというメリットがあります。

通常、有症状の滑膜性骨軟骨腫症に対する治療方法は、遊離体の摘出と病的滑膜の切除が原則であり、病変が大きく下顎頭内側の病変を摘出する際には下顎頭切除を要するという考え方もあります2)。

受診するタイミング

軟骨腫は、20以上もの種類があります。
それぞれ症状などが異なり受診するタイミングも違ってきますが、早めに治療を始めた方が良いケースもあります。

顎が痛むなどの違和感がある場合は、早めに形成外科、歯科口腔外科、整形外科など専門医療機関を受診しましょう。

軟骨腫かも?病院を選ぶポイント

初診時に時間をかけて診察してくれる

初診時の検査結果やカウンセリングなどで集められた情報は、その後の治療計画や結果にもつながっていきます。

軟骨腫はごくまれではありますが、がんに発展する可能性もあります。
そのため、初診の際にいきなり治療をはじめるようなところは合理的にも見えますが、検査結果やカウンセリングをじっくり分析してから治療をはじめる方が失敗も少なくなります。

軟骨腫は基本的には良性腫瘍のため、一刻を争って治療を始める必要はありません。
しっかり検査を行い、本当に治療が必要なのかどうかなど治療計画を立ててくれる医療機関のほうが安心かもしれませんね。

また、軟骨腫はさまざまな種類があるので、どういった種類なのか、治療は必要なのか、この先治療が必要になるとしたらどのような状態なのかなど詳しく説明してくれるとよいでしょう。

定期的な通院ができる

経過観察となった際に、遠くの医療機関を受診していると負担となり、次第に経過観察に通院しなくなってしまう恐れがあります。

まれに悪性化することがあるため、経過観察は指示されたとおりに通院することがおすすめです。
そのため、最初から定期的な通院が必要になっても通い続けられる医療機関を選んでおきましょう。

また、手術が必要になった場合に手術は大学病院や総合病院で行い、術後の経過観察やリハビリ等は元々通っていた医療機関で行うことを指示されることもあります。

治療時の負担軽減に努めている

軟骨腫の治療では、手術を行い腫瘍を取り除くため身体に負担がかかります。
関節周りにできた軟骨腫では、関節が思うように動かせるまで時間がかかることも考えられます。
こうした負担を軽減できるように努めている専門診療科を選択するのも、ポイントのひとつです。

カウンセリングでは治療方針について聞くだけでなく、手術によって考えられる身体への負担や副作用についても確認し、その後どのようなプロセスで回復していくのかも聞いておきましょう。

また、痛みなど症状がないのに手術を推奨された場合は、なぜ治療が必要なのかをよく確認してください。
多少の悪性化のリスクはありますが、不要な手術は患者さんの負担となります。

まとめ

軟骨腫には顎の関節にできるものもあり、顎関節症と症状が似ていることもあります。
痛みや腫瘍の大きさなどによっては、手術により切除する必要があるので、違和感がある場合は早めに医療機関で相談してくださいね。

ごくまれに悪性化する場合もあるので、初診にしっかり時間をかけて適切な検査をしてくれる医療機関で相談してみましょう。

参考文献
1)儀武 啓幸:<臨床に有用な基礎知識>顎関節の滑膜軟骨腫症への対応. 日本顎関節学会雑誌. 2020 年 32 巻 1 号 p. 3-10
2)中岡 一敏, 齋藤 知之, 山田 秀典, 重松 宏昭, 仲宗根 康成, 石塚 忠利, 江口 貴紀, 濱田 良樹:滑膜性骨軟骨腫症を伴った顎関節ピロリン酸カルシウム結晶沈着症の1例. 日本顎関節学会雑誌. 2019 年 31 巻 3 号 p. 159-163