リンパ管腫の特徴

リンパ管腫はリンパ管奇形とも呼ばれています。

胎生期(妊娠期間・赤ちゃんがお腹の中にいる時期)に赤ちゃんのリンパ管が作られます。
リンパ管が作られる時期に生じるリンパ嚢胞の集まりを主体とした病変のことで、原因はわかっていません。

リンパ管腫は、柔らかくふくらんだしこり(皮下腫瘍)として確認されることがほとんどです。

リンパ管腫はリンパが通っている部位であればどこにでも発生する可能性があります。
リンパの集まる腋にできることが多いですが、そのほか頸部、顔面、心臓や肺の近くにもできることがあります。

リンパ管腫は主に小児(多くは先天性)に発生する大小のリンパ嚢胞を主体とした良性の腫瘍性病変であり、全身の中でも特に頭頚部や縦隔内に好発すると言われています1)。

リンパ管腫は小児にみられるリンパ管疾患としてもっとも一般的なものであり、リンパ液を内包する嚢胞が集まって腫瘤を形成して、整容的、機能的に問題となる良性腫瘍として長らく認識されてきました2)。

リンパは静脈に絡みつくようにして全身に分布するため、身体のどこにでもできる可能性があると考えておきましょう。

リンパ管腫が首にできた場合、気道を圧迫することがあります。
呼吸困難を引き起こす可能性もあるため、首にしこりや腫れのようなふくらみが見られる場合は速やかに医療機関を受診してください。


リンパ管腫の種類

リンパ管腫は構造から「嚢胞性」と「海綿状」の2種類に分けられます。

嚢胞性リンパ管腫は大きな袋のような構造をしており、海綿状リンパ管腫はスポンジのような構造になっています。

2種類に分けられていますが、多くのリンパ管腫は嚢胞性と海綿状の部分が混在しています。
嚢胞性リンパ管腫と海綿状リンパ管腫では治療方法が異なるため、混在している場合はリンパ管腫を詳細に調べ、部位ごとに適した治療を行う必要があります。

リンパ管腫の治療

リンパ管腫の中には、違和感があってもリンパ管腫の症状が認められないものもあります。
このような場合は、定期的に経過観察をしていくだけでも問題ありません。

症状がある場合にはリンパ管腫の分類やできた部位に適した治療を行います。
リンパ管腫は適切な治療を受けることで約80%は消失もしくは縮小しますよ。

硬化療法

主に嚢胞性のリンパ管腫で行われる治療方法です。

薬剤(ピシバニール、ブレオマイシン、高濃度アルコール、高濃度糖水、フィブリン糊など)を嚢胞の中に注入して内側から作用させることで患部が小さくなっていきます。

傷が残りにくい治療方法ですが、薬の反応によって高熱が出たり、一時的に腫れが強くなることがあります。

切除術

主に海綿状や深部のリンパ管腫などに行われる治療方法です。

リンパ管腫を完全に取り除くことで完治させる治療方法ですが、筋肉や血管、神経などにリンパ管腫が入り込んでいる場合は完全に摘出することが難しくなります。
こうしたケースでは部分的な切除となることがあります。

その他

硬化療法や切除術のほか、抗がん剤、インターフェロン療法、ステロイド療法、レーザー焼灼法といった治療方法もあります。


リンパ管腫の合併症

リンパ管腫の合併症として、気道閉塞、嚥下障害、誤嚥性肺炎、発声障害、局所の急性感染、リンパ管腫内出血、腹痛、下痢、嘔吐、腫瘤による四肢・体幹の運動制限といったものが確認されています。

リンパ管腫が首にできると気道を圧迫してしまったり、顔にできた場合には見た目への影響や口回りが動かしにくくなることによる発音障害、咀嚼障害などさまざまな合併症が考えられます。

ふくらみやしこりが確認でき、リンパ管腫であると診断された場合は、できている部位によって考えられる症状や合併症を確認しておきましょう。

リンパ管腫ができることで、生活の機能が制限されるおそれもあります。
重症化や合併症を予防するためにも、子どもに気になるしこりや症状などが見られたら、小児外科や形成外科、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。

まとめ

リンパ管腫は腋の下によくできる病変ですが、全身にできる可能性があります。
お子さんや自身の体のどこかにふくらみやしこりが確認できる場合はリンパ管腫を疑ってみましょう。

症状が特になければ経過観察することもありますが、リンパ管腫を放置すると気道閉塞や嚥下障害などのあらゆる合併症につながるおそれがあります。
重症化や合併症を防ぐためにも、気になる症状がある場合は病院に相談しましょう。

参考文献
1) 難病情報センターHPより:リンパ管腫(平成21年度) DOI h
2)藤野 明浩:小児リンパ管疾患に対する最近の研究. 日本小児放射線学会雑誌. 2021 年 37 巻 2 号 p. 121-126 DOI