声門上部がんの特徴と発生する原因

声門上部がんとは

喉頭(こうとう)がんは、できる場所によって「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3つにわけられます。

喉頭は声門上部、声門部、声門下部の3つの部位に分類されており、喉頭がんの多くは声門部、次いで声門上部に発生して、その組織型はほとんどが扁平上皮癌であると言われています1)。

声門とは声帯がある部位のことで、声門上部がんは声門よりも上の部位で発生したがんのことをいいます。

声門上部がんは男性に発症するケースが多く、飲み物を飲み込んだ際の痛み、かすれ声などが初期症状として表れます。
こうした症状は風邪にも似ているほか、耐えられないほどの痛みや違和感ではないことが多いため発見が遅れる傾向にあるのです。

声門上部がんが発症する主な原因

喉頭がんの危険因子となるのが喫煙と飲酒です。

この2つは喉頭を刺激するため、がんの発症リスクが高まります。
タバコに含まれる発がん物質もがん発症のリスクを高めてしまいます。
喉頭がん患者の90%は喫煙者といわれており、喫煙が声門上部がんの大きな原因のひとつといえますね。

このほか、声帯を酷使する職業やアスベストを使用する職業も発症しやすいとされています。
また、逆流性食道炎なども喉の刺激となるため、声門上部がんの原因です。

声門上部がんと類似している病気

声門上部がんと似ている病気に、同じ喉頭がんの声門下部がんがあります。

病状が進行するとしわがれ声や息苦しさなどの症状が現れるなど、症状も声門上部がんと似ています。
また、進行するまで気づきにくい点でも声門上部がんと似ており、早期発見が難しいとされています。


声門上部がんを疑う場合は早急な受診が必要

早期に受診しないと生じるリスク

早期発見が難しいとされる声門上部がんですが、がんの発見が遅いと声帯を失う恐れがあります。

声門がんはかなり進行するまで転移はしないとされています。

しかし、声門周辺はリンパ液の流れが豊富なため、リンパ節転移が多く認められています。
早期治療ができなかった場合、他の部位に転移するリスクは高いといえるでしょう。

がんがステージ4まで進行していた場合、生存率は50%ほどとされています。
比較的生存率が高いがんではありますが、声帯を失い声が出ないなどの後遺症が残る可能性も十分にあるのです。

早期発見することで生存率も後遺症が残る可能性も減らせるため、喉の違和感は放置せずに医療機関を受診しましょう。

受診のタイミング

声門上部がんが疑われる場合、まずは耳鼻咽喉科を受診してください。
風邪かどうか、また、喉の異変が起きていないかを確認してもらうことがおすすめです。

声門がんは初期症状の判断が難しいですが、耳鼻咽喉科を受診して治療しているのに声枯れや違和感が1ヵ月以上続くようであれば、がんに詳しい医療機関を受診してください。

息苦しい、または呼吸がしづらくなっている場合はがんが進行している恐れがあるので、速やかに声門がんの検査を受けてくださいね。

声門上部がんの診断方法とは?

声門上部がんであるか診断するには内視鏡検査が行われます。
細い内視鏡を鼻から挿入したり、ファイバーで画像撮影をしたりして視診をします。

そのほか、レントゲン撮影では頸部の正面と側面から画像検査を行い、がんの深さや広がりについて調べます。

がんの可能性が高いと判断されたら、組織診断を行います。
局部麻酔では難しい場合は全身麻酔を用いて病変の一部を採取したり、疑わしい部分を取り除いて手術後の治療方針の決定に役立てます。


声門上部がんの治療方法

声門上部がんの治療方法は大きく分けて2つ

声門は「しゃべる」という重要な機能を支えています。
そのため、治療をする際もなるべくその機能を残すことが大事なポイントになります。

声門上部がんの治療方法は、大きく分けて「放射線療法」と「外科療法」の2つを選択して行います。
また、放射線療法と抗がん剤を併用することもあります。

基本的にはがんの進行度によって治療方針を決定していきますが、病院や担当する医師によって治療方針が異なる場合があります。
治療方法について気になることがあれば、担当医師や他院の医師に聞いてみるとよいでしょう。

治療方法の種類

声門上部がんの治療方法は、主に次の5つの方法があります。

・放射線治療
・レーザー手術
・化学放射線療法
・喉頭部分切除術
・喉頭全摘術

もし小さいがんであれば、一般的には放射線治療によって治療します。
声帯の一部をレーザーで切除することで改善する場合もあります。

早期喉頭癌における初回根治治療としては、病変の制御率と治療後の機能障害(嗄声・嚥下機能低下)を考慮すると放射線治療や経口的切除が選択されることがほとんどであり、喉頭部分切除術が優先的に選択されることはまず考えられません2)。

しかし、がんが進行すると病巣が大きくなってしまい、放射線治療やレーザーでは取り除くのが難しくなると、化学療法と放射線療法を組み合わせた化学放射線療法で治療を行っていきます。

さらにがんが進行した場合、手術によって病巣を取り除くことになります。
医療機関受診時にすでにがんが大きくなってしまっている場合には、声帯ごと取り除かなければならないこともあります。

基本的には機能を失わないよう治療方針を検討しますが、再発や転移を予防するためには仕方がないと判断されることももちろんあります。
その後の生活を左右するので、治療方針についてはよく相談して決定しましょう。

また、声門上部がんがかなり進行していると判断されたケースでは、声帯や甲状軟骨(俗称:喉仏)を骨ごと取り除く喉頭全摘術を行なうことがあります。

声門上部がんの副作用および後遺症

治療後の副作用と後遺症

放射線治療の副作用として、治療後の味覚障害やお口の中が乾燥したように感じることがあります。

放射線治療はお口の中で粘膜炎が起きやすかったり痛みを伴いやすく、食べることや飲み込むことの機能が低下します。
放射線治療を受けてからしばらくの期間は食事が困難であったり食べられるものが制限されることがあるので注意しておきましょう。

喉頭部分切除術を行った場合、声帯がなくても声を出すことはできますが元来の声質は失われてしまいます。
喉頭全摘術は声帯を含めて摘出となるため、発声機能は失われてしまいます。

まとめ

声門上部がんは初期症状が風邪と似ているために見落としてしまいがちです。
しかし、早期発見・早期治療が治療後の予後や生存率を大きく左右するがんでもあるのです。声を失ってしまいたくはないですよね。

早期発見するためには、気になる症状がある場合はすぐに耳鼻咽喉科を受診することがおすすめです。
もし声がれや喉の違和感、息苦しさや呼吸のしづらさがなかなか治らないなと感じたら、がんに強いがん拠点病院など専門の医療機関を受診してくださいね。

1)日本頭頸部癌学会診療ガイドライン:頭頸部癌診療ガイドライン2022年版より DOI 
2)喜井 正士:喉頭癌放射線治療後再発症例に対する喉頭部分切除術.喉頭. 2019 年 31 巻 02 号 p. 81-83 DOI