歯原性角化嚢胞とは?
「歯原性角化嚢胞」は、顎の骨の中に嚢胞ができる病気です。
好発部位は下顎の奥歯(大臼歯部、親知らずが生える周辺)で、好発年齢は10−30代(男性に多い)です。
歯原性角化嚢胞は、歯を構成する組織の一部が嚢胞化することが原因で発症します(PACH遺伝子という者が関与していると言われており、基底細胞母斑症候群という病気が発症すると多発的に発生するのが特徴です)。
そのため、歯原性角化嚢胞がある部位に生えるはずの歯は生えてこないことがほとんど。
好発部位である下顎の奥歯にできる場合、親知らずが欠損している可能性が高いでしょう。
10代〜30代の男性に多い病気でもあるため、親知らずが生えてこないなと思っている10~30代の男性は一度レントゲンを撮影して確認してみてくださいね。
歯原性角化嚢胞はWHOによってたびたび名称が変更されています。
2005年以前は歯原性角化嚢胞と呼ばれていましたが、2005年~2017年に腫瘍性疾患と分類されるにあたり角化嚢胞性歯原性腫瘍へと名称が変更され、さらに2017年に腫瘍から嚢胞へと分類が変更されるに伴い名称も歯原性角化嚢胞へと戻りました。
インターネットなどでは角化嚢胞性歯原性腫瘍と歯原性角化嚢胞、両方の名称が見受けられますがどちらも同じものをさしていると考えてよいでしょう。
2017年から歯原性角化嚢胞は腫瘍から分類が変更されましたが歯原性角化嚢胞がごくまれに癌化する可能性に変わりはなく、また、治療が必要な病変であることも変わりありません。
歯原性角化嚢胞は基本的に無症状
歯原性角化嚢胞は基本的には症状はありません。
そのため、歯原性角化嚢胞を見つけるために受診するというよりは、治療や検診で撮ったレントゲン撮影で偶然発見される、というケースが多くなっています。
歯原性角化嚢胞は自覚症状もなく分類も腫瘍ではなく嚢胞ですが、放っておくと歯原性角化嚢胞が大きくなってゆき、それに伴い顎の骨が大きく溶かされていきます。
また歯原性角化嚢胞はひとつできるとその周囲に複数個できることがあるほか、治療をしても再発する確率が高いため注意が必要です。
歯原性角化嚢胞の治療法
歯原性角化嚢胞は基本的に手術で嚢胞を摘出します。
歯原性角化嚢胞ができた部位に歯が生えていた場合や、歯原性角化嚢胞が大きくなり歯を包み込んでしまった場合は、歯も同時に摘出してしまうことが多いでしょう。
その際、歯原性角化嚢胞はひとつではなく、小さな嚢胞が周囲に複数個できていることが多いため、歯原性角化嚢胞の周辺にある歯を削りとることが推奨されています。
また、嚢胞のサイズが大きく摘出が難しい場合は、開窓療法と呼ばれる切開手術によって嚢胞の縮小を図ってから、あらためて摘出を行っていくケースもあります。
歯原性角化嚢胞と診断されたら注意すべきこと
まれに癌化する
歯原性角化嚢胞は良性腫瘍、現在は嚢胞に分類されているものですがごく稀に悪性化、いわゆる癌化することがあります。
癌化した場合は扁平上皮癌へと分類されます。
扁平上皮とは皮膚や中が空洞の臓器(肺や食道、口の中など)の粘膜部分の構造のこと。
癌化すれば悪化した際に別の箇所への転移の可能性もあります。
再発する恐れがある
歯原性角化嚢胞の術後の再発率は、最大62%とかなり高いです。
手術で摘出した場合も、周囲に取り残しがあれば再発する可能性は十分にあり得ます。
再発率が高いことから、摘出の際は実際の歯原性角化嚢胞よりも大きく骨を削ったり摘出するほか、歯の近くにできている場合は抜歯することもあります。
一度歯原性角化嚢胞ができたら再発防止のためにも、定期的に検査を受けるようにしましょう。
まとめ
歯原性角化嚢胞は稀に悪性化するケースも存在します。
悪性化しない場合でも周囲の骨を溶かしてしまうため、放置しておくのは危険な病気です。
少しでも歯に違和感を覚えた場合は、歯科医院を受診するといいでしょう。
また、日頃から定期的にレントゲンを撮影しておき、歯原性角化嚢胞ができた場合に速やかに治療できるようにしておきましょう!