妊娠性エプーリスとは?

妊娠性エプーリスとは、妊産婦に見られる歯肉の腫れ物(歯肉腫)のことです。
エプーリス(epulis)のulisは「歯肉」、epは「の上」を意味し、一般的に良性です。

妊産婦の約1-5%に見られる所見で、多くの場合は妊娠から約3ヵ月以降に発症します。
患部は強い赤みが出て出血しやすくなりますが、通常のエプーリスとは異なり分娩とともに小さくなってそのまま自然消滅するケースがほとんどなので、経過観察が基本となります。

ただし、出産後も残っている場合や肉腫が大きい場合は手術での摘出が必要です。


妊娠性エプーリスができる原因

妊娠したからといって、誰もが妊娠性エプーリスができるわけではありません。
なぜ妊娠性エプーリスができるのか、原因をご紹介します。

歯垢・歯石・虫歯

お口の中を清潔にしていないと、汚れがたまって歯垢や歯石が付着します。
歯垢には細菌が集まっており、歯肉などの組織に炎症性の刺激を加えます。それにより、妊娠性エプーリスができることがあります。

合っていない詰め物

虫歯だったところにセラミックや金属などの詰め物をしている方もいるかと思います。

こうした詰め物が合っていないと、詰め物が歯肉などを刺激してしまい妊娠性エプーリスが発生することがあります。
詰め物が合っていない場合はきちんと合うものに作り替え、刺激が起きないようにします。

女性ホルモンの増加

虫歯や歯周病といった歯科疾患、詰め物などが原因ではない場合は女性ホルモンの影響が考えられます。
主な原因として考えられているのが女性ホルモンの増加です。

摘出が必要な場合は分娩後に行われるのが一般的です。

妊娠性エプーリスの対処法

妊娠性エプーリスができないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。
妊娠性エプーリスができにくくするための対処法を実践してみましょう!

ていねいに歯を磨く

妊娠性エプーリスの対処法として身近なのが、よりていねいに歯磨きをすることです。
腫れ物が小さいのであれば、しっかり歯を磨いてお口の中を清潔にするだけで改善できることがあります。

妊娠期間中は女性ホルモンが多く分泌されることで食生活にも変化が生まれ、場合によっては虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
また、つわりやストレスによって口腔内の環境が変化し悪化することがあります。

日頃からていねいに歯を磨くよう意識し、お口の中をきれいにしておきたいですね!

歯垢や歯石を歯科医院で除去してもらう

妊娠期は体調やホルモンバランスの変化などにより虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
虫歯や歯周病の原因となる歯垢や歯石をを取り除くことで虫歯や歯周病を予防・改善でき、妊娠性エプーリスの再発予防にもつながります。

歯垢は歯磨きで除去できるものの、いくら丁寧にブラッシングしていても磨き残してしまうところがでてしまいます。
また、歯石は強固に付着しているため歯ブラシでは落とせません。

定期的に歯科検診を受けてお口の中をチェックするほか、クリーニングで歯垢や歯石を除去してもらいましょう。
妊娠初期は歯科通院が難しいですが、安定期にクリーニングを受けてお口の中をきれいにしておくことで、妊娠性エプーリスに加えて虫歯、歯周病の予防になりますよ。

手術で取り除く

歯肉の腫れのほとんどが産後に自然消滅します。
しかし、まれに大きく腫れてしまったり、産後も消えなかったりすることがあります。

こうしたケースでは手術によって腫瘍を切除することがあります。
ただし、切除する際の出血というリスクと出産後に腫れが小さくなるケースが多いことから、切除を見送ることもありますよ。

切除するとしても妊娠期間中の手術は負担が大きいため、基本的には産後に落ち着いてから手術を行います。


妊娠性エプーリスは胎児に影響ある?

歯肉の腫れのように体に変化があると気になるのが、胎児への影響ですよね。

妊娠性エプーリスそのものは、胎児に直接的な影響があるとはいわれていません。

ただし、妊娠性エプーリスができる要因としてお口の中の環境悪化があります。
お口のケアができていないと、妊娠性歯肉炎が発症しやすくなります。
また、妊娠性歯肉炎による炎症性の物質が血液によって全身を巡ると、可能性早産や低体重児出産のリスクが高くなります。

こうした危険性を回避するためにも、妊娠期間中は毎日の歯磨きのほか、定期的な歯科検診でお口の中を清潔にすることが大切だと考えられます。

まとめ

妊娠性エプーリスが発症する原因はさまざまなものが考えられますが、歯科医院での対処が可能です。
歯肉の腫れは産後に消失しますが、中には腫れが大きくなるものもあります。
ですが出産した後に小さくなることがほとんどのため、経過観察をしていくことが多く、あまり心配しすぎないようにしてくださいね。

妊娠性エプーリスそのものは胎児に影響しませんが、お口の中の環境が悪い場合は早産などのリスクにつながるおそれがあります。
妊娠期間中はお口の清掃に対する意識をより高め、虫歯や歯周病ができないように気をつけておきましょう。