顎骨に骨腫ができるって本当?


骨腫とは、骨に発生するがんのことです。本来できるはずがない部分に新たに骨や軟骨が作られます。
骨腫ができる根本的な原因ははっきりとわかっておらず、種類によっては遺伝性のものもあるようです。

骨腫は大きく良性骨腫と悪性骨腫の2種類に分けられ、このうち良性骨腫は生命に別状がないもので、骨軟骨腫や内軟骨腫など20種類以上あります。

そして、骨腫のなかでも顎骨にできるものは非上皮性の非歯原性腫瘍に当てはまります。
多くの場合は良性骨腫で痛みなどが無く増大していき、進行するまで気が付かない場合がほとんどです。

痛みを感じたときにはすでに骨折しており、骨折の痛みを感じていることもあります。
顎骨にできた骨腫の骨折は意識の消失や呼吸困難などの全身症状につながる恐れがあるため、特に注意が必要です。

骨腫の種類

骨腫はどういった経緯で発生したかによって「転移性骨腫瘍」と「原発性骨腫瘍」に分けられます。

転移性骨腫瘍

転移性骨腫瘍は、他の臓器に発生したがんが骨に転移したものを指します。
がん細胞が血液によって運ばれることで、離れた部位に骨腫が発生するのです。

乳がん・前立腺がん・肺がんなどは骨に転移しやすいというデータがあります。

原発性骨腫瘍

骨自体からがんが発生しているものを原発性骨腫瘍といいます。
この場合、肉腫という悪性腫瘍が発生することがほとんどです。

肉腫は体中のあらゆる部分にできる可能性があり、全体の約25%は骨に発生します。

骨肉腫とは骨にできるがんであり、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞種などが知られています。

骨肉腫が発症する頻度は50万人に1人と非常に稀な希少がんであり、大腿骨の膝側、脛骨の膝側などの膝関節周囲、あるいは上腕骨の肩周りによく発生します。

中高年層に発症する骨肉腫は骨盤や脊椎に形成される場合が多いようです。
また、10〜20代の若年者においては骨に変化が出現するまで有意な症状が認められない、あるいは症状を成長痛と間違えてしまう可能性があります。

骨腫の主な症状


骨腫ができている場合の症状についてご紹介します。

咀嚼時に痛む

骨腫は上顎・下顎どちらにもできる可能性があります。
そして、咀嚼時に痛みを感じることもあるのです。普段は痛みを感じないけれど夜間にだけ痛みが生じるケースもあります。

そのほか、何もしていなくても顎骨の一部が膨らんでいるような感覚があったり、押すと痛んだりする場合には骨腫ができている可能性があります。

骨折する

顎骨にできた良性骨腫の場合は自覚症状が現れにくく、骨折して初めて症状に気づくケースも少なくありません。
骨腫が進行することで骨の表面を構成する部分が薄く脆弱になるため、骨折しやすくなるのです。

骨折したときには、痛みに加えて骨折箇所が大きく腫れることもあります。
また、上顎で骨折が起こった場合には鼻血が出る・視覚障害をきたすといった症状もみられます。

骨腫の治療法

骨腫が見つかった場合には、以下のような治療が行なわれます。

外科的手術

骨腫の治療法として、ほとんどの場合は摘出手術を行なうことが一般的です。
ただし、良性骨腫で痛みや骨折がなく支障が出ていない場合は手術を行なわないケースもあります。

すでに骨折が起こっている場合には、一時的止血や抗菌薬投与など骨折に対する処置を行なってから手術を開始します。
また、腫瘍細胞を体内に残さないために、骨腫の周りの組織も一緒に切除する必要があります。

そのほか、手術後は口を開けたり食べ物を噛んだりすることができないため、流動食を摂取する期間が続きます。

抗がん剤治療や放射線治療

骨腫の種類によっては、抗がん剤治療や放射線治療が選択されます。
特に転移性骨腫の場合には、9割以上の症例で放射線治療が行なわれているのです。

また、抗がん剤治療や放射線治療で骨腫を小さくしてから外科的手術を行なうケースもあります。

そのほか、転移性骨腫の場合は骨の転移の進行を抑制するために「ビスホスホネート製剤」や多発性骨髄腫や骨転移を有する固形がんの骨病変の進行抑制作用、および骨巨細胞腫における抗腫瘍作用などの効果を発揮する「抗RANKL抗体」を投与することもあります。

まとめ

骨腫は良性骨腫の場合は原因がわからずに発生するケースが多いです。
また、ほかの臓器のがんが転移して骨腫ができることもあります。

骨腫の治療は、外科的手術、または抗がん剤治療や放射線治療など一般的ながん治療と同じような治療が行なわれます。

万が一骨に痛みを自覚する場合は成長痛だと決めつけず、痛みが長引く場合は早めに骨腫瘍などの疾患を除外することが重要なポイントです。
治療経験が豊富な専門医療機関の整形外科などを受診するように心がけましょう。